会社に就職してフルタイムで働いているのに、数か月たっても健康保険や厚生年金への加入手続きが行われない場合、「試用期間だから加入できないのか」「会社が手続きを先延ばしにしているだけなのか」と不安になることがあります。
社会保険の加入は、会社が正社員と呼んでいるか、試用期間が終了したかだけで決まるものではありません。適用事業所で被保険者となる要件を満たしていれば、試用期間中であっても原則として加入対象になります。
特に朝から夕方まで週6日勤務するようなフルタイムに近い働き方では、単に「まだ試用期間だから」「会社がまだ手続きを考えていないから」という理由だけで社会保険への加入を自由に先送りできるわけではありません。ただし、事業所が法人か個人事業かなどによって前提が変わるため、順番に確認することが重要です。
試用期間でも社会保険の加入対象になる
日本年金機構は、試用期間について明確な考え方を示しています。入社後に従業員としての適格性を見るため試用期間を設けていても、その期間は健康保険法・厚生年金保険法上の「臨時の雇用期間」には該当せず、被保険者の要件を満たしていれば加入手続きが必要とされています。[参照:日本年金機構]
さらに日本年金機構は、試用期間を理由に資格取得日を試用期間終了後としてしまう事例を誤りとして紹介し、被保険者資格は実際に適用事業所で使用されるようになった日から取得するという考え方を示しています。[参照:日本年金機構]
例えば6月1日に入社し、6月1日から通常の従業員として勤務している人について、「最初の3か月は試用期間なので9月から社会保険」という扱いが当然に認められるわけではありません。加入要件を最初から満たしているのであれば、入社時点からの資格取得が基本となります。
従業員10人程度でも会社なら社会保険の対象になり得る
「社員が10人しかいないから社会保険に入らなくてもよい」という考え方にも注意が必要です。日本年金機構によると、株式会社などの法人事業所は、常時従業員を使用する場合、健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になります。従業員数が50人以下だから社会保険そのものが任意になる、という意味ではありません。[参照:日本年金機構]
一方、個人事業所については業種と人数による違いがあります。2026年時点では、常時5人以上の従業員を使用する法定の業種の個人事業所も原則として適用対象です。厚生労働省が示す対象業種には「焼却・清掃」なども含まれています。[参照:厚生労働省]
廃棄物処理会社についても、法人なのか個人事業なのか、実際の事業内容がどの適用業種に該当するのかを確認する必要があります。そのため会社名だけで最終判断はできませんが、法人で従業員を雇っているケースなら、まず強制適用事業所である可能性を確認すべきでしょう。
「アルバイト扱い」でも加入対象から外れるとは限らない
社会保険では「正社員」「アルバイト」「試用社員」という会社内の名称だけで加入可否を判断するわけではありません。実際の雇用期間や所定労働時間・日数などの労働実態が重要です。
厚生労働省によれば、正社員より短時間で働くパート・アルバイトであっても、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上であれば、従来から社会保険の加入対象です。さらに一定規模以上の事業所では、4分の3未満でも一定条件を満たす短時間労働者が加入対象になります。[参照:厚生労働省]
例えば正社員が週40時間勤務の会社で、本人もほぼ同じ日数・時間を働いているのであれば、「給与上はアルバイト扱いだから社会保険なし」という説明だけでは加入対象外になる根拠にはなりません。
会社が「まだ手続きは考えていない」と言っている場合
加入要件を満たしている従業員について、社会保険へ加入させるかどうかを事業主が好きな時期に決められるわけではありません。日本年金機構では、事業主が被保険者資格取得届を事実発生から5日以内に提出する手続きを案内しています。[参照:日本年金機構]
そのため、加入要件を満たしているにもかかわらず数か月間手続きをせず、「今のところ考えていない」という状態であれば、制度上適切な処理なのか確認する必要があります。ただし、事情を確認せず直ちに「違法企業」と断定するのではなく、まず会社が社会保険の適用事業所なのか、自分の資格取得届が本当に提出されていないのかを確認するのが確実です。
