退職後の生活設計では、「年金を早めに受け取りたい」「失業保険を受け取りながら年金ももらえるのか」といった疑問が多く寄せられます。特に60代前半は、失業手当と老齢年金のタイミングが重なる時期であり、制度の理解が重要です。本記事では、年金と失業保険の併給について、実務的な観点から解説します。
年金と失業保険の基本的な違い
まず押さえておきたいのは、年金は「老後の生活保障」、失業保険は「再就職支援」の性質を持つ給付ということです。年金は申請すれば自動的に支給されるのに対し、失業保険は就労の意思と能力を持ちつつ「失業状態」であることが支給要件になります。
つまり、失業保険をもらっている期間中に「年金の受給」を開始する場合、就労の意思が疑われると判断される可能性があり、慎重な取り扱いが必要です。
62歳で老齢年金と失業保険の同時受給は可能?
62歳で受給できる年金は主に「特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)」です。この部分については、原則として失業手当(基本手当)との同時受給はできません。
失業保険受給期間中に老齢厚生年金を受け取る場合は、基本手当が支給停止になるか、または老齢厚生年金の支給が一部停止になる調整がされます。
具体的には、ハローワークが失業の実態を確認したうえで、調整の有無を判断します。
調整の対象となる年金と対象外の年金
以下は、失業保険と併給調整がある代表的な年金です。
- 老齢厚生年金(特別支給の報酬比例部分):支給停止の対象
- 老齢基礎年金(65歳から支給):調整の対象外
- 遺族年金や障害年金:原則として併給可能
つまり、65歳未満で特別支給の年金を受ける場合は、必ずハローワークに「年金を受給する旨」を届け出て、調整の確認を受ける必要があります。
実例:62歳で退職、失業給付を受けながら年金受給を開始
例えば、62歳で退職し、翌月から失業給付を受けつつ、同時に老齢厚生年金(特別支給)を請求した場合、ハローワークでは次のような対応になります。
【対応】:失業給付が優先され、年金の支給が停止されるか、逆に年金が優先されて基本手当が停止される。
本人の状況や意思(就職活動の有無など)によって変わるため、ハローワークと年金事務所の双方に相談することが重要です。
失業給付を受け終わってから年金請求する選択肢も
失業手当の受給期間は通常90〜150日程度(年齢や退職理由により異なる)です。この期間中に年金の請求を控え、失業給付終了後にあらためて年金を請求することで、調整なしで両方を満額で受け取ることができます。
年金の受給は最大5年間まで遡って請求できるため、失業保険が終了してから申請する方法も十分に合理的です。
まとめ:ハローワークと年金事務所に早めの相談を
62歳時点で失業保険を受けている方が年金を受給する場合、併給は原則不可または調整が必要になります。年金受給を始めることで、失業保険が停止または減額されることもあるため、事前に制度の仕組みを理解しておくことが重要です。
実際に年金を受けるかどうかの判断は、ハローワーク・年金事務所の双方に相談しながら決めましょう。「どちらを先に受けるか」「どの時点で年金を請求するか」が老後資金の計画に大きく影響するため、慎重な選択が求められます。
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