年の途中まで生命保険会社などで保険外交員として働き、その後は別の会社でパート・アルバイトとして働く場合、年末の税金計算が少し複雑になります。特に注意したいのが、保険外交員時代に受け取ったお金が給与所得なのか、外交員報酬として事業所得・雑所得になるのかという点です。
保険外交員は働き方によって、会社から給与として支払われる部分と、外交員報酬として支払われる部分が存在することがあります。給与なら基本的に個人的な外食費や手土産代を自由に必要経費へできませんが、事業所得・業務に係る雑所得となる外交員報酬なら、その収入を得るために直接必要だった費用を必要経費として差し引ける可能性があります。
また、「夫の扶養に収めたい」という場合には、所得税上の配偶者控除・配偶者特別控除と、健康保険の130万円基準は別制度であることも重要です。確定申告で経費を計上して所得が減れば所得税上の判定には影響しますが、健康保険の扶養では税法上の必要経費がそのまますべて差し引けるとは限りません。
本記事では、1月から4月途中まで保険外交員、5月以降は以前の勤務先へ戻って給与を受け取っているケースを想定し、確定申告で何を申告するのか、外食費・手土産代は経費にできるのか、夫の扶養はどう判定されるのかを順番に解説します。
※本記事は2026年8月時点の国税庁・協会けんぽの公開情報に基づく一般的な解説です。保険外交員の報酬区分や健康保険の扶養認定は個別契約によって異なるため、手元の源泉徴収票・支払調書を確認し、必要に応じて税務署や加入している健康保険へ確認してください。
- 最初に確認するのは「源泉徴収票」と「支払調書」
- 現在のパート給与と保険外交員時代の収入を単純に足すだけではない
- 保険外交員の報酬は必要経費を差し引ける場合がある
- 客先への手土産代は経費になる可能性が高い
- 勤務中の外食費は原則としてそのまま経費にはできない
- 経費にできそうなもの・難しいものを具体例で整理
- 外交員には「家内労働者等の必要経費の特例」がある
- 保険会社から「源泉徴収票」しか出ていない部分には自由に経費を付けられない
- 今年の確定申告はどう進める?
- 前職の給与だけなら現在の勤務先で年末調整できる場合もある
- 税金上の「夫の扶養」は給与収入の合計額だけで判断しない
- 配偶者特別控除があるため「扶養を1円超えたら大損」ではない
- 健康保険の130万円の扶養は確定申告とは別物
- 2026年4月以降の健康保険扶養では労働契約上の収入も重要
- 夫の会社独自の「扶養手当」には別の基準がある
- 領収書が残っていない経費はどうする?
- 確定申告までに準備するもの
- 具体例|外交員報酬80万円・パート給与80万円ならどう考える?
- 扶養に収めるために経費を増やすことはできない
- まとめ|まず保険外交員時代の収入が給与か外交員報酬かを確認する
最初に確認するのは「源泉徴収票」と「支払調書」
保険外交員だった期間の確定申告を考えるときは、まず当時の保険会社から何の書類を受け取っているか確認します。
代表的なのは「給与所得の源泉徴収票」と「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」です。源泉徴収票に記載されているお金は給与所得として扱います。一方、外交員報酬として支払調書が発行されている部分は、一般に事業所得または業務に係る雑所得として申告することになります。
保険外交員では、固定給部分を給与として受け取り、契約成績などによる報酬を外交員報酬として受け取るケースもあります。その場合には、一つの勤務先で働いていても給与所得と事業所得・雑所得の両方が存在することがあります。
現在のパート給与と保険外交員時代の収入を単純に足すだけではない
例えば保険外交員時代に80万円受け取り、5月以降のパート給与が70万円だった場合、「80万円+70万円=年収150万円だから扶養を超える」と単純計算したくなります。
しかし所得税では、収入の種類ごとに所得を計算します。パートの給与については給与所得控除があり、外交員報酬が事業所得なら総収入金額-必要経費=事業所得として計算します。
例えば外交員報酬80万円に対して業務上必要な経費が20万円あれば、事業所得は60万円です。そこへ給与から計算した給与所得を加え、最終的な合計所得金額を算出します。
したがって、税金上の「扶養」を考えるときには、銀行へ実際に振り込まれた総額だけを見るのではなく、所得区分ごとの所得金額を計算する必要があります。
保険外交員の報酬は必要経費を差し引ける場合がある
国税庁は、外交員を事業所得の対象となり得る自由職業の一例として挙げています。また事業所得・業務に係る雑所得では、収入を得るために直接必要となった費用を必要経費へ算入できます。
