病気やけがで働けない期間に経済的支援となる「傷病手当金」。その受給には「労務不能かつ賃金未受給であること」が原則となっていますが、「給与の支払いがあった=受給できない」とは限りません。この記事では、実際の入院や療養時に給料が支払われた場合の扱いや、審査に影響するポイントを解説します。
傷病手当金の基本要件をおさらい
健康保険から支給される傷病手当金の受給には、次のような要件が必要です。
- 業務外の病気やケガによる療養であること
- 労務不能であること(医師の証明が必要)
- 連続する3日間の待機期間後も労務不能が継続
- 給与などの支払いがないこと
特に最後の「給与の支払いがないこと」が誤解されやすい部分です。実際には、給与が支払われていても全額でない場合や、支払日と実労働日数が異なるケースでは、傷病手当金が支給される可能性があります。
支給日と労務提供の関係がカギ
たとえば3月末から入院し、4月中も療養している場合、4月10日に振り込まれた給与は、あくまで3月分の労働に対する支払いであると考えられます。
この場合、3月の末日までに出勤していた実績があれば、その分の賃金が支払われるのは当然であり、4月の労務提供がゼロであれば、その期間については傷病手当金の対象になる可能性があります。
給与の支払いと手当金の併給調整
健康保険では、同一期間に給与と傷病手当金が重複する場合は「調整」され、給与の額が傷病手当金より少なければ差額分だけが支給される制度があります。
したがって、月途中から休職した場合や、一部の手当(例えば通勤手当など)が支払われたとしても、それが実労働に対する対価でなければ、手当金支給の妨げにはならない可能性があります。
実例でみる:療養期間と給付の判断
例えば以下のようなケースを見てみましょう。
月 | 出勤状況 | 給与支払日 | 支払内容 | 傷病手当金の扱い |
---|---|---|---|---|
3月 | ~30日まで勤務 | 4月10日 | 3月分給与 | 支給対象外 |
4月 | 終日休職 | 5月10日 | 支給なし | 支給対象 |
このように、支払日ではなく、実際の労務提供日と対象月が重視されます。
申請時の注意点と審査のポイント
申請時には、会社側で「報酬支払の有無」や「支払額」を記入する欄があり、それを元に保険者(協会けんぽや健康保険組合)が審査を行います。
報酬が支払われた場合でも、労務提供がなかった期間については証明を添付することで、審査で不支給と判断されることを避けられる可能性があります。
まとめ:労務提供と給与の性質がポイント
傷病手当金の支給は「働けなかったこと」と「報酬の未受給」が条件ですが、給与の支払日が療養期間中にあっても、その給与が実際に働いた分の対価であれば問題ないとされます。
重要なのは、「働いていない日」と「賃金の対象期間」が一致しているかどうかです。もし不明点がある場合は、会社の人事部や健康保険組合に確認をとり、適切な証明書類を添えて手続きを行うことが安心への第一歩です。
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