社会保険の標準報酬月額は、健康保険や厚生年金の保険料計算、そして高額療養費制度の自己負担額区分などに直結する重要な指標です。特に中途入社の場合、「どの月の給与が標準報酬月額に影響するのか?」という点は見落とされがちですが、将来の負担額に関わるためしっかり理解しておくことが大切です。
標準報酬月額とは?仕組みを簡単に解説
標準報酬月額とは、給与(月収)を一定の幅に区切った等級で表した金額で、社会保険料や高額療養費制度の自己負担額区分の計算の基礎となります。
通常、4月・5月・6月に実際に支払われた給与の平均を基に、その年の9月から翌年8月まで適用される標準報酬月額(定時決定)が決定されます。
5月入社で6月給与支給の場合の算定対象期間
では、5月に中途入社し、6月にその会社で初めて給与が支給されたケースではどうなるのでしょうか?結論から言えば、この場合、標準報酬月額の算定に使われるのは「6月支給分のみ」となることが一般的です。
社会保険の定時決定においては、「4〜6月に在籍し、給与の支払いがある月」が対象となります。そのため、5月中に在籍していても給与支給がない場合、5月は算定対象外とされ、6月1か月分の給与をもとに標準報酬月額が決定されます。
具体例:6月に初任給25万5,000円を受け取った場合
たとえば、5月に入社し、6月に初めての給与として25万5,000円が支給されたとします。この場合、定時決定の対象月は6月のみとなり、その金額に基づいて標準報酬月額が決まります。
厚生年金保険・健康保険の標準報酬月額等級表を見ると、25万5,000円は等級「26万円」(報酬月額:25万5,000円〜27万5,000円未満)に該当します。よって、このまま急激な給与変動がなければ、標準報酬月額が「28万円」に上がることは考えにくいといえるでしょう。
標準報酬月額が高額療養費に与える影響
標準報酬月額は、高額療養費制度における自己負担限度額の区分にも影響します。たとえば、月26万円の区分では自己負担限度額が比較的抑えられますが、28万円以上の区分になると負担額が上がる可能性があります。
そのため、特に医療費がかかる可能性がある人にとっては、標準報酬月額の等級が1ランク上がるだけでも負担増になるため注意が必要です。
定時決定後の変動や変更手続きは?
一度決定された標準報酬月額は、原則として次の定時決定(翌年9月)まで変更されません。ただし、著しく報酬が変動した場合には「随時改定(いわゆる月変)」という手続きにより、途中で変更されることがあります。
ただし、月変が行われるには3ヶ月連続で一定以上の変動があることが条件であり、今回のように急な変動がない前提であれば、変更される心配は少ないでしょう。
まとめ:5月入社・6月初任給の標準報酬月額は1ヶ月分が基本
5月中途入社で6月に初めて給与が支給された場合、その6月支給分1ヶ月のみが標準報酬月額の定時決定の基準となります。したがって、6月の給与が25万5,000円であれば、等級「26万円」に該当し、仮に将来的に医療費がかかっても、その区分のままで自己負担額は比較的抑えられるでしょう。
制度を正しく理解しておくことで、不安を軽減し、計画的に備えることができます。社会保険や医療費に関わる制度は少し複雑ですが、生活に直結する重要なポイントなので、ぜひ押さえておきましょう。
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