会社の健康保険の扶養に入っていた人が、被保険者である家族の退職などをきっかけに国民健康保険へ加入する場合、「同居家族に収入があると、その収入まで自分の国民健康保険料に加算されるのか」「世帯分離をすれば自分の所得だけで計算されるのか」が気になるところです。
国民健康保険は「世帯単位で算定する」と説明されるため誤解されやすいのですが、同じ世帯にいる家族全員の所得を単純に合計し、その金額に保険料率を掛けて一人分の保険料を決める仕組みではありません。所得割は基本的に国保加入者それぞれの所得を基に計算されます。
一方、低所得世帯の均等割軽減などでは世帯主や国保加入者の所得が判定に影響します。このため「世帯分離すれば必ず安くなる」とも言えません。具体的な金額は自治体によって異なるため、制度を分けて理解することが重要です。
国民健康保険料の「世帯で決まる」の意味
厚生労働省によると、市町村の国民健康保険料・国民健康保険税は世帯単位で算定され、世帯の被保険者ごとに応能分・応益分を計算して合計する仕組みです。具体的な算定方法や料率などは各市区町村の条例によって異なります。[参照:厚生労働省 国民健康保険の保険料・保険税について]
代表的なのが、前年所得に応じて計算される「所得割」と、国保加入者の人数に応じてかかる「均等割」です。自治体によってはこれ以外の区分を採用している場合があります。
ここで大切なのは、国保へ加入していない同居家族の所得が、そのまま別の国保加入者の所得割に上乗せされるわけではないことです。例えば本人だけが国保に入り、同居する兄弟が会社の健康保険に加入している場合、兄弟の給与所得を本人の所得として所得割を計算するわけではありません。
年所得40万円なら所得割が高額になるとは限らない
国民健康保険の所得割は、一般に前年の所得を基礎として計算されます。例えばさいたま市でも、その年度の国保税について前年1月から12月までの所得に応じる所得割と、加入者数に応じる均等割を合算すると説明しています。[参照:さいたま市 国民健康保険税]
したがって、フリーランス本人の前年の「所得」が40万円であるなら、その本人について何百万円もの所得があるものとして所得割が計算されるわけではありません。なお、ここでいう所得は売上・収入と同じ意味ではありません。事業所得であれば、基本的には収入から必要経費などを差し引いて所得を計算します。
また国保には所得割とは別に均等割などがあります。そのため「所得40万円だから保険料もほぼゼロ」とは限りませんが、同居する会社員家族の年収まで本人の所得割へそのまま合算されて年間40万円の保険料になる、という理解も正確ではありません。
ただし低所得者向けの軽減判定では世帯所得が重要
注意したいのが均等割などに対する低所得世帯の軽減制度です。厚生労働省では、所得が一定基準以下の世帯について、均等割・平等割などの応益分を7割・5割・2割軽減する制度を案内しています。[参照:厚生労働省 国民健康保険料(税)の軽減について]
この軽減判定では、単に「国保加入者本人の所得だけ」を見るとは限りません。例えばさいたま市では、世帯主、国保加入者、一定の特定同一世帯所属者の前年所得の合計額によって均等割の軽減を判定するとしています。国保に加入していない世帯主、いわゆる擬制世帯主の所得も軽減判定に含まれる場合があります。
つまり、同居する家族の収入が「本人の所得割」に直接加算される問題と、「低所得者向け軽減の判定」に世帯主等の所得が影響する問題は別です。この二つを混同すると、国保の仕組みが非常に分かりにくくなります。
世帯分離すれば最初から本人の所得だけになる?
住民票上の世帯を分ける「世帯分離」によって国民健康保険上も別世帯となれば、世帯単位で行われる軽減判定などに影響する可能性があります。しかし、世帯分離をすれば必ず国保料が安くなる、あるいは加入初回から必ず本人の所得だけですべてが決まる、と一律には言えません。
そもそも所得割については、世帯分離をしなくても国保加入者本人の前年所得を基礎として計算する部分があります。一方、均等割の軽減などは世帯構成や世帯主の所得が関係するため、世帯分離によって判定結果が変わるケースがあります。
さらに自治体によって保険料率や算定方式、減免制度が異なります。厚生労働省も、具体的な国民健康保険料の算定方法については居住する市町村の国保窓口へ確認するよう案内しています。
世帯主が退職した場合は「退職後の健康保険」も比較する
世帯主が会社を辞めたからといって、家族全員が必ず国民健康保険へ加入するとは限りません。退職した人については、勤務先の健康保険の任意継続が利用できるケースや、別の家族の健康保険の被扶養者になれるケースもあります。
フリーランス本人についても、これまで扶養されていた健康保険の資格喪失日を確認し、その翌日以降にどの健康保険へ加入するのかを整理する必要があります。国保へ加入するなら、資格取得時期に応じて年度途中の保険料が月割りで計算されるのが一般的です。
そのため、世帯主の退職時には「家族全員で国保」と最初から決めるのではなく、任意継続した場合の保険料と、市区町村の国保へ加入した場合の世帯全体の保険料を比較することが重要です。
前年より大幅に収入が減った場合は減免制度も確認する
国民健康保険料は前年所得を基礎にするため、「昨年は収入があったが今年突然失業した」という場合には、現在の支払い能力と保険料に大きな差が生じることがあります。
厚生労働省は、災害その他の特別な事情により国民健康保険料の納付が困難な場合、自治体によって保険料の減免や納付猶予を受けられる場合があると案内しています。[参照:厚生労働省 国民健康保険の保険料・保険税について]
また、倒産・解雇・雇い止めなど一定の理由による離職では、非自発的失業者を対象とした国保料の軽減制度に該当することがあります。単なる自己都合退職とは条件が異なるため、離職票や雇用保険受給資格通知などを用意して自治体へ確認するとよいでしょう。
世帯分離をする前に市区町村で試算してもらうのが確実
国民健康保険について最も避けたいのは、「世帯分離すれば安くなるはず」という推測だけで住民票を変更することです。世帯分離は住民票上の世帯を変更する手続きであり、単なる国保料割引の手続きではありません。
まず市区町村の国保窓口へ、本人と同居家族の年齢、誰が国保へ加入するのか、世帯主の退職日、前年所得、現在の健康保険の資格喪失日を伝え、「現在の世帯のまま国保へ加入すると年間いくらになるか」を試算してもらうのが確実です。
そのうえで、世帯構成を変更した場合に国保料や低所得者軽減の判定がどう変わるのかも確認します。自治体によってはウェブサイト上に国保料の試算ページを用意している場合もありますが、退職・年度途中加入・世帯変更が重なるケースでは窓口での確認が安心です。
まとめ:世帯分離しなくても同居家族の収入が本人の所得割へ丸ごと加算されるわけではない
国民健康保険は世帯単位で保険料を算定しますが、「同居家族3人の所得を全部足して、その合計所得に対してフリーランス本人の国保料を計算する」という単純な制度ではありません。所得割は基本的に国保加入者それぞれの前年所得を基礎として計算されます。
一方で、均等割などの低所得者軽減については世帯主や国保加入者等の前年所得が判定に使われるため、国保に加入していない世帯主の所得が影響することがあります。この点では世帯構成が重要になります。
したがって「所得40万円なのに同居家族の収入があるから年間40万円の国保料になる」「世帯分離すれば初回から必ず本人の40万円だけで計算される」と決めつけることはできません。世帯主の退職前後では任意継続などの選択肢も含め、居住する市区町村の国保窓口へ前年所得と家族構成を伝え、現在の世帯の場合と世帯構成が変わる場合の具体的な保険料を試算してもらってから判断することが大切です。


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