がん保険で「上皮内新生物は給付対象外」と言われたら?病理検査で浸潤癌と判明した場合の再確認・請求方法を解説

生命保険

がんの手術を受けたあと、生命保険やがん保険へ給付金を請求したところ「上皮内新生物なので対象外」と案内されることがあります。しかし、手術前のCTでは「がん」「周囲の臓器への浸潤の可能性がある」と説明されていた場合、上皮内新生物という扱いに疑問を感じることもあるでしょう。

ここで重要なのは、画像上「がんらしい」と判断されたこと、手術中にがんと考えられたこと、病理組織学的に「悪性新生物」「上皮内新生物」のどちらに分類されるかは、必ずしも同じ段階の判断ではないということです。国立がん研究センターも、病理検査によって、がんであるかどうかだけでなく、がんの性質や広がり方などが診断されると説明しています。[参照:国立がん研究センター がん情報サービス「病理検査とは」]

手術で摘出した組織の最終病理結果がまだ出ていない段階なら、「本当に上皮内新生物なのか」「浸潤性の悪性新生物なのか」を判断するうえで病理結果は非常に重要です。また、病理結果が悪性新生物を示していた場合には、保険会社へ結果を伝え、契約約款に照らして再確認・再請求できる可能性があります。

そもそも「上皮内新生物」と「悪性新生物」は何が違う?

一般に上皮内新生物とは、がん細胞が上皮の中にとどまり、その下にある組織へ浸潤していない状態を指します。保険会社の商品説明でも、基底膜を破って下の組織へ浸潤していない腫瘍を上皮内新生物として説明している例があります。[参照:オリックス生命「がん保険」]

これに対し、がん細胞が基底膜を越えて周囲の組織へ入り込んでいる場合は、一般に浸潤性のがんとして扱われます。ただし、実際の診断名称・病理分類は臓器や組織型によって異なるため、「3cmだから浸潤癌」「小さいから上皮内癌」のように大きさだけで判断することはできません。

また、「上皮内新生物」も医学的には腫瘍性病変であり、日常会話では「がん」と説明されることがあります。そのため、医師から「間違いなくがんでした」と説明を受けたことと、保険約款上で「悪性新生物」または「上皮内新生物」のどちらに分類されるかは、別々に確認する必要があります。

CTで「浸潤しているかもしれない」と言われても最終確定とは限らない

CTやMRIは、腫瘍の大きさ、位置、周囲の臓器との関係、転移の可能性などを調べる重要な検査です。例えば腎臓がんについて国立がん研究センターは、CTを診断に用い、MRIではがんの大きさや周囲臓器への広がりである「浸潤」などを確認すると説明しています。[参照:国立がん研究センター「腎臓がん(腎細胞がん) 検査」]

ただし画像検査では、「隣接しているだけなのか」「実際にがん細胞が入り込んでいるのか」が完全には判別できない場合があります。そのため、手術前に「肝臓に接している」「浸潤している可能性もあり、開けてみないと分からない」と説明されることがあります。

実際に摘出した組織を顕微鏡で詳しく調べる病理検査では、腫瘍の組織型や広がりなど、画像だけでは分からなかった情報が得られます。国立がん研究センターも、がんの診断は通常、病変から採取した細胞・組織について病理検査を行って確定すると説明しています。[参照:国立がん研究センター「手術の流れ」]

「肝臓に転移していない」と「浸潤性がない」は同じ意味ではない

がんの説明を受ける際に混同しやすいのが、「転移」と「浸潤」です。この2つは同じ意味ではありません。

言葉 一般的な意味
浸潤 原発巣のがん細胞が周囲の組織へ入り込んで広がること
直接浸潤 隣接する別の臓器などへ連続してがんが広がること
転移 がん細胞がリンパや血液などを介して別の場所へ移動し増殖すること
上皮内新生物 一般に上皮内にとどまり、その下の組織へ浸潤していないもの

例えば腎臓付近の腫瘍が肝臓に接していても、実際には肝臓へ入り込んでいなかった、ということはあります。しかし「肝臓に浸潤していなかった」ことから、直ちに「上皮内新生物だった」とは判断できません。

