個人向け国債を購入しようとしているときに「個人向け国債に税制優遇を検討」というニュースを見ると、今買わずに制度が変わるまで待ったほうが得なのではないかと迷いやすいところです。
2026年8月時点では、個人向け国債の税制優遇について議論が進んでいます。しかし、税優遇の具体的な内容や対象、開始時期が確定した制度として施行されているわけではありません。したがって「来年になれば現在より必ず有利に買える」と考えて購入を延期するのは早計です。
一方、今すぐ全額を購入する必要もありません。個人向け国債は毎月募集されているため、現在の金利、資金を使う予定、税制改正の不確実性を踏まえ、購入時期を分散する方法もあります。
個人向け国債の「税優遇」はまだ決定事項ではない
2026年8月25日の財務大臣会見では、個人向け国債の税制措置についてさまざまな意見や提案があり、関係者や与党と議論していく趣旨の説明がされています。また、個人向け国債の商品性の見直しや新商品の設計も進められています。[参照:財務省 2026年8月25日財務大臣会見]
報道・解説では、2027年度税制改正に向け、個人向け国債をNISAの対象に加える案や、相続税上の優遇措置などが検討事項として取り上げられています。しかし「検討されていること」と「制度として成立したこと」は明確に区別する必要があります。
税制改正は要望が出た段階でそのまま実現するとは限りません。対象商品、非課税となる範囲、上限額、既に保有している国債の扱いなどが変わる可能性もあります。そのため、現段階で「2027年まで待てば利子が非課税になる」と断定することはできません。
現在の個人向け国債の利子には約20%の税金がかかる
現在、個人向け国債の利子には原則として20.315%の税金がかかります。そのため、表示されている税引前利率と実際に受け取る税引後利率には差があります。
例えば2026年8月募集分について、財務省が公表している個人向け国債の利率は「変動10年」が初回年1.87%、「固定5年」が年2.06%、「固定3年」が年1.71%です。税引後ではそれぞれ年1.4901095%、年1.6415110%、年1.3626135%となっています。[参照:財務省 現在募集中の個人向け国債]
例えば100万円を固定5年・年2.06%で保有した場合、単純計算した年間利子は税引前で約2万600円です。税引後では約1万6,415円となります。実際の受取額や初回利子などは発行条件によって確認する必要がありますが、税制優遇が注目される理由はこの税負担にあります。
税優遇を期待して来年まで待つべきとは限らない
仮に将来、個人向け国債について何らかの非課税制度が実現すれば、条件に該当する人にはメリットがあります。しかし待っている期間には現在得られる利子を受け取れないため、「税金だけ」を比較して判断することはできません。
例えば100万円を現在の年1~2%台の個人向け国債へ投じる場合、1年間待てばその期間の利子を受け取る機会を失います。その損失と、将来実現するかまだ確定していない税優遇のメリットを比較する必要があります。
さらに個人向け国債の利率は毎月同じではありません。将来の市場金利によって上がる可能性も下がる可能性もあります。税制だけでなく「来年の金利がどうなるか」という別の不確定要素もあるため、来年まで待つほうが必ず有利とは言えません。
迷うなら一括購入ではなく時期を分ける方法もある
「今の金利も魅力的だが税制改正も気になる」という場合には、資金を一度に投入せず購入時期を分散する方法があります。個人向け国債は原則として毎月募集されているため、この方法を取りやすい商品です。
例えば300万円を個人向け国債に回す予定なら、今すぐ300万円すべてを購入するのではなく、100万円だけ購入し、残り200万円を預金などで待機させる方法があります。その後の金利や税制改正の内容を確認しながら追加購入できます。
これは将来の金利上昇や税制優遇を保証する方法ではありませんが、「今買っておけばよかった」「全部待たなければよかった」というタイミング判断の影響を小さくできます。
変動10年なら将来の金利上昇にもある程度対応できる
個人向け国債には「変動10年」「固定5年」「固定3年」があります。このうち変動10年は半年ごとに適用利率が見直される仕組みです。
そのため「これから金利が上がったら、今買ったことを後悔するのでは」と心配する場合には、変動10年が一つの選択肢になります。購入時点の金利が10年間固定される商品ではないためです。
一方、固定5年・固定3年は購入時の利率が満期まで固定されます。今後金利が下がれば現在の利率を固定できるメリットがありますが、逆に金利が大きく上昇すれば新しく発行される国債のほうが魅力的になる可能性があります。どちらが有利になるかは将来の金利次第です。
個人向け国債は発行後1年間の資金拘束にも注意
個人向け国債は元本割れリスクを抑えた商品として利用しやすい一方、普通預金のようにいつでも自由に引き出せるわけではありません。原則として発行から1年間は中途換金できません。
1年経過後は国による中途換金が可能で、額面金額で買い取られるため、市場価格の下落による元本割れを基本的に心配する必要はありません。ただし中途換金時には、原則として直前2回分の各利子相当額に一定の計算をした金額が差し引かれます。[参照:財務省 個人向け国債の商品概要]
したがって、生活防衛資金や1年以内に住宅購入・自動車購入・教育費などで使う予定のある資金まで個人向け国債へ入れるのは慎重に考える必要があります。
「今買うか待つか」は税金だけでは決められない
個人向け国債を検討するときは、「税優遇が始まるか」という一点だけでなく、資金の目的から判断することが重要です。数年以上使う予定がなく、価格変動リスクを大きく取りたくない資金なら、現在購入する合理性は十分あります。
反対に、税制改正の結果を確認してから判断したい資金であれば、現金として待機させる選択も間違いではありません。ただし待機中の預金金利と現在の個人向け国債の税引後利率を比較しておきましょう。
また「個人向け国債に税優遇が導入されるらしい」というニュースだけを根拠に、現在保有している国債を解約したり購入計画を大幅に変更したりするのは避けたいところです。制度の詳細が正式決定した段階で、既存保有分が対象になるのか、新規購入分だけなのかなどを確認する必要があります。
まとめ:2027年の税優遇だけを理由に購入を待つ必要はない
2026年8月時点では、個人向け国債の魅力向上や税制上の優遇について検討が進んでいます。しかし、「来年から個人向け国債が必ず非課税になる」「来年買えば現在より必ず得になる」と決まっているわけではありません。
現在募集されている個人向け国債にも一定の利率が付いているため、数年以上使わない安全資産として保有したい資金なら、今購入することにも合理性があります。一方で制度改正が気になるなら、全額を待つか全額を今買うかの二択ではなく、一部を現在購入して残りを後から購入する方法も検討できます。
個人向け国債は「いつ買えば最も得か」を正確に予測するより、使う予定のない期間、必要な流動性、固定金利と変動金利の違いを踏まえて選ぶことが大切です。税制改正については報道だけで判断せず、財務省や金融庁から正式な制度内容が公表された時点で改めて確認するとよいでしょう。


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