職場でのケガや病気に直面したとき、「労災」と「健康保険(社会保険)」のどちらを使うべきか迷う方は少なくありません。特に、もともとの持病がある場合や、会社側から社会保険で処理を勧められるようなケースでは、混乱するのも無理はありません。この記事では、労働災害時の正しい補償の仕組みや手続きの違いについてわかりやすく解説します。
労災と健康保険の違いとは?
労災保険は、業務中や通勤中の事故や病気に対して支払われる公的保険で、使用者(会社)が全額負担します。健康保険(社会保険)は、一般的な病気やケガに使われる制度で、労働災害には原則適用されません。
つまり、仕事中の転倒で症状が悪化した場合、それが持病の再発であっても、原因が業務であれば労災が適用されるべきです。これを医学的に判断するのが医師であり、法的に判断するのは労働基準監督署です。
労災にすると受けられる補償
労災認定されると、治療費は全額労災から支払われ、本人負担はゼロです。また、仕事を休まなければならない場合は、休業補償給付と呼ばれる補償が支給されます。
- 休業補償給付:休業4日目から給付基礎日額の60%
- 特別支給金:上記とは別に20%加算
つまり、労災による休業補償は実質80%相当になります。これは健康保険の傷病手当金(給与の約67%)よりも高い水準です。
労災と社会保険の「併用」に注意
労災が適用される場面で、健康保険を使用すると「併用」のような形になり、本来の労災補償を受けられなくなるリスクがあります。これは、会社が間違って社会保険で処理することで、結果的に労働者の不利益になる可能性があるということです。
労災は国が管理しているため、会社側の理解不足によって選択を誤ると、後々補償が受けられない・戻らないという問題が起こります。
会社が「社会保険の方が得」という主張は正しい?
一部の企業では「社会保険の傷病手当の方が金額が多い」と説明されることもありますが、それは誤りです。傷病手当金は給与の約2/3で、労災休業補償給付の方が原則的に高額(80%相当)です。
また、社会保険では治療費の3割自己負担が必要なのに対して、労災では全額支給されます。つまり、労災の方がトータルで有利です。
実例:労災を選んだことで得をしたケース
40代男性Aさんは、持病の腰痛を抱えていたが、勤務中に転倒して悪化し、椎間板ヘルニアと診断されました。会社からは社会保険で処理するよう勧められたが、ハローワークと労働基準監督署に相談し、労災申請を選択。結果、治療費は全額カバーされ、休業補償も実質80%を受給。
さらに、通院交通費やリハビリ費用も労災で支払われ、家計への負担は最小限に抑えられました。
困ったときは「労働基準監督署」へ相談を
労災かどうかの判断は、会社ではなく、労働基準監督署が行います。労災申請書類は本人でも提出可能で、会社の協力が得られない場合でも受付されます。
また、近年では厚生労働省が開設している労働条件相談ほっとラインなども活用できます。第三者の専門家の意見を聞くことで、誤った選択を避けられます。
まとめ:労災申請は正しい権利、迷わず相談を
職場でのケガや事故に起因する治療は、労災として処理するのが原則です。たとえ持病が絡んでいても、症状悪化の原因が労働災害である場合は、労災を選択するのが合理的かつ有利です。
社会保険を使うと損をする可能性もあるため、迷ったら会社ではなく専門機関に相談しましょう。正しい知識を持って、自分の権利を守ることが大切です。
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