公務員に企業年金はある?共済年金廃止後の「年金払い退職給付」と中小企業におすすめの企業年金を解説

年金

日本の年金制度は「1人につき1つの年金だけを受け取る」という仕組みではありません。老後には国民年金の老齢基礎年金と厚生年金の老齢厚生年金を同時に受け取る人が多く、さらに企業年金、iDeCo、国民年金基金などの上乗せ制度を利用していれば、それぞれの受給要件を満たす範囲で複数の年金を受け取ることができます。

また、かつて公務員が加入していた共済年金は2015年10月に厚生年金へ一元化されましたが、公務員の上乗せ年金が完全になくなったわけではありません。従来の共済年金に存在した職域部分に代わり、現在は「年金払い退職給付(退職等年金給付)」という公務員独自の退職給付制度があります。[参照]

一方、民間企業では確定給付企業年金(DB)や企業型確定拠出年金(企業型DC)などを設けられます。小規模企業では企業型DCだけでなく、iDeCo+や中小企業退職金共済なども候補になるため、「企業年金を作りたい」という目的だけで制度を選ばず、会社がどこまで掛金・運用リスク・事務負担を引き受けるのかを考えることが重要です。

この記事では、2026年8月時点の制度をもとに、公務員の共済年金が現在どうなっているのか、厚生年金加入者が利用できる上乗せ年金、公務員の年金払い退職給付、さらに小規模事業所が老後制度を導入するときの選択肢を整理します。

  1. 年金は「1人1つ」ではなく複数の制度から受け取ることがある
  2. 国民年金基金は厚生年金加入者のための基金ではない
  3. 国民年金基金・労災年金・企業年金がすべて一生涯とは限らない
  4. 公務員の共済年金は2015年に厚生年金へ一元化された
  5. 昔の共済年金の「職域部分」は廃止された
  6. 公務員には「年金払い退職給付」という上乗せ制度がある
  7. 年金払い退職給付は全額が終身年金ではない
  8. 公務員もiDeCoへ加入できる
  9. 「厚生年金加入者だけが入れる国民年金基金のような制度」はある?
  10. 厚生年金基金は「企業年金に名前が変わった」わけではない
  11. 現在の民間企業が作る代表的な企業年金はDBと企業型DC
  12. 小規模事業所ならまずiDeCo+を検討する方法がある
  13. 例:従業員10人の会社ならiDeCo+が合いやすいケース
  14. 本格的な企業年金を作るなら企業型DCが候補になりやすい
  15. 企業型DCにも事務負担はある
  16. 確定給付企業年金(DB)が向いている会社
  17. 小規模企業なら中退共も比較したい
  18. 小規模企業では何がおすすめ?目的別に考える
  19. 例:従業員30人で採用力を高めたい会社
  20. iDeCo+と企業型DCは同じものではない
  21. 企業年金を選ぶときは「終身かどうか」だけで決めない
  22. 小規模企業が制度を決める前に比較したい5項目
  23. まとめ:公務員には年金払い退職給付、民間の小規模企業にはiDeCo+・企業型DC・DBなどの選択肢がある

年金は「1人1つ」ではなく複数の制度から受け取ることがある

まず年金制度の基本構造を整理しておきましょう。日本の老後保障はよく「1階・2階・3階」という建物に例えられます。

会社員や公務員であれば、原則として1階部分に国民年金の老齢基礎年金、2階部分に厚生年金の老齢厚生年金があります。その上に勤務先の企業年金や公務員の退職等年金給付、個人で加入するiDeCoなどを持つことがあります。

階層 代表的な制度 主な対象者
1階 国民年金・老齢基礎年金 原則すべての公的年金加入者
2階 厚生年金・老齢厚生年金 会社員・公務員など
3階相当 企業型DC・確定給付企業年金・iDeCoなど 制度ごとに異なる
公務員の上乗せ 年金払い退職給付 国家・地方公務員等の共済組合員

したがって「年金は1人につき1つ」というより、複数の制度に加入していれば、それぞれの制度から給付を受けることがあると理解したほうが正確です。

国民年金基金は厚生年金加入者のための基金ではない

名称が似ているため混同されやすいのが「国民年金基金」です。

国民年金基金は主に自営業者、フリーランスなど国民年金第1号被保険者の老齢基礎年金へ上乗せする制度です。国民年金基金連合会は、厚生年金へ加入している会社員など国民年金第2号被保険者は国民年金基金へ加入できないと明記しています。[参照]