原発臓器の内部では浸潤性のがんであっても、隣の肝臓には広がっていない可能性があります。また、肝臓への「転移がない」という説明と、直接浸潤の有無も厳密には区別して確認したほうがよいでしょう。

腎臓付近のがんは発生部位によって分類も違う

「腎臓の上の方に3cm程度のがん」と説明された場合でも、それだけで病理学的な種類を判断することはできません。腎臓そのものから発生する腎細胞がんのほか、腎盂など尿路の上皮から発生する腫瘍など、発生部位によって分類体系が異なります。

例えば国立がん研究センターが示す腎盂・尿管がんのTNM分類では、Tisが「上皮内がん」、T1はがんが上皮の下の結合組織へ広がった状態として明確に区別されています。さらに周囲組織や隣接臓器まで広がるとT分類が上がります。[参照:国立がん研究センター「腎盂・尿管がん 治療」]

一方、腎細胞がんでは、原発巣の大きさや広がりをTカテゴリー、リンパ節転移をNカテゴリー、遠隔転移をMカテゴリーとして病期を決めます。[参照:国立がん研究センター「腎臓がん(腎細胞がん) 治療」]

したがって「腎臓の近くの3cmのがん」という情報だけから、上皮内新生物か浸潤癌かをインターネット上で決めることはできません。最終的には病理診断書に記載された原発部位、組織型、浸潤の程度などを確認する必要があります。

手術後の病理検査では何が分かる?

手術で摘出された腫瘍は病理部門へ送られ、病理医が肉眼や顕微鏡などで調べます。病理検査によって、良性か悪性かだけではなく、どの種類の腫瘍なのか、どのような性質か、どの程度広がっているかといった情報が得られます。

手術中に迅速病理診断を行う場合もありますが、国立がん研究センターは、術中迅速病理診断はあくまで暫定的な診断で、それによって最終診断が確定するわけではないと説明しています。[参照:国立がん研究センター「病理検査とは」]

そのため、「手術後に医師から間違いなくがんだったと言われたものの、詳しい病理結果はまだ」という状況なら、後日の病理結果説明で正式な診断名を確認することには大きな意味があります。

病理結果を聞くときに確認したい項目

病理結果の説明時には「がんでしたか」だけで終わらず、保険請求にも関係しそうな項目を具体的に確認すると整理しやすくなります。

  • 正式な病名は何か
  • 原発した臓器・部位はどこか
  • 病理組織型は何か
  • 上皮内新生物なのか、浸潤性の悪性新生物なのか
  • 周囲組織への浸潤はあったか
  • 隣接する肝臓などへの直接浸潤はあったか
  • リンパ節転移・遠隔転移は認められたか
  • 病理学的なT・N・M分類やステージはどうなるか
  • 切除断端にがん細胞が残っていないか

すべての項目がすべてのがんで同じように記載されるわけではありません。また、保険金請求に必要なのはステージそのものではなく、約款で定められた診断条件に該当することの場合もあります。

診察時には「保険会社から上皮内新生物と言われています。病理学的には上皮内新生物なのでしょうか、それとも浸潤性の悪性新生物なのでしょうか」とそのまま質問すると、確認したい意図が医師へ伝わりやすくなります。

保険会社の「上皮内新生物だから対象外」は何を基に判断したのか確認する

給付対象外と言われた場合に重要なのは、保険会社が何の資料を根拠として上皮内新生物と判定したのかを確認することです。

例えば診断書に上皮内新生物と記載されていたのか、請求時の病名コードによるものなのか、病理結果を確認したうえでの判断なのかによって意味が違います。病理結果が出る前に問い合わせただけで「上皮内新生物なら対象外です」と一般的な商品説明を受けただけなら、正式な不支払決定とは限りません。

生命保険協会も、生命保険会社は保険金・給付金請求を受けた場合、約款などに従って支払可否を判断し、必要に応じて医療機関へ治療内容などを確認すると説明しています。[参照:生命保険協会「生命保険に関する苦情事例のQ&A」]

