築40年・築50年を超える古い戸建てでも、必ずしも「建物に価値がないから売れない」「解体して土地として売るしかない」とは限りません。一方で、旧耐震、残置物、下水道未接続、災害リスクなど複数の条件が重なる物件では、一般的な中古住宅とは売却の考え方がかなり異なります。
特に注意したいのが、不動産会社による「買取」と「仲介」の査定額をそのまま比較してしまうことです。例えば買取価格が5万円なのに、別の会社から「150万円で売り出せる」と提案されたとしても、前者は業者が買主になる価格、後者は市場で買主を探すための売出価格であり、数字の意味が違います。
この記事では、築古戸建てを安値で買取してもらう場合と、仲介で市場に出して買主を探す場合の違い、築年数と建物価値の考え方、残置物や災害リスクが価格に与える影響、すでに別の買主へ売却の意思を伝えている場合の注意点まで整理します。
築48年だから「解体前提」とは限らない
中古戸建てを考えるうえで、最初に切り分けたいのが「築年数」と「その家を利用できるかどうか」は同じではないという点です。築48年になった瞬間に建物が利用不能になるわけではなく、築70年になったら解体という一律の境界線もありません。
建物を残して購入する人がいるかどうかは、構造、基礎、雨漏り、シロアリ、傾き、腐食、耐震性、間取り、設備、修繕履歴などによって変わります。同じ築48年の木造住宅でも、適切に修繕されてきた住宅と長期間ほとんど手入れされていない住宅では、買主から見た価値が大きく異なります。
また、1981年6月1日より前の建築確認に適用されていた耐震基準は一般に「旧耐震基準」と呼ばれます。旧耐震だから直ちに売却できないわけではありませんが、買主が耐震性や改修費用を慎重に考える要因にはなります。
古家付き土地として売れることもある
建物自体の市場価値が低くても、土地に需要があれば「古家付き土地」のような位置付けで取引される場合があります。買主が購入後に解体して新築するケースだけでなく、DIYや大規模リフォームを前提として古い建物を購入するケースもあります。
例えば土地だけなら200万円程度の需要が見込める地域で、建物解体に200万円必要なら、買主は単純に土地価格200万円を提示するとは限りません。解体費、残置物処分費、登記費用、造成や上下水道などの追加費用まで考え、「取得後にいくら必要になるか」から購入価格を逆算します。
したがって、「土地値がある=その金額で古家付き物件が売れる」わけでも、「築古=価値ゼロ」でもありません。両極端に考えないことが重要です。
買取5万円と仲介150万円はなぜこれほど違うのか
不動産会社から提示される金額に大きな差が出る最大の理由は、買取価格と仲介の売出価格が別物だからです。
| 比較項目 | 不動産会社の買取 | 仲介による売却 |
|---|---|---|
| 買主 | 不動産会社など | 一般消費者・投資家など |
| 価格 | 低くなりやすい | 買取より高くなる可能性 |
| 売却までの期間 | 比較的短い | 買主が現れるまで不明 |
| 片付け | 現状のまま対応可能な会社もある | 条件によって必要 |
| 確実性 | 条件合意後は比較的高い | 売り出しても売れない場合がある |
買取業者は購入した住宅をリフォームして再販売するなどして利益を得る必要があります。例えば最終的に300万円で販売できると予測しても、残置物撤去80万円、修繕100万円、取得・販売に伴う諸費用などが発生するのであれば、仕入れ価格はかなり低くなります。
一方、「150万円で掲載しましょう」という仲介会社の提案は、通常は150万円で買い取ってくれるという意味ではありません。150万円を売出価格として広告し、その金額に近い条件で買ってくれる第三者を探すという意味です。売れなければ値下げすることもあります。
150万円で1か月だけ売り出すことに意味はある?