例えば保険契約の営業活動のために顧客宅へ訪問した際の交通費、顧客へ渡す業務上必要な手土産代、営業用として使用した文房具・郵送料などは、事業との関連性が明確なら必要経費になる可能性があります。
ただし、「保険外交員として働いていた期間に使ったお金なら何でも経費になる」というわけではありません。あくまでその報酬を得るために必要だった支出かどうかで判断します。
客先への手土産代は経費になる可能性が高い
顧客への手土産については、営業活動との関係が明確なら接待交際費として必要経費にできる可能性があります。
国税庁も、相手方や支出の理由などから事業を営むうえで通常必要と認められるものについて、取引先への茶菓飲食代や中元・歳暮などを接待交際費の例として挙げています。
例えば契約手続きのため顧客宅を訪問する際に3,000円の菓子折りを購入した、既存顧客への挨拶で業務上必要な贈答品を購入したという場合は、事業との関連性を説明しやすい支出です。
レシートだけでなく、余白や帳簿に「○月○日・○○様訪問・契約更新の挨拶」など相手と目的を記録しておくと、経費としての根拠を整理しやすくなります。
勤務中の外食費は原則としてそのまま経費にはできない
一方、「仕事中に外で昼食を食べた」という理由だけでは、通常の食事代を必要経費にすることは難しいでしょう。食費は原則として生活上の支出である家事費だからです。
例えば営業途中に一人でファミリーレストランへ入り800円の昼食を食べた場合、仕事をしていなくても昼食は必要になるため、原則として個人的な食費と考えます。
一方、顧客と契約相談を兼ねて食事をし、その費用を自分が負担したなど、営業上の接待として必要だったことを説明できる場合には接待交際費となる可能性があります。
「外食した場所」ではなく、「誰と、何のために支出したのか」が重要です。単なる自分の昼食代まで経費として申告するのは避けましょう。
経費にできそうなもの・難しいものを具体例で整理
保険外交員の業務で発生しやすい支出を一般的な考え方で整理すると、次のようになります。
| 支出 | 一般的な考え方 |
|---|---|
| 顧客への営業上の手土産 | 事業との関連性があれば接待交際費になり得る |
| 顧客との商談のための飲食代 | 業務目的を説明できれば接待交際費になり得る |
| 自分一人の通常の昼食 | 原則として家事費であり必要経費にならない |
| 顧客訪問の交通費 | 業務に直接必要なら経費になり得る |
| 営業用の切手・封筒・文具 | 業務使用分は経費になり得る |
| 仕事と私用を兼ねたスマホ料金 | 合理的な割合で事業使用分を按分 |
| 私服・普段の靴 | 私生活でも使用する通常のものは原則として難しい |
仕事とプライベートの両方で使った支出については、全額を経費にするのではなく、合理的な基準で事業用部分を分ける必要があります。
国税庁も、事業と家事の両方に関係する「家事関連費」について、使用時間など合理的な基準によって事業部分を区分するとしています。
外交員には「家内労働者等の必要経費の特例」がある
保険外交員には、通常の必要経費とは別に確認しておきたい制度があります。国税庁の「家内労働者等の必要経費の特例」です。
国税庁は、この特例の対象となる「家内労働者等」に外交員を含めています。2025年分以降については、一定の条件を満たす場合、実際の必要経費が65万円未満でも、所得計算上一定額まで必要経費として認められる制度になっています。
ただし、今回のように同じ年に別会社から給与を受け取っているケースでは注意が必要です。国税庁によると、その年の給与収入が65万円以上なら、この特例は利用できません。
つまり、5月以降の勤務先から2026年中に65万円以上の給与を受け取るのであれば、外交員だから自動的に65万円を経費にできるわけではなく、基本的には実際に支出した必要経費を計算することになります。
保険会社から「源泉徴収票」しか出ていない部分には自由に経費を付けられない
ここは非常に重要です。保険外交員として受け取った金額がすべて給与として源泉徴収票に載っている場合、その給与収入から手土産代や交通費などを一つずつ必要経費として差し引くことは原則できません。
給与所得には給与所得控除という概算経費に相当する仕組みがあるためです。一定の給与所得者には特定支出控除という制度がありますが、通常の事業所得のように「レシートを合計して給与から引く」という申告方法ではありません。
一方、保険会社から「外交員報酬」として支払調書を受け取っている部分については、事業所得または業務に係る雑所得として必要経費を計算できる可能性があります。
したがって、経費を集計する前に、まず保険会社から受け取った書類が「源泉徴収票」なのか「支払調書」なのかを確認することが最優先です。
今年の確定申告はどう進める?
