病気やケガで仕事を休まざるを得ないとき、会社員にとって心強い制度が「傷病手当金」です。しかし、有給休暇と併用した場合の待機期間や支給開始日などは、会社側でも誤解されやすく、混乱を招くことがあります。この記事では、傷病手当金の制度と有給取得時の取り扱いを整理し、正確な理解をサポートします。
傷病手当金とは?制度の基本概要
傷病手当金は、健康保険に加入している被保険者が業務外の理由で病気やケガにより仕事を連続して休み、給与の支払いがない期間に、最長1年6ヶ月にわたり支給される制度です。支給額は原則として、直近12ヶ月の標準報酬日額の2/3相当額になります。
この制度は、働けない間の収入減を補う重要なセーフティネットですが、要件が細かいため正しい理解が必要です。
支給の条件と「待機期間」の考え方
傷病手当金が支給されるには、以下の4つの条件を満たす必要があります。
- 業務外の病気やケガによる療養
- 労務不能であること
- 連続する3日間の待機期間があること(有給・欠勤を問わず)
- 給与が支払われていないこと
ここで注意したいのは、「待機期間」に有給休暇も含めることができるという点です。たとえば、有給休暇を取得していても、それが労務不能な日であれば待機期間としてカウントされます。
有給休暇中に待機期間を設定できるのか
質問のように、6月16日から20日までの5日間を有給休暇とした場合でも、病気やケガにより労務不能な状態であることが医師の診断で証明されれば、この期間は待機期間として成立します。
よって、6月16日・17日・18日の3日間をもって待機期間が完成し、支給開始日は6月19日からとカウントされるのが原則です。ただし、6月19日と20日も有給を取っていればその2日間は「給与が支払われている」と見なされるため、実際に傷病手当金の支給が始まるのは6月21日以降ということになります。
傷病手当金の支給対象となる日数のカウント
支給対象となるのは、「給与が支払われていない日かつ労務不能な日」です。したがって、有給を消化している間(たとえば6月16〜20日)は、実際には支給はされません。
しかし、そのうちの最初の3日間(6月16〜18日)は、待機期間としてカウントできます。
例えば、以下のような日程で考えるとわかりやすくなります。
日付 | 状況 | 給与支給 | 待機日カウント | 支給対象日 |
---|---|---|---|---|
6/15 | 入院 | 有給なし | なし | なし |
6/16〜6/20 | 有給休暇 | 給与あり | 16〜18日で待機完成 | × |
6/21〜 | 自宅療養 | 給与なし | 済 | ○(この日から支給) |
会社側の理解が不十分なケースもある
企業の人事・労務担当者であっても、傷病手当金の制度詳細まで理解していないケースは少なくありません。そのため、「有給中は待機に含まれない」「有給後に3日間欠勤しないと支給されない」と誤って説明されることもあります。
傷病手当金の取り扱いは法的根拠に基づくため、不明点は会社ではなく加入している健康保険組合(協会けんぽなど)に確認するのが最も確実です。
まとめ:正しい理解で不安なく備える
傷病手当金の待機期間は有給休暇中でもカウント可能であり、給料が支払われていない日から手当金の支給が開始されます。今回のようなケースでは、6月21日以降が実際の支給対象日となる見込みです。
誤解されやすい制度だからこそ、健康保険組合への確認や、制度に基づく正しい知識の理解が重要です。万一のときのためにも、仕組みを把握して備えておきましょう。
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