役員賞与と事前確定届出給与の実務対応|支給しなかった場合の税務上の取扱い

税金

法人税において、役員に対する賞与(役員賞与)は原則として損金算入が認められていません。しかし、「事前確定届出給与」として適正に届け出た金額については、一定の要件を満たすことで損金算入が可能になります。本記事では、その事前確定届出給与を届け出たにもかかわらず実際に支給しなかった場合の税務上の処理について解説します。

事前確定届出給与とは

事前確定届出給与とは、所定の時期に所定の金額を確定的に支払うことを定め、あらかじめ税務署に届出をすることで、その支払額を損金として認められる制度です。この制度により、役員賞与も一定の条件下で損金算入が可能となります。

届出書の提出期限や支給日の遵守が厳格に求められるため、支払いの有無が重要なポイントとなります。

支給予定額が0円だった場合の基本的な考え方

事前確定届出給与として100万円を届出していたにもかかわらず、実際には支給しなかった場合、その届出額は税務上、事前確定届出給与とは認められません。理由は「届出通りに支給されなかった」ため、形式基準を満たさないからです。

そのため、支給がなかった場合には、そもそも「支給」自体がなかったことになるため、損金処理もできません。未払計上や認定損のような処理は行わず、「不発生」として帳簿に記載しないのが一般的です。

未払計上と損金不算入の違い

「未払計上」とは、実際の支払いはないが、会計上発生したとみなして費用計上する方法です。しかし、事前確定届出給与においては、未払での損金算入は認められていません。支給実績がなければ、未払計上自体が否認されます。

例外的に、「支給の意思があり、かつ支給の遅延がやむを得ない事情による場合」は税務上認められることもありますが、支給そのものを取り止めた場合には対象外です。

税務調査や修正申告のリスク

実際に支給が行われなかったにもかかわらず、会計上損金処理した場合、税務調査で否認される可能性があります。その際は、修正申告を求められ、加算税や延滞税が発生するリスクも考えられます。

したがって、事前確定届出給与の支給を取り止めた場合は、帳簿に計上せず、何もなかったように処理するのが正しい実務です。

実務上の対応策

将来的に支給できない可能性がある場合、最初から届出を控えるか、支給予定額を慎重に設定することが求められます。事前確定届出給与は「確定的な意思表示」と「履行の実績」が鍵となるため、実態に即した申請が必要です。

また、支給取り止めの理由がある場合でも、事前に税理士や会計士へ相談し、書面での対応記録を残しておくと安全です。

まとめ

事前確定届出給与として届出を行ったにもかかわらず、実際に支給をしなかった場合、その支給予定額は損金算入できません。未払費用として計上することもできず、「支給されなかったため、発生しなかった」として処理するのが正しい実務対応です。リスク回避のためにも、金額設定や支給判断には慎重さが求められます。

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