働く時間や日数などの条件を満たしているのに、会社が厚生年金や健康保険に加入させてくれない。これは違法ではないのか?と不安に感じる方は少なくありません。本記事では、企業が社会保険加入を怠った場合の法的責任や、従業員側が取るべき対応について詳しく解説します。
厚生年金・健康保険の加入条件とは?
社会保険(厚生年金・健康保険)の加入条件は法律で定められており、以下のような要件を満たした従業員は原則として加入対象となります。
- 1週間の労働時間が20時間以上
- 月額賃金が88,000円以上
- 2ヶ月を超えて継続して雇用される見込み
- 学生ではないこと(例外あり)
- 従業員数が常時501人以上の企業、または任意適用事業所である中小企業
これらの条件を満たしているにも関わらず、社会保険への加入を会社が拒否することは法律違反にあたります。
加入拒否は健康保険法や厚生年金保険法に違反
会社が社会保険の加入手続きを故意に行わない場合、以下のような法的責任が生じます。
- 健康保険法第208条:虚偽の届け出や不正行為に対して「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」
- 厚生年金保険法第188条:加入手続き違反に対して「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」
また、社会保険料の未納や不正については、年金事務所が調査や監督を行い、悪質な場合には刑事罰の対象にもなります。
違法を見つけた場合はどこに相談すべき?
まずは会社に対して、労働条件や勤務実態を踏まえて、社会保険加入についての説明を求めましょう。それでも改善がなければ、次の公的機関に相談が可能です。
- 年金事務所:管轄の事務所へ直接相談・通報が可能
- 日本年金機構の「事業所情報登録・訂正受付窓口」:匿名での通報も可能
- 労働基準監督署:違法な労働契約や労働環境に対する相談窓口
年金事務所に通報した場合、調査や是正勧告が入り、会社には社会保険料の遡及徴収が行われることがあります。
実際に起こった対応事例
ある飲食店で、フルタイムで1年以上働いていた従業員が、社会保険未加入のまま勤務していたケースがあります。相談を受けた年金事務所が調査を行い、雇用契約書や勤怠データを確認した結果、会社に過去2年分の保険料支払いが命じられました。
さらに、企業は悪質と判断され、罰金処分を受け、労基署からも労働環境改善命令が出されました。
刑事罰が科される可能性は?
一般的に、初回の違反でいきなり「捜査」や「逮捕」に発展することは稀ですが、以下のようなケースでは刑事罰の対象になることもあります。
- 故意に虚偽の届け出を繰り返している
- 保険料の未納や滞納を長年放置している
- 従業員の指摘を無視し続けている
特に、長期的かつ組織的な違反があると判断された場合には、厚労省や日本年金機構による刑事告発がなされ、実際に書類送検された企業も存在します。
まとめ:加入拒否には毅然と対応しよう
社会保険は労働者の「権利」であり、加入条件を満たしている以上、会社には加入義務があります。万が一、会社が加入を拒む場合は、ただちに記録(雇用契約書、シフト表など)を保管し、年金事務所などに相談しましょう。
法律は労働者を守るために存在しています。泣き寝入りせず、正しい方法で是正を求めていきましょう。
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