つまり「厚生年金に入っている会社員や公務員が、さらに国民年金基金へ入る」という使い方は基本的にできません。

厚生年金加入者の上乗せ制度としては、勤務先の企業型DC・確定給付企業年金、公務員の年金払い退職給付、個人で利用するiDeCoなどを別々に考える必要があります。

国民年金基金・労災年金・企業年金がすべて一生涯とは限らない

もう一つ整理しておきたいのが、上乗せ年金はすべて「一生涯もらえる」とは限らないことです。

国民年金基金には終身年金が中心となる仕組みがありますが、給付の型によって保証期間などが異なります。また企業年金についても、制度によって終身年金、一定期間の有期年金、一時金など受取方法が異なります。

企業型DCでは積み上げた個人別資産を年金または一時金などで受け取りますが、「一定額が死亡するまで必ず支払われ続ける終身年金」が制度そのものとして約束されているわけではありません。

労災保険の障害(補償)等年金や遺族(補償)等年金も、法律で定められた支給要件を満たしている間に支給される制度であり、「誰でも老後に終身で受け取る年金」という性質ではありません。年金という名称だけで同じ仕組みと考えないことが重要です。

公務員の共済年金は2015年に厚生年金へ一元化された

かつて民間会社員は厚生年金、公務員は共済年金という別々の制度へ加入していました。

しかし2015年10月1日に被用者年金一元化法が施行され、公務員や私立学校教職員についても厚生年金制度へ統一されました。日本年金機構も、従来の厚生年金と共済年金を厚生年金に統一したと説明しています。[参照]

したがって現在の国家公務員・地方公務員も、老後の公的年金の2階部分については基本的に厚生年金です。

ただし、年金制度が統一されたからといって共済組合自体がなくなったわけではありません。公務員の厚生年金に関する手続きや給付の一部は、現在も各共済組合が実施機関として取り扱っています。

昔の共済年金の「職域部分」は廃止された

旧共済年金には、公務員独自の上乗せとして「職域部分」と呼ばれる3階部分がありました。

2015年の被用者年金一元化に伴い、この公的年金としての職域部分は廃止されました。日本年金機構も、一元化により共済年金の職域部分を廃止し、新たに「年金払い退職給付」を創設したと説明しています。[参照]

そのため、「共済年金がそのまま厚生年金に名前を変えただけ」と理解すると少し不正確です。1・2階部分は厚生年金へ統合されましたが、公務員独自だった職域部分については廃止され、別の退職給付制度へ置き換えられました。

公務員には「年金払い退職給付」という上乗せ制度がある

現在の公務員にとって企業年金の3階部分に近い位置付けとなる制度が「年金払い退職給付」です。正式には退職等年金給付と呼ばれます。

地方公務員共済組合連合会によれば、共済年金の職域部分廃止後の新たな制度として2015年10月から創設され、「退職年金」「公務障害年金」「公務遺族年金」の3種類があります。[参照]

老齢期に関係する退職年金は、原則65歳から支給され、半分が終身年金、残り半分が有期年金という構造です。有期部分は10年または20年の年金を選ぶことができ、一定の場合には一時金も選択できます。

したがって、公務員には民間企業の「企業年金基金」という名称のものがあるのではなく、公務員制度として年金払い退職給付が設けられていると整理すると分かりやすいでしょう。

年金払い退職給付は全額が終身年金ではない

公務員の年金払い退職給付についても、「一度加入すれば全額を一生涯受け取れる」と理解するのは正確ではありません。

地方公務員の場合、退職年金は原則として半分が終身年金、半分が有期年金です。有期年金部分については10年・20年などの選択肢があります。[参照]

また本人が死亡した場合、終身年金部分は終了し、有期年金に残余期間がある場合には一定の一時金が遺族へ支給される仕組みです。

企業年金でも公務員の退職年金でも、制度名に「年金」が付いているから終身払いとは限らず、受給期間を確認することが大切です。

公務員もiDeCoへ加入できる

公務員が老後資金をさらに上乗せしたい場合には、個人型確定拠出年金のiDeCoも選択肢になります。

厚生労働省は、iDeCoの対象となる国民年金第2号被保険者について、公務員や私立学校教職員共済制度の加入者を含むと明記しています。[参照]

2026年8月時点では、公務員についても他制度掛金相当額などを考慮した拠出限度額の範囲内でiDeCoを利用できます。

ただしiDeCoは勤務先や国が将来の給付額を保証する年金基金ではありません。自分で掛金を出し、自分で運用商品を選び、運用結果によって将来受け取れる資産額が変わる確定拠出型の制度です。

「厚生年金加入者だけが入れる国民年金基金のような制度」はある?

