夫婦2人暮らしで手取り月収が約21万円の場合、毎月20万円前後を使っている家計は一見すると余裕が少なく見えます。しかし、家計診断では単純な支出総額だけでなく、家賃などの固定費、臨時支出、貯蓄・投資を分けて考えることが重要です。
例えば、35歳・夫婦2人・片働きで、手取り21万1,000円、支出20万493円、月間黒字1万507円というケースを考えてみます。さらに支出の中にはNISA5,000円、iDeCo5,000円が含まれているため、実際には現金1万507円の黒字に加えて1万円を資産形成へ回していることになります。
この家計は直ちに「浪費家計」と評価する内容ではありません。一方で、片働きであることを考えると、月1万円程度の現金黒字だけでは突発的な支出に弱いため、食費を無理に削ることより、年間支出を含めても安定して現金を残せる仕組みを作ることが重要です。
まず家計を固定費・変動費・資産形成に分けて考える
家計簿を見るときに最初にしたいのが、すべてを「出費」として一括りにしないことです。家賃や通信費のような固定費、食費や娯楽費などの変動費、そしてNISA・iDeCoなどの資産形成を分けます。
例として手取り21万1,000円に対して総支出20万493円なら、単純な収支は1万507円の黒字です。しかし総支出にはNISA5,000円とiDeCo5,000円が入っています。投資には元本割れの可能性があるため預金と同じではありませんが、消費してなくなるお金とも性格が異なります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 手取り収入 | 211,000円 |
| 家計簿上の総支出 | 200,493円 |
| うちNISA・iDeCo | 10,000円 |
| 現金として残る黒字 | 10,507円 |
| 黒字+資産形成額 | 20,507円 |
したがって「21万円稼いで20万円使ってしまった」とだけ考える必要はありません。ただしNISAとiDeCoにはそれぞれ制度上の特徴があり、特にiDeCoは原則として老後まで自由に引き出せる預金ではないため、生活防衛資金とは分けて考えます。
家賃4万4,330円と通信費6,243円はかなり抑えられている
この家計で強みになっているのが固定費です。家賃4万4,330円は手取り21万1,000円に対して約21%で、住居費が家計を圧迫している状態ではありません。
通信費もネット3,773円、スマートフォン2台で2,470円なら合計6,243円です。夫婦2人分としてすでに低い水準に抑えられているため、ここから数百円を削ることに多くの労力を使う必要性は低いでしょう。
月508円のYahoo!関連サービスについても、実際にメール容量など必要な機能のため利用しているのであれば、金額だけを理由に解約する必要はありません。サブスクの見直しでは「サブスクだから悪い」ではなく、毎月利用価値が508円以上あるかで判断するのが合理的です。
食費5万9,784円は削れるが、外食だけが原因ではない
目につきやすいのは食費5万9,784円です。夫婦2人なら節約余地を検討できる項目ですが、このうち外食は6,160円なので、外食を完全になくしても削減できるのは約6,000円です。
残る約5万3,600円は自炊を中心とした食材などと考えられます。物価や食事内容、地域、酒類・菓子・飲料を食費に含めるかなどによって適正額は変わるため、「2人なら○万円が正解」という基準はありません。
食費を改善するなら、外食をゼロにするより、スーパーで購入したものを「主食・肉魚・野菜・飲料・菓子・酒・惣菜」のように1か月だけ分類してみる方法が有効です。例えば飲料・菓子・惣菜だけで月1万円以上になっているなら、満足度を大きく落とさず2,000~5,000円程度削れる可能性があります。
一方、健康上必要な食事まで削って月3万円台を無理に目指す必要はありません。家計改善は長期間続けられることが重要です。
医療費1万4,010円や仕事用靴8,638円は通常月と分ける
1か月だけの家計診断で注意したいのが、毎月発生する支出と、その月だけ発生した支出を混ぜないことです。例えば仕事用の靴8,638円が数か月・数年に一度の購入なら、毎月の生活費として評価すると実態より支出が多く見えます。
医療費1万4,010円についても同様です。継続的な通院によって毎月ほぼ同額かかるなら固定的な生活費として考える必要がありますが、その月だけ複数の受診や歯科治療が重なったのであれば臨時支出として扱えます。
例えば翌月に仕事用靴8,638円がなくなるだけで、ほかの条件が同じなら現金黒字は約1万9,000円になります。したがって家計の健全性は1か月だけではなく、最低でも3~6か月、できれば1年間の平均で判断するのが適切です。
実は家計簿に入っていない年間支出のほうが重要