例えば2026年1月から4月まで外交員報酬を受け取り、5月から現在の勤務先で給与を受け取っている場合、確定申告ではそれぞれの所得をまとめて申告します。
外交員報酬が事業所得であれば、「収支内訳書」または青色申告の要件を満たす場合は青色申告決算書を作成し、売上と必要経費から所得を計算します。業務に係る雑所得として申告する場合も、収入と必要経費を集計します。
現在の勤務先から受け取った給与については、年末または退職時などに発行される源泉徴収票をもとに給与収入を入力します。保険会社時代に給与所得もあった場合には、その源泉徴収票の内容も入力します。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、それぞれの所得区分を入力しながら申告書を作成できます。
前職の給与だけなら現在の勤務先で年末調整できる場合もある
保険会社時代の収入がすべて給与所得で、現在も会社員・パートとして給与所得を得ている場合には、前職の源泉徴収票を現在の勤務先へ提出することで、現在の勤務先の年末調整に前職分を含めてもらえる場合があります。
しかし、外交員報酬として事業所得・雑所得がある場合、その部分を現在の会社の年末調整だけで精算することはできません。自分で確定申告する必要があります。
したがって、「前の保険会社から源泉徴収票と支払調書の両方をもらっている」というケースでは、給与部分について現在の会社へ源泉徴収票を提出しつつ、外交員報酬を含め最終的に確定申告する、という形になることがあります。
税金上の「夫の扶養」は給与収入の合計額だけで判断しない
所得税上、夫が配偶者控除または配偶者特別控除を受けられるかどうかは、妻の年間の合計所得金額などで判断します。
2025年分以降の所得税では、配偶者控除の所得要件は配偶者の合計所得金額58万円以下です。給与だけの場合は給与収入123万円以下が一つの目安になります。
58万円を超えても133万円以下の合計所得金額なら、夫本人の所得など一定条件を満たすことで配偶者特別控除の対象になる可能性があります。つまり、「少し基準を超えた瞬間に夫の控除が全部ゼロになる」という制度ではありません。
また、外交員報酬が事業所得なら、税務上認められる必要経費を差し引いた後の所得が合計所得金額へ入ります。
配偶者特別控除があるため「扶養を1円超えたら大損」ではない
例えば妻の所得が配偶者控除の基準を少し超えてしまっても、夫の合計所得金額が1,000万円以下などの要件を満たせば配偶者特別控除が利用できる可能性があります。
国税庁では、配偶者の合計所得金額が58万円超133万円以下の場合について、所得額に応じて段階的に配偶者特別控除を設定しています。
したがって「夫から絶対に扶養内にしてと言われている」という場合にも、まず何の扶養を指しているのかを確認することが大切です。所得税の配偶者控除なのか、健康保険なのか、夫の会社独自の家族手当なのかによって基準が全く違います。
健康保険の130万円の扶養は確定申告とは別物
特に注意が必要なのが社会保険です。夫の会社の健康保険の被扶養者でいる場合、代表的な基準として年間収入130万円未満があります。
しかし、この130万円は所得税の「所得」と同じ計算方法ではありません。協会けんぽも、自営業者などについて、健康保険の年間収入を計算するときに控除できる経費は、所得税の必要経費とは異なると案内しています。
例えば税務申告上はスマホ代、減価償却費、接待交際費などを必要経費として所得から控除できても、健康保険の扶養判定では同じ金額をすべて控除できるとは限りません。
したがって、「確定申告で外交員報酬から経費をたくさん引けば130万円以内になる」という考え方は危険です。社会保険上の扶養については、夫が加入している協会けんぽ・健康保険組合へ外交員報酬の扱いを確認する必要があります。
2026年4月以降の健康保険扶養では労働契約上の収入も重要
2026年4月からは、給与で働く被扶養者の年間収入認定について、労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入を重視する取扱いが始まっています。
ただし今回のように同じ年に外交員として事業・雑所得に該当する収入がある場合は、「現在のパート契約が130万円未満だから自動的に扶養継続」とは限りません。他の収入が見込まれる場合の扱いも含め、加入している健康保険へ確認する必要があります。
特に保険外交員時代の収入と現在の給与を合わせると130万円前後になる場合は、確定申告より前に健康保険側へ問い合わせておくと安心です。
夫の会社独自の「扶養手当」には別の基準がある
さらにもう一つ確認したいのが、夫の会社から配偶者手当・家族手当などが支給されているケースです。
会社独自の手当は税法や健康保険とは別制度なので、「年収103万円以下」「130万円未満」「所得○万円以下」など、勤務先が独自に条件を定めています。
例えば税法上は配偶者特別控除が使えて、健康保険でも扶養認定されているのに、夫の勤務先の配偶者手当だけ支給対象外になるというケースもあります。
そのため家計への影響を確認するなら、所得税・健康保険・会社の家族手当の3つを別々に確認する必要があります。
領収書が残っていない経費はどうする?
