2023年からの制度変更により、学生のアルバイト収入に対する年間所得制限が123万円に緩和されました。これにより、より多くの学生が自由に働ける環境が整いつつあります。しかし、「親の扶養内で働く」ことには今なお重要な制限が存在します。特に見落とされがちな「社会保険の扶養」の条件に関して、詳しく解説します。
年間103万円・130万円の壁だけではない「扶養」の仕組み
扶養には大きく分けて2種類あります。一つは「税制上の扶養」、もう一つは「社会保険上の扶養」です。税制上の扶養は年間所得103万円を超えると扶養控除の対象から外れます。一方、社会保険の扶養は被扶養者の年収が130万円以上(60歳未満かつ障害者でない場合)になると外れ、健康保険料を自分で支払う必要が出てきます。
学生であっても、社会保険上の扶養判定では「3ヶ月以上連続して月88,000円以上の収入があると外れる可能性がある」というルールがあります。
「3ヶ月88,000円超え」の仕組みと注意点
社会保険の扶養判定は「将来的な年間収入が130万円を超えると見込まれるかどうか」で判断されます。この見込みの判断基準として「月額108,333円(130万円÷12ヶ月)」を超えるかどうか、そして3ヶ月以上連続して月88,000円を超えるかどうかが見られます。
例えば、4月・5月・6月と3ヶ月連続でアルバイト収入が90,000円を超えると、たとえ年間収入が130万円未満であっても「今後も高収入が続く見込みがある」と判断され、親の社会保険の扶養から外れる可能性が高くなります。
123万円の壁は「税制」の話。社会保険とは別です
よく誤解されるのが、「123万円まで稼いでいい」と聞いたので問題ないと思っていた、というケースです。2023年からの制度改正で、学生の所得控除の上限が引き上げられ、給与所得控除などを合わせて123万円まで非課税扱いになるケースが出てきました。
ただし、これはあくまで「税制上の扶養」の話です。社会保険の扶養条件は依然として「年収130万円未満かつ3ヶ月連続88,000円超はNG」の基準が使われています。
実例:親の扶養を外れてしまった大学生のケース
ある21歳大学4年生のAさんは、夏休みに集中してアルバイトを入れ、6月~8月の3ヶ月間、毎月約95,000円稼ぎました。年間収入は110万円程度でしたが、アルバイト先が社会保険の加入対象でなかったため、本人は社会保険に加入していない状態でした。
その後、親の勤務先から「扶養条件から外れた」と通知され、本人名義で国民健康保険に加入することになり、約2万円/月の保険料負担が発生。予定外の出費に困ってしまったとのことでした。
どうすれば社会保険の扶養から外れずに済むのか
- 月88,000円以下に収入を抑える月を意図的に作る
- 稼ぎたい時期があるなら、連続ではなく間隔を空ける
- シフトを「3ヶ月連続」で高めに入れないようにする
- 親の勤務先の社会保険担当者に事前相談する
これらの対策を意識することで、親の扶養内で安心してアルバイトを続けることができます。
まとめ:制度の違いを正しく理解しよう
「123万円まで稼いでも大丈夫」と言われるようになりましたが、これは税金の話。社会保険は別の基準で判断されます。特に、3ヶ月連続で88,000円以上稼ぐと、親の社会保険扶養から外れる可能性が高くなります。
学生のうちから制度を理解して計画的にアルバイトすることが、将来的な負担回避にもつながります。疑問がある場合は、大学のキャリアセンターやアルバイト先、保険担当部署などに相談してみましょう。
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