病理結果が「悪性新生物」なら保険会社へ再確認する

最終病理結果が出て、約款上の上皮内新生物ではなく悪性新生物に該当すると考えられる場合には、保険会社へその結果を伝えて給付対象になるか再確認します。

例えば保険会社へ「手術後の最終病理診断が出ました。上皮内新生物ではなく悪性新生物との説明を受けました。診断書を再提出すれば給付金の再査定または再請求はできますか」と確認すると話が進みやすくなります。

保険会社がすでに不支払決定をしている場合でも、その理由となった事実が実際の診断内容と異なるのであれば、生命保険協会も保険会社へその旨を申し出るよう案内しています。[参照:生命保険協会]

「悪性新生物なら必ず給付」でも「上皮内新生物なら必ず対象外」でもない

がん保険・特約は商品によって給付条件が大きく異なります。上皮内新生物を悪性新生物と同額保障する商品もあれば、一部の給付金だけ対象とする商品、給付額を減額する商品、特定の保障では対象外とする商品もあります。

例えばオリックス生命の現行商品の中には、上皮内新生物も悪性新生物と同様に対象となる給付と、悪性新生物だけを対象とする給付が同じ商品内に存在する例があります。[参照:オリックス生命「上皮内新生物も支払い対象になりますか?」]

メットライフ生命も、契約内容によって上皮内新生物が対象になる場合とならない場合があるため、加入時期・保険種類・特約の種類ごとに約款を確認するよう案内しています。[参照:メットライフ生命「ガンと診断確定された場合」]

したがって、他人のがん保険が支払われた・支払われなかったという体験談より、自分が契約した当時の「ご契約のしおり・約款」と特約内容を確認することが重要です。

同じ契約でも給付金の種類によって判定が違うことがある

注意したいのは、一つの保険契約に複数の給付金や特約が付いている場合です。「がん診断一時金」「入院給付金」「手術給付金」「保険料払込免除」などが、それぞれ別の支払条件になっていることがあります。

例えば、上皮内新生物でも入院・手術給付金は対象になるが、悪性新生物診断一時金だけは対象外という契約も考えられます。反対に、上皮内新生物も診断給付金の対象とする商品もあります。

生命保険協会の裁定事例にも、病理組織診では上皮内新生物であり、特定の契約における「悪性新生物」に該当しないため保険料払込免除の対象外と判断された例があります。つまり保険会社は、単に一般用語として「がんかどうか」を見るのではなく、契約約款で定める支払事由との照合を行います。[参照:生命保険協会「裁定審査会」]

「病理結果待ち」なら今できることもある

最終病理結果そのものは待つ必要がありますが、それまで何もできないわけではありません。加入中の保険証券やWeb契約内容を確認し、「がん診断給付金」「悪性新生物診断給付金」「上皮内新生物」「手術給付金」などの記載を探しておくとよいでしょう。

保険会社には、病理結果がまだ出ていないことを伝えたうえで、「上皮内新生物と言われた根拠は何か」「最終病理結果が悪性新生物だった場合は再請求できるか」「どの書類を用意すればよいか」を確認できます。

病院側には、病理結果の説明予定日と、保険会社所定の診断書をいつ作成してもらえるかを確認しておくと、その後の請求がスムーズです。

具体例|CTでは肝臓への浸潤疑い、手術後は肝臓浸潤なしだった場合

例えばCTで腎臓付近に3cmの腫瘍があり、肝臓と接しているため「肝臓へ浸潤している可能性もある」と説明されたケースを考えます。

手術を行ったところ肝臓には広がっていなかったとしても、この結果だけから上皮内新生物とは判断できません。原発巣そのものが周囲組織へ浸潤しているか、どの組織型なのかなどを病理検査で確認します。

最終病理で浸潤性の悪性新生物と診断され、保険会社がそれまで上皮内新生物を前提としていたのであれば、病理診断を反映した診断書で支払可否を改めて確認する余地があります。

具体例|最終病理でも上皮内新生物だった場合

反対に、最終病理診断で上皮内新生物と確定した場合には、加入している保険の約款を確認します。

「悪性新生物のみ」を対象にした診断給付金なら支払い対象外となる可能性があります。一方、上皮内新生物も対象とする手術給付金や入院給付金、別のがん特約があれば、そちらについて請求できる可能性があります。

