法人を設立すると、たとえ従業員が家族だけの零細規模であっても、社会保険への加入義務が生じます。しかし現実には、多くの小規模法人が未加入のままで運営されているケースもあります。本記事では、法的義務の基本、未加入のリスク、そして実際の事例などを交えて解説します。
法人は規模に関係なく原則「強制適用事業所」
厚生年金保険法および健康保険法に基づき、法人は従業員が1人でもいれば強制適用事業所とされ、原則として社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務があります。
つまり、社長1人だけであっても、法人化した以上は社会保険に加入しなければならない、というのが法の建て付けです。
実際には未加入の零細法人も存在する理由
現場では「家族だけで経営しているから」「赤字で保険料が払えないから」といった理由で未加入の法人が少なくないのも事実です。特に以下のようなケースが典型です。
- 代表者とその配偶者のみの経営
- 役員報酬が極めて低額
- 法人化したが実態は個人事業に近い
こうした事業体では「国民健康保険+国民年金」で済ませてしまっている例もあります。
未加入のまま放置するとどうなる?リスクと罰則
法令違反状態が発覚すると、年金事務所から加入勧奨や立ち入り調査が行われる場合があります。
さらに加入義務があるのに未加入だった期間については、最大2年まで遡って保険料の支払いを命じられる可能性もあり、経営に大きな影響を与えることがあります。
悪質な場合や繰り返し指導に従わない場合には、罰金や行政指導の対象となるケースもあるため注意が必要です。
加入の判断に迷ったら?専門家の相談を
「自社は対象になるのか」「加入するとどのくらい負担が増えるのか」といった疑問がある場合は、日本年金機構や税理士、社会保険労務士などの専門家に早めに相談することが肝心です。
特に家族が役員であっても、報酬を受け取っているなら被保険者となるケースがほとんどです。グレーゾーンに見える部分も、判断基準が明確化されつつあるので油断は禁物です。
【実例】家族3人の法人が社会保険未加入で2年分請求
実際にあった事例として、父・母・息子の3人で運営していた法人が社会保険未加入だったことが発覚し、年金事務所の調査により過去2年分の保険料(約150万円)を一括請求されました。
その結果、資金繰りに行き詰まり、事業縮小を余儀なくされたケースもあります。
まとめ:零細法人でも社会保険の義務は免れない
「小さな会社だから」「家族だけの法人だから」といった理由で社会保険の義務を軽視することはできません。制度上、法人である限り社会保険の加入義務は原則として必須です。
未加入によるリスクや後からの請求を避けるためにも、現状を見直し、必要であれば早めに専門家に相談して法的に適切な状態へと整えることをおすすめします。
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