すでに他の買主との契約が成立していないことを確認できるのであれば、一定期間だけ仲介市場で反応を見る方法自体には合理性があります。ただし、1か月で売れなかったから150万円では絶対に売れない、とまでは判断できません。
地方の築古戸建ては購入希望者の母数が少なく、条件に合う人が現れるまで数か月以上かかることもあります。一方、問い合わせが何件来たか、内見希望があったか、問い合わせた人が何を理由に見送ったかなどは価格設定を考える材料になります。
例えば150万円で掲載してアクセスはあるのに問い合わせがゼロなら、価格または物件条件に問題がある可能性があります。問い合わせや内見が複数あるものの価格交渉になるなら、100万円なら買いたい、80万円なら買いたい、といった市場の反応が見えてくることがあります。
「掲載できる」と「売れる」は区別する
SUUMOやアットホームなどの不動産ポータルサイトへ掲載できることは、購入希望者に物件を見てもらう機会を増やすという意味ではメリットがあります。ただし、掲載価格そのものが市場価値を証明するわけではありません。
売主が150万円を希望すれば150万円で募集できるケースでも、最終的に買主が現れなければ成約価格は存在しません。そのため査定を受ける際は、「150万円で掲載可能です」だけではなく、同じ地域・価格帯・築年数の戸建てが実際にいくらで成約しているのかを確認することが大切です。
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、不動産の取引価格や地価、防災情報などを確認できます。周辺の売出価格だけではなく実際の取引情報を調べる材料として利用できます。[参照]
5万円で売っても仲介手数料33万円なら28万円の赤字になる?
低価格の不動産では、売買価格より仲介手数料のほうが高くなるケースがあり得ます。2024年7月1日から宅地建物取引業者の媒介報酬規制が見直され、売買価格800万円以下の低廉な空家等については、依頼者一方から受け取れる報酬の上限が税込33万円となっています。
そのため5万円の物件で33万円の媒介報酬が設定されていれば、単純計算では「売却代金5万円-仲介手数料33万円=マイナス28万円」です。ただし、33万円は一定の場合の上限であって、あらゆる低価格物件で自動的に33万円を支払うという意味ではありません。
媒介契約や報酬額の説明を確認し、仲介手数料以外にも登記、測量、残置物処分などの負担がないかを含め、最終的な手取り額を比較する必要があります。国土交通省も低廉な空家等に関する媒介報酬制度を公表しています。[参照]
ゴミ屋敷・残置物は「処分してから売る」が正解とは限らない
大量の家財やゴミが残っている住宅では、先に数十万円を使って処分したほうが高く売れるように思えます。しかし、これは売却方法によって判断が変わります。
例えば残置物処分に70万円かけた結果、売却価格が50万円しか上昇しなければ、売主にとって経済的なメリットはありません。反対に、片付けによって室内を確認できるようになり、購入希望者が大幅に増えるのであれば処分する意味があります。
そのため、先に自己判断で全撤去を発注するより、「現状渡しならいくら」「撤去後ならいくら」という2条件で不動産会社に査定してもらうと比較しやすくなります。
なお、カチタスは公式サイト上で、古い住宅や家財道具が片付いていない住宅についても買取できる場合があると案内しています。一方、同社の基本的な売却サービスは仲介販売ではなく自社による買取です。そのため「カチタスで150万円で1か月だけポータルサイトに仲介掲載」という提案を受けている場合は、誰が媒介業者になるのか、誰が掲載するのかを確認したほうがよいでしょう。[参照]
旧耐震・下水未接続・土砂災害警戒区域・墓地隣接は価格にどう影響する?
築古物件では建物だけでなく、土地や周辺環境も購入判断に影響します。旧耐震、下水道への未接続、土砂災害警戒区域、墓地への隣接などが重なると、購入候補者が限定される可能性があります。
特に土砂災害警戒区域は、単なるイメージの問題ではなく防災上の情報です。国土交通省によると、土砂災害のおそれがある区域について危険の周知や警戒避難体制の整備などが行われています。区域の種類や物件の位置を正確に確認することが必要です。[参照]
墓地隣接については、それを気にしない購入者もいれば敬遠する購入者もいます。つまり建築上の問題とは別に、購入需要を狭める可能性のある条件として価格に反映される場合があります。
周辺の更地が200万円なら自宅も土地値で売れる?