国民年金基金と対になる形で、「すべての厚生年金加入者が自由に加入でき、終身年金を受け取れる厚生年金加入者専用基金」が現在設けられているわけではありません。

厚生年金加入者の場合、上乗せ制度は勤務先や立場によって異なります。民間会社員なら企業型DCや確定給付企業年金、公務員なら年金払い退職給付、個人ではiDeCoなどがあります。

立場 公的年金 代表的な上乗せ
自営業者 国民年金 国民年金基金・iDeCoなど
会社員 国民年金+厚生年金 企業型DC・DB・iDeCoなど
公務員 国民年金+厚生年金 年金払い退職給付・iDeCoなど

このように「厚生年金加入者」という一つの属性だけで全員共通の3階部分が決まるわけではありません。

厚生年金基金は「企業年金に名前が変わった」わけではない

昔の厚生年金基金と現在の企業年金との関係にも注意が必要です。

厚生年金基金は、厚生年金の一部を国に代わって給付する「代行部分」と企業独自の上乗せ給付を組み合わせていた制度でした。しかし財政問題などを背景として制度の見直しが行われ、2014年4月1日以降は新しい厚生年金基金を設立できなくなりました。[参照]

その後、多くの基金が解散したり、代行部分を国へ返上して確定給付企業年金などへ移行したりしました。

したがって「厚生年金基金という制度の名前が企業年金に変更された」というわけではありません。厚生年金基金、確定給付企業年金、企業型DCは法律上それぞれ異なる制度です。

現在の民間企業が作る代表的な企業年金はDBと企業型DC

現在、民間企業が従業員向けに導入する代表的な企業年金は「確定給付企業年金(DB)」と「企業型確定拠出年金(企業型DC)」です。

厚生労働省によれば、企業型DCはあらかじめ決めた掛金を事業主が拠出し、その資産を加入者本人が運用します。将来の給付額は掛金と運用結果によって変動します。[参照]

一方、DBは将来支給する給付額または給付の計算方法を先に定め、企業年金基金や事業主側が資産をまとめて運用する仕組みです。[参照]

比較 企業型DC 確定給付企業年金(DB)
あらかじめ決まるもの 掛金 給付の算定方法
運用する人 従業員本人 事業主・企業年金基金側
運用リスク 主に従業員 主に企業・制度側
将来受取額 運用結果で変動 規約に沿って給付

小規模事業所ならまずiDeCo+を検討する方法がある

従業員数が少なく、初めて従業員の老後制度を導入する会社では、iDeCo+(イデコプラス)が有力な選択肢になることがあります。

iDeCo+は、企業型DCやDBなどの企業年金を実施していない、厚生年金被保険者300人以下の中小企業が利用できる制度です。従業員本人が加入しているiDeCoの掛金へ、事業主が掛金を上乗せします。[参照]

企業が独自の年金資産を運用する必要がなく、企業型DCやDBをゼロから設計する場合と比較すると仕組みを小さく始めやすい点がメリットです。また、事業主が拠出した掛金は全額損金算入できます。

ただしiDeCo+は、法律上「企業年金そのもの」ではありません。あくまで従業員個人のiDeCoへ会社が掛金を追加する中小企業向け制度です。

例:従業員10人の会社ならiDeCo+が合いやすいケース

たとえば従業員10人の会社で、「退職金制度はまだないが、1人当たり毎月5,000円程度を老後資金として支援したい」と考えたとします。

この会社がいきなり独自のDBを設計すると、規約、資産運用、財政管理などを含む制度管理が必要になります。

一方、従業員がiDeCoに加入しており、会社もiDeCo+の要件を満たすのであれば、個人のiDeCoへ会社の掛金を加える形で制度をスタートできます。

「まず少額から福利厚生を始めたい」「会社が将来の給付額まで保証するのは難しい」という小規模企業には検討しやすい選択肢です。

本格的な企業年金を作るなら企業型DCが候補になりやすい

iDeCo+ではなく、勤務先の福利厚生として明確な企業年金制度を設けたいのであれば、企業型DCが候補になります。

企業型DCでは会社が規約に基づいて従業員の掛金を拠出し、従業員が自分の口座で投資信託、預金、保険商品などの運用商品を選びます。

企業側から見ると、将来の給付額そのものを約束するDBとは異なり、原則として決められた掛金を拠出することで会社側の債務が明確になるため、将来の運用不足を会社が穴埋めするリスクを抑えやすい特徴があります。