一つの給付金が対象外だったからといって、その契約から受け取れるすべての給付金が対象外とは限りません。保険会社へ「この契約で今回の入院・手術について請求できる給付金をすべて確認したい」と問い合わせる方法があります。

不支給理由に納得できない場合は書面で理由を確認する

病理結果を提出しても給付対象外とされた場合には、「なぜ対象外なのか」を具体的に確認します。

確認したいのは、対象外となった給付金の名称、該当する約款の条項、保険会社が認定した診断名、悪性新生物ではなく上皮内新生物と判断した根拠などです。

生命保険協会も、給付金を支払えないと言われた場合には、契約のしおり・約款などを確認するとともに、保険会社へ支払えない理由を確認するよう案内しています。[参照:生命保険協会]

保険会社との話し合いで解決しない場合は生命保険相談所を利用できる

最終病理結果と保険会社の判断に食い違いがある、約款の説明を聞いても納得できない、といった場合には生命保険協会の生命保険相談所へ相談する方法があります。

生命保険相談所は保険業法に基づく指定紛争解決機関で、生命保険に関する相談や苦情を受け付けています。保険会社との話し合いで解決しない場合には、保険会社への苦情の取次ぎなどを行います。[参照:生命保険協会「生命保険相談所に関するQ&A」]

さらに、生命保険相談所から保険会社へ解決依頼をした後、原則1か月経過しても解決しない場合には、一定の条件のもとで裁定審査会へ申し立てられる仕組みがあります。[参照:生命保険協会「紛争解決(裁定)手続の流れ」]

病理結果を待つ間に過度に「上皮内新生物」と決めつけない

手術前の画像、術中の印象、手術直後の説明だけでは、最終的な病理診断のすべてが分からない場合があります。そのため病理結果が出る前に、「保険会社が上皮内新生物と言ったから実際の病気もそうなのだ」と決めつける必要はありません。

反対に、「CTで肝臓への浸潤まで疑われたのだから絶対に悪性新生物として給付される」と断定することもできません。画像上の疑いと最終病理診断は異なる可能性があり、さらに医学上の診断と保険約款上の支払条件も確認する必要があるためです。

最も確実なのは、最終病理診断を確認する → 医師に上皮内か浸潤性かを確認する → 保険約款と照合する → 必要なら診断書を提出して保険会社に再査定を求めるという順番です。

まとめ|最終病理結果で「上皮内か浸潤性か」を確認してから保険会社へ再確認する

生命保険・がん保険で「上皮内新生物なので給付対象外」と言われても、最終病理結果がまだ出ていない場合には、その段階の案内だけで最終的な医学的分類まで確定したとは限りません。

CTで腫瘍が肝臓に接していたり、浸潤が疑われたりしても、画像だけでは実際の広がりを完全に判断できないことがあります。手術で摘出した組織の病理検査では、がんの種類や性質、広がりなどを詳しく確認します。[参照:国立がん研究センター「病理検査とは」]

また「肝臓に転移・浸潤していなかった」ということと、「原発した腫瘍が上皮内新生物だった」ということは同じではありません。肝臓には広がっていなくても原発部位では浸潤性の悪性新生物である可能性があり、逆に最終病理で上皮内新生物と判明する場合もあります。病名や臓器、組織型によって分類が違うため、個別の病理診断を確認する必要があります。

病理結果の説明を受ける際には、「正式な病名は何ですか」「病理学的に上皮内新生物ですか、それとも浸潤性の悪性新生物ですか」「周囲組織や肝臓への浸潤はありましたか」と具体的に確認するとよいでしょう。

最終病理で悪性新生物と診断された場合には、その結果を保険会社へ伝え、「病理結果を反映した診断書で再請求・再査定できるか」を確認します。生命保険協会も、保険会社の不支払理由が実際の事実と異なる場合には、その旨を保険会社へ申し出るよう案内しています。[参照:生命保険協会]

一方、最終病理が上皮内新生物でも、すべての保険給付が必ず対象外になるわけではありません。商品や加入時期、特約によって、上皮内新生物を同額保障するもの、一部のみ保障するもの、悪性新生物だけを対象とするものがあります。病理結果と自分が加入した当時の約款という2つを確認することが、給付対象かどうかを正確に判断するためのポイントです。

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