相続預金と税務署への報告義務|銀行が提出する支払調書の仕組みと注意点

貯金

相続が発生すると、故人の預金を相続人に分配する際に銀行がどのような報告を税務署へ行うのか、気になる方も多いのではないでしょうか。本記事では、相続預金に関して銀行が提出する支払調書の内容やその影響について、わかりやすく解説します。

銀行は相続に関して税務署に報告しているのか?

結論から言うと、銀行は一定額以上の相続預金支払いがあった場合、税務署に「相続預金等支払調書」を提出する義務があります。これは主に課税の公平性を確保するための措置で、被相続人の資産状況と相続人への支払い内容を明確にする目的があります。

2021年からはこの調書提出義務の範囲が拡大され、預金残高が500万円以上ある場合や一定の支払いが行われた場合には、ほぼ確実に報告が行われると考えてよいでしょう。

支払調書に記載される情報とは?

銀行が提出する支払調書には、以下のような情報が含まれます。

  • 被相続人の氏名・住所・死亡日
  • 相続人の氏名・住所・続柄
  • 支払金額・支払日
  • 支払い方法や配分内容

つまり、「誰に」「いくら」支払ったかが明確に記録されており、税務署もその内容を元に各相続人の申告内容との整合性をチェックしています。

相続人が複数いる場合の振込と調書提出

たとえば相続人が妻A、子B、子Cの3名で、それぞれに3,000万円、1,500万円、1,500万円の割合で分配された場合、銀行はその分配に基づいた支払調書を作成し、それぞれの相続人に対する支払内容を税務署に報告します。

このとき、相続人全員の同意がある相続届が提出され、銀行からの支払いが行われた記録も残ります。

一括受取後の再分配はどう扱われる?

相続手続きの簡略化などの理由で、相続人の1人(例:妻A)が一旦6,000万円を全額受け取り、その後にB・Cにそれぞれ1,500万円ずつを分けるという方法を取る場合もあります。

しかしこの場合、銀行からは「全額を妻Aに支払った」という記録だけが税務署に報告されます。後日、妻Aが子供にお金を渡す行為は「贈与」とみなされる可能性があり、贈与税の課税対象となるリスクもあります。

こうしたトラブルを防ぐためにも、相続人全員への直接振込や、相続協議書で明確に分配内容を記載したうえでの対応が重要です。

注意点と節税のポイント

1. 相続税の申告対象になるかの確認
相続税には基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)がありますが、これを超える場合は申告が必要になります。預金以外の資産(不動産など)も含めて全体で確認を。

2. 贈与と相続の違いに注意
一括で誰かが受け取り、あとで分配する場合は贈与とみなされ課税リスクがあります。特に税務署は調書ベースで管理しているため、事実に基づく正確な申告が求められます。

3. 専門家への相談
相続税や贈与税の取り扱いは複雑なため、税理士などの専門家に相談することで不要なトラブルを防ぐことができます。

まとめ:調書の内容を理解してトラブルを防ごう

銀行は相続預金の支払いに関して税務署へ詳細な調書を提出しており、「誰がどれだけ受け取ったか」は確実に記録されています。

後日の贈与扱いや申告漏れによる追徴課税などを防ぐためにも、相続人間での配分は最初から明確にし、銀行への提出資料や税務申告の整合性を保つことが重要です。

不安な場合は、早めに税理士や司法書士に相談し、安心して相続手続きを進めましょう。

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