フードデリバリー配達員のガソリン代は経費になる?個人事業主の車両費・家事按分と節税の考え方

税金

車を使ってフードデリバリーの配達をしている個人事業主にとって、ガソリン代は大きな支出の一つです。確定申告では、配達業務のために実際に使用した燃料代であれば、原則として必要経費として扱える可能性があります。

ただし、「経費を増やせば税金が減るので、できるだけ高い金額を使ったほうが得」という考え方には注意が必要です。経費は支払った金額がそのまま戻ってくる制度ではなく、事業の利益を計算する際に収入から差し引くものだからです。

この記事では、フードデリバリーを車で行う個人事業主を想定し、ガソリン代を経費にできる範囲、経費を増やすことと節税の違い、車に関して計上を検討できるその他の費用まで分かりやすく整理します。

フードデリバリーで使ったガソリン代は必要経費にできる

所得税における必要経費は、収入を得るために直接必要となった費用や、その業務について生じた費用などが基本になります。そのため、自動車で料理などを配達するために消費したガソリンは、業務との関連性を説明できる範囲で必要経費に算入することが考えられます。

例えば、配達を開始してから注文店舗へ移動し、商品を受け取り、配達先まで届けるために走行した場合、その走行に必要となった燃料には明確な事業上の目的があります。

一方、同じ車で休日の買い物や旅行、家族の送迎などもしている場合、すべてのガソリン代を事業の経費にできるとは限りません。国税庁は、家事上と業務上の両方に関係する費用について、取引の記録などに基づき業務上直接必要だった部分を明らかに区分できる場合、その部分を必要経費にできるとしています。

「ガソリン代を高くすれば節税になる」は必ずしも得ではない

経費について特に誤解しやすいのが、「経費をたくさん使うほど得をする」わけではないという点です。経費は税金から直接同額が差し引かれるものではありません。

簡単な例として、売上が300万円、必要経費が100万円なら、単純化すると差額の200万円が所得計算の出発点になります。ここで業務上必要なガソリン代をさらに10万円支出して経費が110万円になれば、差額は190万円になります。

確かに課税対象となる所得は10万円減ります。しかし、そのためには実際に10万円を支出しています。仮に所得税・住民税などを単純化して合計20%の負担率で考えると、10万円余計に経費を使って減少する税負担は概算2万円です。税金を2万円減らすためだけに10万円を使えば、手元資金は差し引き8万円減ることになります。

したがって、必要な燃料を適正価格で購入することと、節税だけを目的として不要な燃料を購入したり、あえて高い給油方法を選んだりすることは別問題です。事業では「経費を増やす」よりも「必要な経費を漏れなく計上し、不要な支出を減らす」ことのほうが基本的には利益を残しやすくなります。

ガソリン代は事業用と私用を分ける「家事按分」が重要

配達専用車として使用しているのであれば事業との関係は比較的整理しやすいですが、日常生活でも同じ自動車を使っている場合には、事業用部分と私用部分を合理的に区分する必要があります。これが一般に「家事按分」と呼ばれる考え方です。

例えば、年間走行距離が20,000kmで、そのうち配達業務による走行が15,000kmだった場合、走行距離を合理的な基準として利用できる状況なら、事業使用割合を75%として管理する方法が考えられます。年間の対象となるガソリン代が24万円なら、24万円×75%=18万円という計算です。

重要なのは、割合を何となく決めるのではなく、配達記録、走行距離、業務日数、給油記録などから説明できる状態にしておくことです。どの方法が適切かは実際の車の利用状況によって異なります。

記録しておきたい情報

  • 給油した日付
  • ガソリン代と給油量
  • 領収書・レシート・カード利用明細
  • 配達業務を行った日
  • 業務開始時・終了時などの走行距離
  • 年間走行距離と業務使用距離

