障害年金を受給しながら働くことは、多くの方にとって重要な選択肢です。特に年収200万円前後で生活が厳しいと感じている場合、転職やスキルアップによって年収アップを目指すことは自然な流れでしょう。この記事では、ASD(自閉スペクトラム症)で障害者雇用を受けながら障害年金を受給している方が年収アップを目指す際に知っておくべきポイントを、制度と現実のバランスを踏まえて解説します。
障害年金と労働収入の関係:基本的な仕組み
障害年金は、障害の状態や日常生活能力に基づいて支給されるものです。原則として、労働収入があることだけで支給停止になることはありません。ただし、労働の内容や収入が「障害等級に見合わない」と判断された場合、等級変更や支給停止の可能性があります。
たとえば、障害基礎年金2級は「日常生活に著しい制限がある」ことが要件です。その状態でフルタイムで高収入の仕事に従事していると、実態と等級が一致していないと判断される可能性が出てきます。
どの程度の収入で障害年金に影響が出る?
障害年金に明確な「収入の上限」はありませんが、年収300万円~400万円あたりを超えると、ケースによっては年金の見直し対象になる可能性が高くなります。特に正社員やドライバーなどで常勤に近い働き方をしていると、定期的な障害状態確認(診断書提出)時に影響が出ることがあります。
一方で、同じ年収でも時短勤務やサポート付き就労などの形態であれば、障害の程度が重いと判断される可能性もあるため、働き方の工夫が重要です。
準中型免許取得とトラックドライバーへの転職の注意点
準中型免許を取得してドライバーとして転職すること自体は前向きなステップです。ただし、トラックドライバーの仕事は体力・集中力・対人対応が求められる場面も多く、ASD特性と適合するかを事前に検討しましょう。
企業によっては障害者雇用制度を活用してトラック業務に従事できる場合もありますが、一般採用枠に移ると障害年金との両立に注意が必要です。月収が大きく増えると、障害の程度に対する疑義が出やすくなるからです。
障害年金を維持しながら年収を上げるための工夫
- 短時間正社員制度や在宅勤務を活用する
- 障害特性に合った職場を選ぶ(合理的配慮のある企業)
- 複数の収入源(副業など)を組み合わせて分散させる
- 支給停止リスクのある年収帯を避ける
また、日本年金機構の相談窓口や、障害年金専門の社会保険労務士への相談も有効です。
実際の例:年収を上げたが障害年金を維持しているケース
たとえばASDのある30代男性が、障害者雇用のパート勤務(月給15万円)と副業(在宅ライターで月収3~5万円)を組み合わせて、年収約250万円を実現した事例があります。この方は「就労が可能であっても生活や対人面に制限がある」と診断され、障害年金2級を維持しています。
一方で、事務職からITエンジニアに転職し年収400万円になったASD当事者は、障害年金2級→支給停止となったケースも報告されています。収入だけでなく、仕事内容や就労形態、通勤・勤務時間など総合的な判断が行われるためです。
まとめ:転職での収入増は慎重な計画と情報収集がカギ
ASD当事者が障害年金を受けながら年収を上げることは可能ですが、年収が一定水準を超えると支給停止のリスクが出てきます。重要なのは「どんな仕事を」「どんな働き方で」しているかという点です。転職や免許取得を通じたキャリアアップは前向きな選択ですが、制度的なリスクも正しく理解した上で準備を進めましょう。
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