年金だけでは生活が厳しいと感じる高齢者世帯は少なくありません。特に都市部で賃貸住宅に暮らしている場合、家賃支出が家計に重くのしかかります。本記事では、70代のご夫婦が資産3,000万円を持ちながら月8万円の家賃を貯金から取り崩す生活を送るケースをもとに、老後資金の持続可能性や将来の不安にどう備えるべきかを詳しく解説します。
年金だけでは足りない?多くの高齢者が貯金を取り崩して生活
日本の高齢者の多くが、年金だけでの生活に不安を感じており、実際に貯金の取り崩しによって生活を維持しています。総務省の家計調査によれば、二人以上の高齢者世帯の平均消費支出は月約25万円。一方、公的年金の平均受給額は月20万円弱にとどまり、毎月数万円の赤字を補うために、貯蓄の取り崩しが前提の家計が多いのが現実です。
そのため、資産3,000万円という水準は決して少なくなく、計画的に取り崩すことで20年程度の老後に耐える可能性もあります。
家賃8万円のインパクトと老後の持ち家の有無
月8万円の家賃を支払う場合、年間で96万円の出費となり、20年間続けると家賃だけで1,920万円となります。持ち家がない高齢者にとって、家賃は最大の固定支出であり、貯金を圧迫する要因です。
このため、貯蓄3,000万円のうち大半を家賃に使うことになり、将来の介護や医療費、老人ホーム入居費用などへの備えが手薄になる可能性も考えられます。
老人ホーム入居を想定した場合の必要資金
介護付き有料老人ホームへの入居費用は、入居一時金が数百万円〜数千万円、月額費用が15万円〜30万円程度が一般的です。公的施設(特別養護老人ホーム)では費用が抑えられるものの、入居待ちが長期化するケースもあります。
もし夫婦で同時に介護が必要になった場合を想定すると、今のペースでの貯金取り崩しでは将来的に不足するリスクも否めません。
長生きリスクと平均寿命から見た資金寿命
日本人の平均寿命は女性が87歳、男性が81歳前後。70代前半からの老後期間は20年以上に及ぶ可能性があり、資産3,000万円を年100万円ずつ使えば30年持つ計算になりますが、医療費やインフレ、介護費用の増加を考慮する必要があります。
そのため、「長生きしないから大丈夫」という楽観視ではなく、「長生きしたときにも困らない」備えが重要になります。
安心のためにできる具体的な対策
- ライフプランシミュレーションを活用し、今後の支出・収入バランスを可視化する
- 早めに老人ホームや介護施設の費用・場所をリサーチし、必要資金を把握しておく
- 予期せぬ医療・介護費に備えて、予備費用(生活費1〜2年分)を別管理する
また、信頼できるファイナンシャルプランナーに相談して、資産の運用や適切な取り崩しペースを検討するのも一つの方法です。
まとめ:3000万円の貯金と家賃負担は慎重なバランスを
資産3,000万円を持ちつつ、家賃8万円を貯金から捻出している70代夫婦の家計は、一見すると十分に見えるものの、長期的な視点で見るとややリスクを含む運用です。将来的な介護や医療費、入居施設費を考慮して、今の支出ペースが適切かどうか見直すことは大切です。
安心して老後を過ごすためには、「今大丈夫か」よりも「10年後、20年後も安心か」に目を向けた家計設計が求められます。
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