アメリカの年金を日本で受給する前に知っておきたいこと｜手続き・税金・減額リスクまで徹底解説

海外で働いた経験がある方にとって、アメリカの年金（Social Security）を日本で受け取れるかどうか、そしてどのような影響があるかは重要な関心事です。特に、日本の年金との関係や、申請方法によって税務や支給額に違いが出るのかなど、複雑な点も多いため、正しい知識が必要です。

アメリカの年金を日本で受け取ることは可能か

アメリカの年金制度は、米国内に限らず、外国に居住している受給資格者にも支給が可能です。日本はアメリカとの間で社会保障協定を結んでいるため、通算制度を利用して日米両国での年金加入期間を合算し、年金受給資格を得ることができます。

たとえば、アメリカで15年働いていた場合、その期間は日本の年金加入期間と通算して扱われるため、受給資格（通常は10年以上の加入）が満たされやすくなります。

アメリカの年金は、日本年金機構を通じて申請することも可能ですが、直接アメリカのSocial Security Administration（SSA）に申請する方法もあります。

日本年金機構経由で申請すると、日本側での事務処理が介在するため手続きが煩雑になったり、時間がかかることがありますが、言語的・制度的なサポートが受けやすいというメリットもあります。直接SSAに申請する場合、オンラインでの申請が可能で、比較的スムーズなケースもあります。

アメリカの年金の「フルリタイアメント年齢」は生年によって異なりますが、1959年生まれ以降の方は原則67歳です。それより早い62歳からの早期受給も可能ですが、受給額は最大30％程度減額されます。

また、62歳～フルリタイア年齢までの間に年収が一定額（2025年時点で約22,320ドル）を超えると、超過分に対して50％が減額される「収入テスト（Earnings Test）」が適用されます。これにより、働きながら年金を受け取ると減額される可能性があるため注意が必要です。

基本的にアメリカと日本の年金は別制度なので、原則はそれぞれ独立して受給できます。ただし、生活保護や特定の福祉給付を受けている場合には、年金額によって減額される可能性があります。

また、「通算制度」は受給資格を得るためのものであり、金額自体は別々に計算されます。つまり、日本の年金3万円にアメリカの800ドル（約12万円相当）が上乗せされるという形が原則です。

日本でアメリカの年金を受給する場合、その年金は日本の「雑所得」に該当し、確定申告が必要になるケースがあります。ただし、日米租税条約により二重課税は防がれるため、アメリカ側で源泉徴収されている場合、日本での税額調整が可能です。

申告が必要になるかどうかは、他の所得との合計額や、控除内容にもよるため、税理士または税務署に相談することが安心です。

「日本の年金機構を通すとアメリカの年金が減る」という話はよく耳にしますが、これは実際には手続きの違いや確定申告の義務などが混同されている場合が多いです。日本を通しても、基本的にアメリカの年金額そのものが変動することはありません。ただし、税務処理や控除の有無などが影響する場合はあります。

アメリカの年金を日本で受け取るには、手続き方法、受給開始年齢、税務処理など、複数の要素が絡んできます。申請は直接か日本年金機構経由かを比較検討し、減額リスクや課税対象になるかを確認することが大切です。

不明点があれば、年金事務所やアメリカ大使館、または信頼できる税理士へ相談し、正確な情報に基づいて最適な選択をしましょう。