月次家計が黒字でも安心できない理由があります。毎月発生しない大きな支出が家計簿から漏れている可能性があるためです。
例えば賃貸住宅なら更新料や火災保険、家電の買い替え、衣服、冠婚葬祭、帰省、旅行、家具、税金などがあります。自動車を所有しているなら、自動車税、任意保険、車検、タイヤ、整備費なども年間支出です。
仮に年間24万円の臨時支出があるなら、実質的には毎月2万円を使っているのと同じです。毎月1万507円黒字でも、年間支出を月割りすると実質赤字ということも起こります。
そのため家計簿とは別に「年間特別費」を作り、過去1年間の大きな支出を合計して12で割ってみると家計の本当の余裕が見えます。
片働き世帯では現金の生活防衛資金を厚めに考える
夫婦の一方だけに給与収入がある世帯では、その収入が止まった場合の影響が共働き世帯より大きくなります。そのため投資額を増やす前に、すぐ使える預貯金をどの程度確保しているか確認したいところです。
例えば最低限必要な生活費が月15万円なら、6か月分で90万円、12か月分なら180万円です。必要額に唯一の正解はありませんが、雇用の安定性、傷病時の保障、家族構成などを考慮して決めます。
資産285万円についても、全額が普通預金なのか、投資信託などを含む金額なのかによって評価が変わります。市場価格が変動する資産は必要なときに値下がりしている可能性があるため、生活防衛資金は預貯金など流動性の高い資産として別枠で確保しておくと安心です。
NISA月5,000円・iDeCo月5,000円は無理に増額しなくてもよい
NISAで月5,000円、iDeCoで月5,000円を積み立てている場合、合計で手取りの約4.7%を資産形成へ回しています。少額に見えても、継続できていることには意味があります。
金融庁も資産形成では長期・積立・分散投資を有効な選択肢の一つとして案内しています。投資には元本割れの可能性があるため、短期間で使う予定のお金まで投資へ回すのではなく、生活資金と分けて考えることが重要です。[参照:金融庁 長期・積立・分散投資の考え方]
特に現金黒字が月1万円程度なら、「もっと投資しなければ」と焦ってNISAを増額する必要はありません。まず年間特別費と生活防衛資金を確認し、それでも毎月安定して余剰資金が残ることが分かってから増額するほうが家計は安定します。
月1万円の黒字を「使えるお金」と考えない仕組みを作る
現在の家計を大幅に削るより効果的なのが、毎月残った1万円前後を最初から別口座へ移す方法です。例えば給与日に1万円を生活防衛資金・年間特別費用の口座へ自動的に移してしまいます。
さらに食費から月3,000円程度改善できれば、現金貯蓄を月1万3,000円程度まで増やせます。NISA・iDeCoの1万円と合わせると、毎月約2万3,000円を将来へ回せる計算です。
一方、夫婦のお小遣い合計2万5,000円や共通娯楽費6,900円を真っ先に削る必要性は高くありません。娯楽を極端に減らした家計は長続きしにくいため、固定費がすでに低い家計では「使ってよい予算」を残すことも大切です。
この家計で優先して確認したい5項目
月次の数字だけを見る限り、家賃や通信費をさらに削るより、次の順番で確認すると家計改善につながりやすいでしょう。
- 資産285万円の内訳を確認する:預金と投資資産を分ける
- 年間特別費を計算する:家電、衣服、保険、冠婚葬祭、帰省などを年間で把握する
- 生活防衛資金を確保する:片働きで収入が止まった場合に何か月暮らせるか確認する
- 食費の内訳を1か月だけ分析する:無理なく月数千円削れる部分がないか探す
- 余裕が確認できてから投資を増額する:NISAやiDeCoを生活費より優先しすぎない
この順序なら生活の満足度を大きく落とさず、家計の耐久力を高められます。節約というと通信費や外食を細かく削りがちですが、大切なのは年間を通じたキャッシュフローです。
まとめ:手取り21万円で月20万円支出でも内容を見ると大きな浪費家計ではない
手取り21万1,000円、支出20万493円、現金黒字1万507円という夫婦2人の家計は、数字だけを見ると余裕が小さく感じます。しかし支出のうち1万円はNISA・iDeCoによる資産形成であり、家賃4万4,330円、通信費6,243円など固定費も比較的コンパクトです。
改善のポイントは、すでに安い固定費をさらに削ることではなく、食費の内訳、臨時の医療費や仕事用品、年間特別費を整理し、毎月の現金黒字を安定させることです。
特に片働き世帯では、投資額を急いで増やすより、まず生活防衛資金と年間特別費を現金で確保することが重要です。現在のNISA5,000円・iDeCo5,000円を無理なく継続しつつ、数か月分の家計簿から平均支出を把握し、月1万~2万円程度の現金黒字を安定して残せる形を目指すと、より安心感のある家計になります。


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