なお2026年4月から、従来中小企業向けに設けられていた「簡易型DC」は通常の企業型DCへ統合され、一部の簡素化措置が通常の企業型DCにも適用されるようになりました。厚生労働省は、中小事業主を含めたすべての事業主が取り組みやすい制度設計へ改善したとしています。[参照]

企業型DCにも事務負担はある

企業型DCは「会社がお金を払えばあとは何もしなくてよい」という制度ではありません。

会社は制度設計、規約、運営管理機関との契約、加入者管理などを行う必要があり、従業員が適切に運用商品を選べるよう投資教育を実施する責任もあります。

そのため従業員が数人しかいない会社では、導入費用・月額管理費などを含めて、1人当たりのコストが割高になることがあります。

金融機関や企業型DCの運営支援会社によって料金体系は異なるため、「掛金はいくら出すか」だけではなく、初期費用・年間管理費・従業員1人当たり手数料を含めて比較する必要があります。

確定給付企業年金(DB)が向いている会社

DBは、従業員にとって将来受け取る給付の見通しを立てやすいことが大きなメリットです。

たとえば「勤続20年なら退職時に○○万円相当」というように、勤続年数や給与等に応じた給付設計を行えます。従来の退職金制度と企業年金を一体的に設計したい企業には使いやすい場合があります。

一方、運用結果が想定を下回り必要な積立額に不足が生じるなど、制度の財政状況によって事業主側に追加負担が発生する可能性があります。厚生労働省も、DCでは加入者が運用する一方、DBでは実施主体がまとめて資産運用を行う制度として両者を区別しています。[参照]

小規模企業が単独でDBを運営する場合には、制度設計・財政管理・運用などの負担を十分確認する必要があります。

小規模企業なら中退共も比較したい

「企業年金」にこだわらず、従業員の退職後資金を会社として準備したいのであれば、中小企業退職金共済制度(中退共)も重要な選択肢です。

中退共は企業年金そのものではなく退職金共済制度ですが、中小企業が従業員のために掛金を払い、退職時に従業員へ退職金が支払われる仕組みなので、小規模企業にとっては企業年金と同じ目的で比較されることが多い制度です。

自社で退職金資金を内部管理したり、企業年金資産を運用したりする負担を軽減しやすいため、数人~数十人規模で「まず退職金制度を整備したい」という会社では企業型DCより中退共のほうがシンプルな場合もあります。

ただし加入できる企業には業種ごとの従業員数・資本金等の要件があります。厚生労働省の中退共案内で加入条件を確認できます。[参照]

小規模企業では何がおすすめ?目的別に考える

小規模事業所に一律で「これが最強」という制度はありません。会社がどの程度の費用と責任を負えるかで適した制度が変わります。

会社の希望 検討しやすい制度
とにかく簡単に老後支援を始めたい iDeCo+
会社独自の企業年金制度を持ちたい 企業型DC
将来の給付を会社側で設計したい 確定給付企業年金(DB)
老後年金よりシンプルな退職金を整備したい 中退共

従業員数が少なく、制度管理に多くの人員を割けない会社なら、まずiDeCo+や中退共を比較するのが現実的です。

一方、人材採用や福利厚生を強化するために「企業年金あり」と明確に打ち出したいなら、企業型DCを中心に検討する価値があります。

例:従業員30人で採用力を高めたい会社

従業員30人の会社が、新卒や中途採用で大企業と競争するため「会社が毎月1万円を老後資金として積み立てる福利厚生」を作りたいとします。

単純に退職時の現金給付を用意するなら中退共も候補ですが、従業員が自分で長期運用し、転職時に資産を持ち運べる仕組みを重視するなら企業型DCが合いやすくなります。

厚生労働省も、確定拠出年金では離職・転職時に一定条件のもとで年金資産を他制度へ移換できるポータビリティの仕組みを設けています。[参照]

