手術や入院をした際、複数の保険会社と契約していると、それぞれの保険会社に給付金の請求を行うことが可能です。その際、多くの保険会社から「他社での契約の有無」や「他社で請求予定かどうか」といった質問がなされます。本記事では、この背景と仕組み、情報の扱われ方について解説します。
なぜ他社の保険契約を知らせる必要があるのか
主な理由のひとつは「重複請求(いわゆるモラルリスク)の確認」です。給付金は契約に基づいて支払われますが、同じ内容を複数社に不正に請求する行為を防ぐため、各社が他社契約の有無を確認します。正当な複数請求であっても、内容が整合しているかの照合が求められるのです。
たとえば、同じ入院について「10日入院」と「5日入院」と矛盾する申請がなされれば、保険会社は支払いを一時保留して確認を求めます。
給付金の金額には影響するのか?
一般的に、医療保険の給付金は定額支給であり、実費精算ではありません。したがって、複数社に対して個別に正しく申請すれば、それぞれから契約に基づいた金額が支払われます。したがって、「他社にも請求している=減額」には基本的につながりません。
ただし、例外として「実費精算型保険」(例えば高額療養費補填タイプ)や、「損害保険会社が扱う医療補償」では、他社の支払分を考慮して調整されるケースがあります。
情報はどこで共有されているのか?共通データベースの実情
現時点で日本国内において、すべての保険会社が情報を共有する統一データベースは存在しません。ただし、業界団体である「生命保険協会」や「損害保険料率算出機構」などの仕組みを通じて、詐欺防止目的の情報交換が行われるケースはあります。
また、生命保険会社間では、被保険者の死亡情報などを共有する「死亡登録制度」などが運用されています。ただし、通常の医療保険請求レベルでの情報共有は限定的で、個別の確認が主流です。
告知義務や不正請求と誤解されないための注意点
保険契約では「告知義務」が発生しますが、これは主に契約時の健康状態に関する義務であり、請求時には該当しません。しかし、意図的に他社契約を隠して不整合を招くと「重大な事実の不告知」として不正と判断されるおそれがあります。
正当な給付を受けるためには、他社契約の有無を正直に申告し、同じ証明書類(診断書など)を複数社に提出することが基本的な進め方です。
実際の申請手続きの流れとポイント
通常、入院や手術を行った場合の保険申請は以下のような手順になります。
- 病院から診断書・入院証明書を入手(共通書式を使える場合が多い)
- 各保険会社の所定の請求書を記入し、証明書を添付して送付
- 他社保険の有無について申告欄がある場合は正確に記載
- 必要に応じて他社請求との整合性を問われることもある
給付の迅速化のためにも、証明書は複数枚用意しておくと便利です。
まとめ:他社契約の申告は保険の信頼性維持のため
医療保険請求時に他社の保険契約について申告する理由は、給付内容の整合性を保つためと、不正防止の観点が主です。特別なデータベースで自動共有されているわけではないものの、業界全体での連携は進みつつあります。
正しい情報を開示し、スムーズな手続きを行うことで、保険会社との信頼関係を築き、給付金も速やかに受け取ることができます。複数契約がある場合でも、臆せず正確な申請を心がけましょう。
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