毎日の記録が負担になる場合でも、後から根拠を説明できるよう、自分の業務形態に合った継続的な記録方法を決めておくと確定申告時の整理が楽になります。

車の配達ではガソリン以外にも経費候補がある

「燃料以外にほとんど経費がない」と思っていても、車を使ったフードデリバリーでは、業務のために実際に負担している費用がほかにも存在する場合があります。経費を無理に作るのではなく、すでに事業のために支払っている費用を漏れなく確認することが大切です。

代表的には、次のような支出について事業との関連性を確認することになります。

費用 考え方の例
ガソリン代 配達業務に使用した部分
駐車料金 配達業務のために必要となったもの
高速道路・有料道路料金 業務上必要となったもの
オイル交換・整備費 事業使用部分を考慮して判断
タイヤなどの消耗品 事業使用部分を考慮して判断
自動車保険料 事業使用部分を考慮して判断
車両購入費 取得価額等に応じて減価償却などを検討
スマートフォン通信費 配達アプリなど業務使用部分
スマホホルダー・充電器 配達業務に必要なもの
配達バッグ・備品 業務で使用するもの

特に自動車本体は、購入代金をその年に全額経費にするとは限らず、資産として計上して耐用年数に応じた減価償却が必要になるケースがあります。また、車をプライベートでも利用している場合には、ガソリンと同様に事業使用部分を適切に区分することが重要です。

経費を増やすより「利益と手残り」で考える

個人事業では、税額だけを見ると「経費が多いほうが有利」に見えることがあります。しかし、事業の目的は税金を最小化することだけではなく、最終的に手元へ利益を残すことです。

例えば同じ距離を配達できるのであれば、1か月のガソリン代が5万円かかる方法より4万円で済む方法のほうが、通常は1万円多く利益が残ります。4万円を必要経費として正しく計上したうえで、燃費のよい運転や安価な給油先を利用するほうが合理的です。

「税金が増えるから利益を出さないほうがいい」と考える必要もありません。利益が増えれば税負担が増える場合がありますが、通常は税金を支払った後にも利益の一部が残ります。節税のための無駄遣いではなく、必要な支出を適正に経費化することが基本です。

確定申告に備えて領収書と走行記録を残しておく

ガソリン代を経費として計上する場合には、支出した事実だけでなく、それが配達業務に関係することを説明できるようにしておくことが重要です。給油レシートやクレジットカード明細だけでは私用か業務用か判断できないため、走行記録なども合わせて管理すると根拠を整理しやすくなります。

例えば「1月の総走行距離2,000km、配達業務1,600km、私用400km」のように記録しておけば、事業利用の実態を把握しやすくなります。配達アプリの稼働履歴など、業務を行ったことが分かる資料も保存しておくとよいでしょう。

税務上の具体的な処理は、事業所得か雑所得か、車両の所有形態、事業と私用の利用状況、青色申告か白色申告かなどによって異なる場合があります。判断に迷う高額な支出や車両購入費などについては、税務署や税理士へ個別に確認するのが安全です。

まとめ:ガソリンは必要な分を使い、業務分を正しく経費にする

車を使ったフードデリバリーでは、配達業務のために必要となったガソリン代は必要経費として扱える可能性があります。ただし、私用でも同じ車を使用している場合には、業務に必要だった部分を合理的に区分することが重要です。

そして、「経費になるから高いガソリン代を払ったほうが得」という考え方は基本的に適切ではありません。経費を1万円増やしても1万円の税金が戻るわけではなく、実際にはその支出によって手元のお金が減ります。

節税を考えるのであれば、不要なガソリンを使うのではなく、ガソリン代、整備費、駐車料金、通信費、配達用品、車両の減価償却など、事業のために本当に支払った費用を記録し、計上できるものを漏らさないことが大切です。経費を増やすこと自体を目的にせず、売上から必要経費と税金を差し引いた後に、どれだけ手元へ利益を残せるかという視点で配達事業を管理するとよいでしょう。

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