反対に、会社として一定水準の退職給付を保証することを重視するならDBが候補になります。制度目的から逆算して選ぶことが重要です。

iDeCo+と企業型DCは同じものではない

名称が似ていますが、iDeCo+と企業型DCは別の制度です。

企業型DCでは会社が企業年金制度そのものを実施し、事業主掛金を従業員それぞれの企業型DC口座へ拠出します。

iDeCo+では、従業員個人が契約しているiDeCoへ事業主掛金を追加します。またiDeCo+を導入できるのは、企業年金を実施していない厚生年金被保険者300人以下の企業など一定条件を満たす場合です。[参照]

したがって、本格的な企業年金制度を作るのか、個人のiDeCoを会社が支援するのかで選択が変わります。

企業年金を選ぶときは「終身かどうか」だけで決めない

老後制度を比較するとき、「一生涯もらえる年金が一番良い」と考えがちですが、企業側・従業員側ともにそれだけで制度を決めるべきではありません。

終身給付を約束するほど、長生きする人が増えた場合の費用や運用リスクを誰が負担するのかという問題が生じます。一方、DCでは個人別資産が明確で転職時に持ち運びやすい反面、運用結果によって受取額が変わります。

特に小規模企業では、会社が将来数十年間にわたって給付を保証できる財務体力があるかどうかを考える必要があります。

「毎月いくら会社が負担できるか」「従業員が運用リスクを負えるか」「転職時の持ち運びを重視するか」「事務コストをどこまで許容できるか」を優先して比較したほうが実務的です。

小規模企業が制度を決める前に比較したい5項目

制度選びでは、金融機関や制度名から先に決めるのではなく、会社側の条件を整理すると選びやすくなります。

確認項目 考え方
従業員数 導入可能制度・1人当たりコストに影響
会社が出せる掛金 毎月3,000円、1万円など予算を決める
給付保証 会社が将来額を保証するか、運用結果に委ねるか
事務負担 規約・加入管理・投資教育などをどこまで行えるか
制度の目的 退職金、老後資産形成、採用・定着のどれを重視するか

たとえば「従業員5人で事務担当者もいない」という会社と、「従業員80人で人事部があり、採用福利厚生として制度を見せたい」という会社では、適した制度は当然異なります。

導入時には社会保険労務士、税理士、企業年金を扱う金融機関など複数の専門家・事業者から費用と制度設計を比較するとよいでしょう。

まとめ:公務員には年金払い退職給付、民間の小規模企業にはiDeCo+・企業型DC・DBなどの選択肢がある

日本の年金は「1人につき1つだけ」という仕組みではありません。会社員・公務員は老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取るのが基本で、さらに条件を満たせば企業年金、公務員の退職等年金給付、iDeCoなどを上乗せできます。

公務員については、2015年10月に共済年金の1・2階部分が厚生年金へ一元化されました。同時に旧共済年金の職域部分は廃止され、その代わりとして「年金払い退職給付」が創設されています。[参照]

地方公務員の年金払い退職給付では、退職年金の半分が終身、半分が有期という仕組みになっています。したがって、民間企業の「企業年金基金」が公務員にも存在するというより、公務員独自の3階部分に相当する制度として年金払い退職給付があると理解するのが適切です。[参照]

また厚生年金基金については、単純に現在の企業年金へ名前が変更されたわけではありません。2014年4月以降、新しい厚生年金基金の設立は認められておらず、多くが解散またはDBなど別制度へ移行しました。現在、新たな企業年金として代表的なのは企業型DCと確定給付企業年金(DB)です。[参照]

小規模企業で老後支援を初めて導入する場合、企業年金を実施していない厚生年金被保険者300人以下の会社ならiDeCo+が比較的シンプルな候補になります。ただしiDeCo+は企業年金そのものではなく、従業員個人のiDeCoへ会社が掛金を上乗せする制度です。[参照]

「企業年金あり」という福利厚生を正式に整備したいのであれば企業型DC、会社が一定の給付水準を設計したいならDB、企業年金に限定せずシンプルな退職金制度が目的なら中退共というように考えると整理しやすくなります。

特に小規模事業所では、制度の豪華さよりも会社が何十年も継続できる制度であることが重要です。掛金予算、従業員数、管理コスト、運用リスク、転職時のポータビリティを比較し、少人数でまず始めるならiDeCo+や中退共、本格的な企業年金として整備するなら企業型DCを中心に検討し、給付保証を重視する場合にDBを比較するという順序が現実的です。

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