日本における家計の圧迫感が増しているとの声が多く聞かれる昨今、実際に国民の大多数が「限界」に近づいているのかを考察することは極めて重要です。ここでは、統計データや経済指標をもとに、日本人の生活がどのような状況にあるのかを冷静に分析していきます。
実質賃金が上がらない日本の30年
1990年代初頭のバブル崩壊以降、日本の平均所得はほぼ横ばいで推移しています。OECD諸国の中でも実質賃金の伸びが最も低い部類にある日本では、「頑張っても豊かにならない」状況が続いています。
たとえば厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、名目賃金はわずかに上昇していますが、物価の上昇を加味した実質賃金はむしろ減少傾向にあり、生活のゆとりは感じにくくなっています。
急上昇する物価と家計負担
2022年から続く円安やエネルギー価格の高騰は、食料品・光熱費・ガソリン代などの生活必需品に大きな影響を与えました。たとえばガソリンは一時180円/Lを超え、電気料金も前年比で30%以上値上がりした地域も存在します。
さらに円の実質実効為替レートは1990年代と比較して約半分になっており、輸入品の値段上昇が家計を直撃しています。
国民負担率62%の衝撃
「国民負担率62%」とは、税金・社会保険料などの負担が国民所得に対して占める割合を示します。これは国民が政府に納める負担が可処分所得を圧迫していることを意味します。
社会保障費の増加、高齢化に伴う年金負担などがその要因であり、将来への不安が消費マインドを冷やす悪循環が生じているとも言えるでしょう。
「限界」かどうかを見極める指標
経済的困窮の度合いを示す指標として、相対的貧困率(可処分所得が中央値の半分以下の人の割合)が注目されます。日本の相対的貧困率は約15%と、OECD平均を上回っています。
また「生活が苦しい」と感じている世帯は総務省調査で6割を超え、「ギリギリの生活」と表現されるのも理解できる状況です。
一方で見逃せないポジティブな側面
すべてが絶望的かというと、必ずしもそうではありません。企業の内部留保が過去最高を更新しているように、一部の層では資産形成が進んでおり、株式や不動産を通じた資産運用が活発化しています。
また、NISAやiDeCoなど、個人が資産を育てる制度も整備されてきており、行動次第で生活の質を改善する可能性もあります。
まとめ:確かに苦しいが、打つ手もある
日本の多くの家庭が経済的な限界に近づいているという指摘は、データに裏打ちされた現実である面も否定できません。しかし、同時に制度や情報を活用すれば、生活を守り、改善する余地はあります。
一人ひとりが現状を正しく認識し、制度や知識を活用することが、厳しい時代を乗り越えるカギとなります。現状を憂うだけでなく、できるアクションを一歩踏み出していきましょう。
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