外交員時代に確定申告することを想定しておらず、レシートを捨ててしまったというケースもあります。経費については、自分で実際に支払ったことと業務との関連性を説明できる記録が重要です。
クレジットカード明細、銀行口座履歴、交通系ICカード履歴、ネット通販の注文履歴などから支払記録を確認できることもあります。
ただし「たぶん毎月2万円くらい使っていた」という推測だけで架空の経費を計上することはできません。記録から合理的に確認できるものを整理しましょう。
特に接待交際費については、金額だけでなく相手と目的も記録しておくことが重要です。
確定申告までに準備するもの
今回のようなケースでは、次の資料を集めておくと申告作業がかなりスムーズになります。
- 保険会社からの源泉徴収票:給与として支払われた部分がある場合
- 外交員報酬の支払調書:外交員報酬として受け取った部分
- 現在の勤務先の源泉徴収票:5月以降の給与
- 外交員時代の必要経費の領収書・明細:交通費、顧客への贈答品、営業用消耗品など
- 源泉徴収された所得税額:支払調書などで確認
- 生命保険料控除・医療費控除等の証明書:該当する場合
まずは収入関係の書類を「給与」と「外交員報酬」に分けるだけでも、何を確定申告すべきかかなり見えやすくなります。
具体例|外交員報酬80万円・パート給与80万円ならどう考える?
例えば1月~4月の外交員報酬が80万円、業務上の実費経費が25万円、5月以降の給与収入が80万円だったとします。
外交員報酬が事業所得であれば、80万円-25万円=55万円が事業所得になります。一方、給与80万円については80万円全額が給与所得になるわけではなく、給与所得控除を適用して給与所得を計算します。
そしてその2つの所得を合計し、基礎控除などの所得控除を適用して本人の所得税を計算します。同時に、夫側の配偶者控除・配偶者特別控除についてもこの合計所得金額を使って判断します。
一方、健康保険の扶養では同じ25万円の経費がすべて収入から控除されるとは限らないため、税金では扶養範囲でも社会保険では扶養を外れるというケースは起こり得ます。
扶養に収めるために経費を増やすことはできない
確定申告では、実際に事業上必要だった費用を正しく経費にすることは当然認められています。しかし、「扶養に収めたいから経費をあと10万円作りたい」という考え方はできません。
例えば友人との食事、家族用のお菓子、自分の昼食などを「営業で使ったことにする」のは適切ではありません。
反対に、本当に顧客への手土産や訪問交通費を自腹で負担していたのに、申告方法が分からないから一切経費にしない必要もありません。正当に認められる経費は記録を整理して申告すればよいのです。
「扶養の数字に合わせて経費を作る」のではなく、「実際にあった経費を正しく計上した結果として所得がいくらになるか」を確認するのが正しい順序です。
まとめ|まず保険外交員時代の収入が給与か外交員報酬かを確認する
1月から4月途中まで保険外交員として働き、5月から別の会社へ戻って給与を受け取っている場合には、まず保険会社から発行された源泉徴収票と支払調書を確認してください。
保険外交員時代の金額が給与所得として源泉徴収票に記載されている部分については、原則として通常の事業経費を個別に差し引くことはできません。一方、外交員報酬として事業所得または業務に係る雑所得になる部分については、収入を得るために必要だった実際の経費を差し引けます。
顧客への業務上の手土産や商談に伴う接待費、顧客訪問の交通費などは必要経費になり得ます。ただし、自分一人で食べた通常の昼食などは原則として生活費なので経費にはなりません。
また外交員には家内労働者等の必要経費の特例がありますが、2025年分以降は最低保障額が65万円となっている一方、同じ年の給与収入が65万円以上ある場合にはこの特例を利用できません。5月以降の給与が年間65万円を超える見込みなら、基本的には実際の必要経費を集計することになります。
そして「夫の扶養」は一つではありません。所得税上の配偶者控除・配偶者特別控除では必要経費を差し引いた後の所得が重要ですが、健康保険の130万円基準では税法上の必要経費をそのまますべて控除できるとは限りません。夫の会社独自の配偶者手当がある場合には、さらに別の基準があります。
実務上は、①保険会社の源泉徴収票・支払調書を確認、②外交員報酬に対応する実際の必要経費を集計、③現在の勤務先の源泉徴収票と合わせて確定申告、④夫の健康保険には別途130万円の扶養判定を確認、という順番が最も分かりやすいでしょう。
特に保険外交員時代に給与と外交員報酬の両方を受け取っていた場合は、確定申告の所得区分を間違えやすいため、支払調書と源泉徴収票を持って税務署の申告相談を利用する方法もあります。扶養を維持できるかについては、税務署ではなく夫が加入している協会けんぽ・健康保険組合にも確認しておくと確実です。


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