日本年金機構では、全国の厚生年金保険・健康保険の適用事業所を会社名や所在地などから検索できるシステムも公開しています。[参照:日本年金機構 適用事業所検索]
社会保険だけでなく労働条件も書面で確認する
入社時に「試用期間は1~3か月」「その後に採用を決める」と口頭だけで説明され、正社員になったことも口頭、給与や手当の条件も曖昧という場合には、社会保険とは別に労働条件そのものを整理しておくことが重要です。
雇用時には賃金、労働時間、契約期間、就業場所・業務、休日など一定の労働条件について明示が必要です。厚生労働省はモデル労働条件通知書なども公開しています。[参照:厚生労働省]
「正社員になったら給料はいくらになるのか」「手当はいつから付くのか」「試用期間はいつ終了したのか」「社会保険の資格取得日はいつなのか」といった点を口頭の記憶だけに頼らず、労働条件通知書・雇用契約書・給与明細などで確認しておくとトラブルを整理しやすくなります。
朝7時~17時・週6日勤務なら労働時間も確認したい
社会保険とは別問題ですが、朝7時から17時まで週6日という勤務については、実際の休憩時間と労働時間を確認する必要があります。労働基準法上、原則として法定労働時間は1日8時間・週40時間で、これを超えて時間外労働をさせる場合には36協定などのルールがあります。
例えば7時~17時の10時間拘束でも、途中に2時間の休憩があれば実働8時間です。しかし実働8時間を週6日なら単純計算で週48時間となるため、休日の設定、変形労働時間制の有無、時間外労働、36協定、割増賃金などを確認する必要があります。
もちろん「週6日だから直ちに違法」ということではありません。変形労働時間制などが適法に導入されているケースもあるためです。ただし長時間勤務が続いているのに残業代や勤務時間の説明まで曖昧なら、社会保険と併せて勤務記録や給与明細を保存しておくことが大切です。
未加入が疑われるときは年金事務所へ相談できる
会社へ確認しても説明が得られない場合には、年金事務所へ相談する方法があります。日本年金機構では、健康保険・厚生年金保険に関する事業所の手続きは事業所所在地を管轄する年金事務所、個人からの相談については原則として全国の年金事務所で受け付けると案内しています。[参照:日本年金機構]
相談するときには、雇用契約書・労働条件通知書、給与明細、タイムカードや勤務表、入社日が分かる資料などを整理しておくと状況を説明しやすくなります。
社会保険の加入問題は年金事務所が中心ですが、未払い残業代や労働時間、労働条件の明示などは労働基準監督署等が関係する分野です。問題の種類によって相談先を分けることも重要です。
退職するかどうかは社会保険以外の条件も含めて判断する
入社数か月で退職を考える場合、「社会保険に入れてくれない」という一点だけでなく、会社から労働条件について合理的で明確な説明を受けられるかを確認して判断するとよいでしょう。
例えば会社へ「社会保険の資格取得日はいつになりますか」「正社員への変更日と賃金条件を書面で確認できますか」と具体的に質問し、回答を記録しておく方法があります。それでも回答を避け続ける場合は、今後も給与、休日、残業代、社会保険などで認識の違いが生じるリスクを考える材料になります。
なお、後から社会保険の資格が入社時点までさかのぼって認定されるような場合には、保険料の扱いも発生します。そのため退職を決めた場合でも、未加入問題をそのまま放置せず、自分の加入記録がどうなっているか確認しておくことが重要です。
まとめ:試用期間だから社会保険に入れないという扱いには注意
社会保険の適用事業所で加入要件を満たして働いている場合、試用期間だからという理由だけで健康保険・厚生年金への加入を数か月先送りすることは原則としてできません。日本年金機構も、試用期間中であっても要件を満たせば入社日から被保険者となる考え方を明示しています。
ただし「従業員が約10人」「廃棄物処理業」という情報だけで個別の会社について法令違反と断定するのではなく、法人・個人事業の別、社会保険の適用状況、本人の雇用条件を確認することが必要です。
数か月たっても手続きについて説明がなく、正社員になった後の賃金や手当まで曖昧なのであれば、雇用契約書・給与明細・勤務記録を確保したうえで、まず会社へ書面で確認し、解決しなければ年金事務所へ相談するのが現実的です。社会保険だけでなく労働時間や賃金にも疑問がある場合には、それぞれの問題を切り分けて確認することが大切です。


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