退職時の給与明細を見て「厚生年金の控除額が突然増えている!」と驚く方は少なくありません。とくに退職月の社会保険料は、通常と異なる取り扱いがあるため、事前に理解しておくことが大切です。この記事では、退職月に厚生年金の控除が増える仕組みをわかりやすく解説します。
退職月の厚生年金控除が増える原因
厚生年金は、原則として「月単位」で加入の有無が判断され、たとえ月の1日でも在籍していれば、その月の保険料が発生します。つまり、退職日が月末以外であっても、その月分の保険料は通常どおり発生します。
また、給与と賞与それぞれに保険料がかかるため、月給と賞与が同じ月に支給されると、結果的に控除額が増えることになります。たとえば、6月に月給と賞与が支払われた場合、それぞれに対して厚生年金が計算されます。
会社と従業員で「折半」は変わらない
退職月であっても、厚生年金の負担は会社と従業員で折半されます。「全額自己負担になるのでは?」と心配される方もいますが、それは誤解です。
ただし、計算対象が増える(給与+賞与)ことによって、従業員が負担する金額も結果的に多くなる、という構造です。あくまで折半の割合はそのままです。
賞与にかかる厚生年金の計算方法
賞与にかかる厚生年金は、「賞与額 × 保険料率」で計算されます。2024年現在、標準的な保険料率は約18.3%(会社と従業員で半分ずつ)で、上限は年間573万円の賞与額までが対象です。
たとえば、賞与が40万円だった場合の控除額は以下の通りです。
40万円 × 9.15%(従業員負担)= 約36,600円となります。
有給消化中でも保険料は発生
退職前の有給休暇中も「在籍扱い」であるため、社会保険料は通常どおり発生します。「働いていないのに保険料を引かれるのはおかしい」と感じるかもしれませんが、法的には在職期間とされるため、保険料の対象となるのです。
たとえば、6月30日が退職日であっても、1日〜30日まで在籍しているため、その月の厚生年金・健康保険料は丸々発生します。
住民税や他の控除と混同しないよう注意
最後の給与明細では、住民税の一括徴収(退職時特有の前払い)なども加わることがあり、厚生年金以外の項目と混同して金額が増えたと感じるケースもあります。明細書の各項目を一つずつ確認することが重要です。
明細に不明点がある場合は、総務・人事担当者や給与計算を行う部署に問い合わせることで、正確な情報を得られます。
まとめ:驚く前に「月単位」や「賞与課税」の仕組みを知ろう
退職月の厚生年金控除が高額になる理由は、制度上のルールと賞与の扱いによるものです。「特別な取り扱い」や「会社のミス」ではなく、社会保険の仕組みに基づいた正しい処理です。
月給と賞与が重なるタイミング、有給消化での在籍、そして住民税など複数の控除が重なると金額は大きく感じられますが、明細を丁寧に確認することで納得できるはずです。
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