日本には、障害を持つ方の生活を支えるための様々な制度がありますが、すべての人がそれらを利用しているわけではありません。中には、自立を志し、障害年金や自立支援医療制度などの公的支援を受けずに、日々の生活費や医療費、各種税金を支払って暮らしている方もいます。この記事では、そうした選択の背景や考え方、そして福祉制度の本来の意義について考察していきます。
■ 障害年金や自立支援制度とは何か?
障害年金は、一定の障害状態にある人が受け取ることができる公的年金です。国民年金や厚生年金に加入していた期間に障害が発生した場合、その等級に応じた金額が支給されます。
自立支援医療制度は、精神通院や障害者医療などにかかる自己負担額を軽減する制度です。たとえば、精神疾患による通院費が原則1割負担になるなど、経済的な支援が受けられます。
■ あえて制度を使わずに暮らすという選択
障害等級2級であれば、本来であれば年金や福祉制度を活用する選択肢もありますが、あえて利用しない方もいます。その理由は、「自分の力で暮らしたい」「制度に頼りたくない」という強い自立心に基づくものだったり、制度利用への心理的な抵抗感が背景にある場合もあります。
「自分の力で生きている実感を大切にしたい」と考えることは、尊重すべき一つの価値観です。しかしその一方で、制度を利用することが「甘え」や「怠け」と誤解されがちなのは、日本社会の福祉への偏見の現れかもしれません。
■ 制度を利用しないことは“恵まれている”のか?
障害があっても働いて税金を納めているということは、確かに社会的には高く評価されるべきことです。しかし、それをもって「恵まれている」と言えるかどうかは、一概には言えません。
たとえば、体調が悪化しても受診を控えざるを得なかったり、将来の経済的不安を抱えながら暮らしているとすれば、それは決して「恵まれている」とは言い難い状況です。制度を使う・使わないにかかわらず、その人の背景や努力を社会が正しく理解することが重要です。
■ 福祉制度は「困っているときに支え合う仕組み」
福祉制度は「使うべきときに使えるように備えておくもの」です。現在制度を使わずに生活できていても、将来的に体調や経済状況が悪化する可能性もあります。
そうしたとき、制度にアクセスすることは「甘え」ではなく、社会全体で備えてきた支え合いの一環です。制度を利用することは、自己責任を放棄することではなく、「自分らしい生活を維持するための戦略」として捉えることもできます。
■ 制度の柔軟な活用が選択肢を広げる
制度を一切使わずに生活できるのは、一定の条件が整っているからこそ可能なケースもあります。ですが、体調の変化や仕事環境の変化に備えて、制度について正しく理解しておくことはとても大切です。
一度申請しても途中で辞退することもでき、制度利用は「一生決定」ではありません。「いざというときの選択肢を持っておく」ことが、自立的な暮らしを支えるカギになるでしょう。
■ まとめ:自立と制度活用は対立せず、共存できる
・制度を使わずに生きる選択も尊重されるべき
・障害年金や自立支援制度は“甘え”ではなく生活の支え
・今は使わなくても将来の選択肢として備えておくことが重要
・自立と福祉制度の利用は両立可能であり、相互に補完し合う関係
「使わない」という選択も、「使う」という選択も、どちらも正解です。大切なのは、どちらか一方を否定するのではなく、自分自身の人生と向き合いながら最適な判断をしていくことではないでしょうか。
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