近隣に30坪200万円、80坪600万円といった売地があれば参考情報にはなります。ただし、「売りに出ている価格」と「実際に売れた価格」は別物です。
例えば30坪200万円の土地が半年以上売れていないのであれば、少なくとも現在の市場では200万円で即座に買いたい人が多くない可能性があります。反対に、最終的に180万円などで成約すれば、近隣の土地需要を考える有力な材料になります。
さらに古家付きの場合は、購入者から見ると更地とは条件が違います。解体する買主なら解体費と残置物撤去費が必要ですし、建物を利用する買主ならリフォーム費や耐震改修費などを考えます。
したがって「土地35坪×周辺坪単価」で算出した数字を、そのまま売却価格と考えるのは危険です。近隣の成約事例、土地面積、接道状況、用途地域、地形、上下水道、防災条件などをそろえて比較する必要があります。
最も注意したいのは「5万円で買います」「承諾しました」の部分
価格比較以上に重要なのが、すでに別の相手との売買契約が成立していないかという問題です。不動産売買では契約書を作成して署名押印するのが通常ですが、一般論として契約は必ずしも押印だけによって成立するものではありません。
「契約書に署名していないから自由に別の人へ売れる」と自己判断するのは避けるべきです。これまでに誰と、いつ、どのような条件で合意したのか、メール、LINE、録音、書面、仲介会社との媒介契約、手付金の有無などを整理する必要があります。
特に「5万円なら買います」「承諾します」と明確な意思表示をして、その後に契約書が作成されている状況では、別の不動産会社へ販売を依頼する前に、最初の取引が法的にどの段階にあるのか確認することが最優先です。
契約成立の有無や解除に伴う責任は、具体的なやり取りによって結論が変わります。高額な違約金などの問題につながる可能性もあるため、不明な場合は不動産取引に詳しい弁護士や宅建業者などへ実際の資料を提示して確認するのが安全です。
売却方法を決めるなら「手取り額・時間・リスク」で比較する
築古住宅では、査定価格だけで売却先を決めると判断を誤りやすくなります。重要なのは最終的に手元へ残る金額です。
例えば仲介で150万円で成約しても、残置物撤去70万円、仲介手数料33万円、その他費用が発生すれば手取りは大幅に減ります。一方、業者買取が30万円でも、残置物をそのまま引き取ってもらえて仲介手数料も不要なら、差は当初の査定額ほど大きくない場合があります。
比較するときは、①想定成約価格、②仲介手数料、③残置物撤去費、④解体費の負担者、⑤測量・登記等の費用、⑥引渡し時期、⑦契約不適合責任など売却後のリスクを一覧にして、最終手取り額を計算すると判断しやすくなります。
仲介を試すなら期限と撤退条件を決めておく
急いで現金化する必要がなく、既存の売買契約にも問題がないのであれば、仲介で市場の反応を見る選択肢はあります。その場合、「150万円で1か月」「問い合わせがなければ120万円」「3か月で成約しなければ買取も再検討」など、あらかじめ判断基準を作っておく方法があります。
ただし、不動産会社が提示する査定額については「その価格で売れる根拠」を確認しましょう。近隣成約事例を提示してもらい、査定価格と売出価格を区別するだけでも、高値査定だけを理由に会社を選んでしまうリスクを減らせます。
まとめ:築古戸建ては「築年数」だけで売却価格を決めない
築48年の戸建てだから解体するしかない、という一律のルールはありません。建物をリフォームして利用する人、古家付き土地として購入する人、買取再販する不動産会社など、買主によって物件の評価方法は異なります。
一方、旧耐震、残置物、下水未接続、土砂災害警戒区域、墓地隣接などの条件が重なれば、一般的な中古住宅より売却難易度が高くなることも考えておく必要があります。「近所の土地が200万円だから自分の土地も同程度」と単純に判断せず、実際の成約価格と売却に必要な費用を確認することが重要です。
また、5万円の買取と150万円の仲介売出価格は同じ種類の数字ではありません。最終的な手取り額と、売れるまでの時間、売れないリスク、片付け費用、売却後の責任まで含めて比較することが、築古住宅の売却では特に重要です。
そして、すでに別の買主へ購入の申込みを承諾している場合には、新たに販売活動を始める前に既存の契約関係を確認してください。不動産は金額が大きく、後から契約トラブルになると売却価格の差以上の負担になる可能性があります。まず契約関係を整理し、そのうえで買取と仲介それぞれの「最終手取り額」を比較することが安全な進め方です。


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