交通事故によって仕事を休まざるを得なくなった場合、「休業損害」と「傷病手当金」のどちらを利用すべきか悩む方は多いでしょう。特に健康保険の窓口で「示談後でないと傷病手当金は申請できない」と言われた場合、どこまでが保険会社の負担で、どこからが自分の健康保険か、混乱してしまいます。本記事では、交通事故後の傷病手当金の申請条件とその注意点について詳しく解説します。
傷病手当金と交通事故の関係とは?
傷病手当金とは、病気やケガで働けなくなった際に、健康保険から支給される生活保障の制度です。会社員や公務員で、健康保険(協会けんぽや組合健保)に加入している人が対象です。
しかし、交通事故によるケガが原因の場合、まずは加害者(相手方)の自賠責保険や任意保険からの補償が優先されます。そのため、健康保険側では「損害賠償請求権があるかぎり支給しない」とされ、原則として示談成立後でないと傷病手当金は受け取れないのです。
いつから申請可能?申請時期の判断ポイント
申請可能なタイミングは、主に以下のようなケースです。
- 加害者側との示談が成立し、今後の損害賠償請求権を放棄した後
- 保険会社が「これ以上支払いしない(治療費打ち切り)」と明確に通知してきた場合
- 過失割合により自分が一部負担する損害があり、その部分に対して補償を求める場合
今回のケースでは、保険会社が「4月末で治療費を打ち切る」としており、実質的に5月以降は健康保険を使用している状態のため、3月・4月分の傷病手当金の申請は可能になる余地があります。ただし、その前に協会けんぽに「示談交渉が打ち切られた」証明や加害者保険会社の「今後は支払いしない」旨の書面を提出する必要があります。
傷病手当金と休業損害の違いを理解しよう
休業損害:加害者側保険から支払われる。事故による収入減を補償。
傷病手当金:健康保険から支給される。業務外の病気やケガによる収入減を補償。
両方を同時に受け取ることはできず、同一期間について二重取りは禁止されています。そのため、保険会社から3月・4月分の休業損害が支払われた場合、その期間の傷病手当金は申請できません。
一方、休業損害が支払われなかった期間に限っては、傷病手当金を申請できる可能性が高いです。
示談を急ぐべきか?その判断基準
「示談を急げば傷病手当金がもらえる」と考える方もいますが、必ずしもそうとは限りません。以下の点を考慮しましょう。
- 相手方保険会社が妥当な金額を提示しているか
- 後遺障害認定が必要な状態ではないか
- 将来的な治療費や通院の必要性があるか
示談成立後に新たな治療が必要となっても、相手方に請求できなくなることがあります。そのため、後遺障害診断書の取得や整形外科のセカンドオピニオンを経てから示談を判断することをおすすめします。
協会けんぽへの申請の流れと必要書類
協会けんぽで傷病手当金を申請する際には以下の書類が必要です。
- 傷病手当金支給申請書(本人・事業主・医師が記入)
- 事故証明や交通事故証明書
- 保険会社の支払い終了通知または示談書
- 場合によっては誓約書(損害賠償請求を行わない旨)
不明点がある場合は、協会けんぽ公式サイトやお近くの支部に直接確認するのが確実です。
まとめ:交通事故と傷病手当金は制度上の壁があるが、申請は可能
交通事故によるケガが原因の場合、原則として示談前は傷病手当金の申請ができません。ただし、相手保険会社が治療費支払いを打ち切った場合や、休業損害が支払われなかった月に限っては、傷病手当金の支給対象となることがあります。
示談を急ぐ前に、事故の損害範囲と補償内容を整理し、損をしない判断を心がけましょう。必要であれば弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談することも有効です。
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