障害のある家族がA型事業所で働き始めると、健康保険や年金、扶養の扱いに関してさまざまな疑問が生じることがあります。特に、会社から新たな健康保険証が送られてきた場合、扶養のままで良いのか、それとも社会保険に加入した方がよいのか悩む親御さんも多いはずです。本記事では、障害のあるお子さんが働き始めたときの扶養と社会保険のポイントについて詳しく解説します。
「扶養」とは何を意味するのかを整理しよう
「扶養」とは、主に健康保険上と税法上の2つの観点があります。
- 健康保険上の扶養:保険料を支払わずに親の被扶養者として保険に加入できる制度
- 税法上の扶養:一定の条件を満たすことで、所得税や住民税の控除が受けられる制度
被保険者証を発行していることが「扶養」と直結するわけではなく、社会保険に加入すれば健康保険上の扶養からは外れることになります。
A型事業所に就職すると社会保険の加入が義務に
原則として、週の労働時間が20時間以上かつ月収が8.8万円(年収約106万円)以上の場合、A型事業所でも社会保険の加入対象となります。ただし、規模の小さい事業所では適用除外のケースもあります。
仮に月収が9万円程度であれば、事業所側が社会保険を適用してくるのは十分にあり得ます。この時点で、本人名義の保険証が発行されることになります。
社会保険に加入したら親の扶養から外れるのが原則
本人が社会保険に加入した場合、親の健康保険上の扶養からは自動的に外れることになります。このため、以前の保険証は返却し、新たな本人名義のものを使う必要があります。
ただし、税法上の扶養にはまだ入れる可能性があります。年収が103万円以下であれば、配偶者控除や扶養控除の対象にできるため、親の所得税・住民税の負担軽減につながります。
社会保険をかけるメリットとデメリット
本人が社会保険に加入すると、以下のようなメリットがあります。
- 将来の年金額が増える:国民年金だけでなく厚生年金に加入することになるため
- 傷病手当金の対象になる:病気やケガで働けなくなった場合に収入補償がある
- 健康保険が手厚い:出産手当金や高額療養費制度なども利用できる
一方でデメリットとしては、給与から保険料が差し引かれる点があげられます。これにより手取りがやや少なくなるため、生活への影響が出る可能性も。
扶養内に収める調整をする意味とは?
事業所が「扶養のままにできるよう調整します」と提案する背景には、本人が保険料を払うことで手取りが減ることへの配慮があります。たとえば月収が9万円あっても、残業を減らすなどして8.8万円未満に抑えれば、社会保険の加入を回避できることがあります。
ただし、社会保険の方が将来的に有利になるケースもあり、単に保険料の有無だけで判断せず、年金機構や協会けんぽの窓口に確認するのが安心です。
まとめ:社会保険加入と扶養の考え方を分けて判断を
本人が社会保険に加入すれば健康保険上の扶養からは外れますが、年収が103万円以下であれば税法上の扶養は継続可能です。短期的には手取りが減るかもしれませんが、社会保険には年金の充実や手厚い保障などのメリットもあります。将来的な安心を優先するか、当面の収入重視で扶養を維持するか、ご家族の状況に合わせて判断するのが良いでしょう。
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