日常的にキャッシュレス決済が浸透するなかで、「お店ではクレジットカード手数料を上乗せできないのに、なぜ税金支払いでは手数料を請求されるのか?」と疑問を持つ方も多いはずです。実はこの違いには、商取引と公共サービスという性質の違いや、クレジットカード業界のルールが関係しています。本記事では、その仕組みと法的根拠をわかりやすく解説します。
クレジットカード手数料を上乗せできない理由
通常の商取引において、店舗がクレジットカードの利用者に対して手数料を別途請求することは、クレジットカード会社との加盟店契約に違反する可能性があります。これはカード会社(例:VISA、Mastercard)が定める「加盟店規約」により、「カード利用によって価格を不利にしてはならない」と定められているためです。
たとえば、現金で支払うと1,000円の商品を、カード支払いだと1,030円にすることは基本的に認められておらず、仮に実施している店舗があれば規約違反の恐れがあります。
自治体がカード手数料を上乗せしている理由
一方、自治体や税務機関などがクレジットカードによる税金・公共料金の支払いに際して、手数料を別途徴収するケースは少なくありません。これは民間店舗のように「物品販売」に該当せず、カード会社との直接的な加盟店契約を結んでいないケースが多いからです。
多くの場合、自治体は外部の決済代行事業者(例:株式会社〇〇ペイなど)を経由してクレジットカード決済を実現しています。この代行業者が発生する決済手数料を市民側に転嫁しているため、「カード手数料=利用者負担」となるわけです。
実例:市民税や固定資産税の支払い時の手数料
たとえば東京都23区内の自治体では、住民税や固定資産税をカードで支払う際に「納付金額の0.8%程度」の手数料が課されることがあります。10万円の納税なら、800円前後の手数料を負担することになります。
これは「自治体が納税を促進する手段としてカード決済を導入したものの、そのコストを住民税等から出すことが難しいため、利用者に負担を求めている」という構図です。
手数料徴収は違法ではないのか?
この点については明確に違法ではありません。手数料の徴収自体は、事前に説明されていて利用者が同意したうえで行われるため、消費者契約法にも違反しません。また、自治体はサービス提供者ではなく公共機関であるため、商取引としての規制対象外となります。
加えて、総務省や各自治体は「カード納付に関する手数料は利用者負担」と明記しており、利用者もそれを了承した上で支払う構造になっています。
公共料金・行政手続きのキャッシュレス化の現状
近年はコンビニ収納やスマホ決済アプリの普及により、行政もキャッシュレスに対応する動きが加速しています。しかしその利便性の裏にはコストが存在し、その負担をだれが負うかという議論は今後も続くでしょう。
一部自治体では「クレジットカード払いでも手数料無料」としているところもありますが、その原資は税金であり、別の形で市民に還元されているとも言えます。
まとめ:手数料上乗せは商取引と公共取引の違いから
クレジットカードの手数料を上乗せしてはいけないというルールは、加盟店契約に基づく「商取引」での話です。一方、税金や行政サービスへのカード支払いでは、自治体がカード加盟店ではなく、代行業者を通じているため手数料が上乗せされる構造になっています。
違法性はなく、住民の任意の選択によって成り立っているため、利便性とコストを天秤にかけて選ぶのが現実的な判断となるでしょう。
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