FIRE(Financial Independence, Retire Early)という概念が注目を集める中、「子どもがいるとFIREは難しいのでは?」と不安に思う方も少なくありません。確かに教育費は数百万円から数千万円に上る可能性があり、一般的なFIRE戦略では見落とされがちなポイントです。しかし、正しい設計と準備をすれば、子育て世帯でも十分にFIREを目指すことが可能です。本記事では、子育てとFIREを両立させるための現実的な考え方と具体的なアプローチを解説します。
FIREの基本「生活費の25倍ルール」の限界とは
FIREを実現するための基準として知られるのが「年間支出の25倍の資産を築く」という4%ルールです。これは年間支出400万円の家庭なら1億円の資産が必要という計算です。
しかしこのルールは主に「夫婦または単身で、教育費のかからない前提」で設計されており、子育て世帯のように将来的な支出が不確定かつ大きいケースには必ずしも適していません。
教育費は別建てで資産計画に組み込もう
文部科学省の調査によると、子ども1人あたりの教育費(幼稚園〜大学までの学費+塾代など)は公立で約1,000万円、私立では2,000万円以上とも言われています。
この金額は、4%ルールに含めるとFIRE資産を大幅に引き上げてしまいます。そのため、教育費は生活費とは切り離し、「別枠の目的資金」として準備するのが現実的です。学資保険、ジュニアNISA、教育費専用の投資信託などを活用し、独立した運用計画を立てましょう。
FIRE後も働く前提の「サイドFIRE」戦略
子育て中にFIREを実現したい場合、「完全リタイア」ではなく「サイドFIRE(セミリタイア)」という形を取るのが現実的です。これは生活費の一部を資産収入で賄い、残りは副業やパートタイムで補うスタイルです。
例えば生活費が年間500万円、資産収入で300万円まかなえるなら、残りの200万円だけ働いて得れば良いという形です。この柔軟性が、FIREを子育て世帯にも身近なものにしてくれます。
実例:子ども2人・教育費1,800万円を想定したFIREプラン
仮に教育費を1人900万円、2人で1,800万円と想定し、生活費が年間400万円の場合、以下のような資金計画が考えられます。
- 生活費FIRE資産:400万円 × 25 = 1億円
- 教育費積立資産:1,800万円(10〜15年で積み立て)
- 合計:1億1,800万円以上
これに加え、予備費や住宅購入費、老後資金も加味すればさらに積み上がりますが、教育費を「目的別資産」として計画すれば、FIRE戦略は明確になります。
FIRE後のリスク管理も忘れずに
子どもがいる家庭でFIREを目指すには、資産の取り崩しリスクやインフレ、病気・事故などの不測の事態への備えも必要です。生活防衛資金として現金を2〜3年分確保しておく、掛け捨ての医療保険・収入保障保険に加入するなど、リスクマネジメントを徹底しましょう。
また、投資配分も株式100%よりは債券や現金比率を高めにすることで、暴落時のダメージを抑えることができます。
まとめ:子育て中のFIREは「計画力」で実現可能
「子どもがいるからFIREは無理」と考えるのは早計です。むしろ、教育費を含めた将来の支出を明確に見積もり、それを生活費とは別に管理することで、現実的で持続可能なFIREを設計することができます。
完全リタイアにこだわらず、サイドFIREや段階的リタイアなどの柔軟な選択肢を取り入れつつ、自分の家庭に合ったペースで資産形成を進めていきましょう。
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