物価上昇や少子高齢化が進む現代日本では、「年金は本当に得なのか?」「将来に備えるより今を豊かに生きたい」といった声が増えています。年金制度に不信感を持つのも無理はありませんが、その仕組みや意義を正しく理解することで、将来の不安を軽減する手がかりにもなります。
年金制度は“投資”ではなく“保険”という視点を持つ
年金は単なる積立型の投資ではなく、万一の時のリスクに備える保険制度です。老後の生活費としての老齢年金だけでなく、病気や事故による障害が残った際の障害年金、家族が亡くなったときの遺族年金も含まれます。
例えば、自営業のAさんが35歳で脳梗塞になり働けなくなった場合、年金を払っていれば障害年金を受給し、生活の基盤を確保することができます。
円の価値と将来の不確実性:現金よりも“生活の保障”が重視される時代
「円の価値が下がるから今のうちに使った方が得」という考えは一理あります。しかし、インフレが進んだとしても年金額には物価スライド制があり、ある程度の対応が図られています。
また、長生きリスク(いわゆる“老後資金が尽きる”リスク)に備える手段として年金以上に効率的な制度は、現時点では存在しません。
年金を払わないデメリットと将来的なリスク
年金保険料の未納を続けると、将来の受給資格を失うだけでなく、前述の障害年金・遺族年金などの保障も受けられなくなります。さらに、将来的に生活保護が必要になったとしても、年金加入履歴があるかどうかが判断材料となるケースもあります。
また、過去に年金未納だったBさんが50代で慌てて追納したものの、受給資格を満たせずに後悔したというケースもあります。
今の生活と将来を両立させる選択肢もある
確かに、すべての資産を将来に備えるのではなく、「今を楽しむ」という価値観も重要です。ただし、年金を軽視してすべてを投資や消費に回すのではなく、国民年金の免除制度や、iDeCo・NISAなどの併用で“今と将来の両立”が現実的な選択となります。
特に20代・30代の方には、全額免除や一部免除の制度を活用することで、年金記録を維持しながら負担を軽減することが可能です。
“社会の決まり”としての年金:それでも払う意味はある
年金は強制加入であり、法的な義務として位置付けられていますが、それだけでなく“連帯保障”という社会的な仕組みを支える役割も担っています。
払わないという選択をすることで短期的には自由を得られるかもしれませんが、制度から外れることで得られない保障や、将来の不安定な生活につながる可能性もあるのです。
まとめ:年金は「損得」ではなく「安心」への投資
年金を払うか否かの判断は一人ひとりの価値観や生活状況により異なりますが、長期的に見れば年金制度は単なる貯金や投資とは異なる「社会保障の柱」です。
今の生活を充実させながら、年金という保険制度を上手に活用して将来への安心を得ることが、もっとも賢い選択肢と言えるのではないでしょうか。
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