老後の生活資金を考えるうえで、年金の受給額は非常に重要な要素です。特に、年収が一定の範囲にある方が長期的に厚生年金を納付した場合、どれほどの年金が受け取れるのかを把握しておくことは将来設計に直結します。この記事では、年収300万円で厚生年金を30年間納付したケースをもとに、75歳から年金を受け取る場合の金額を試算し、老後の資金計画の参考になる情報をお届けします。
厚生年金と国民年金の2階建て構造を理解する
日本の公的年金制度は、基本的に2階建て構造です。1階部分が全国民共通の「国民年金(基礎年金)」、2階部分が会社員や公務員が加入する「厚生年金保険」です。
年収300万円で厚生年金に加入していれば、基礎年金+報酬比例の厚生年金が支給されます。このため、国民年金のみの人よりも高い年金額を受け取ることが可能です。
年収300万円×30年の厚生年金納付で想定される年金額
厚生年金の報酬比例部分の支給額は、以下の式でざっくり計算されます。
厚生年金部分 ≒ 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数
例として、年収300万円を標準報酬月額25万円と仮定し、30年(=360ヶ月)加入した場合、25万円 × 5.481‰ × 360ヶ月 ≒ 約493,290円/年(=約4.1万円/月)が厚生年金部分として支給されます。
さらに国民年金部分は、満額支給(40年で約80万円/年)に対して30年分として試算すると、60万円/年(=5万円/月)前後となります。
したがって、両方を合計すると年金額は約9.1万円/月が目安です。
75歳から年金を受け取ると受給額は増える
65歳から受け取る年金を遅らせて75歳からにすると、1年あたり8.4%、10年で最大84%増額されます。これを織り込むと、月額約9.1万円×1.84=約16.7万円/月となります。
つまり、受給開始を75歳に遅らせることで、生活資金に余裕を持たせることができる可能性があります。
将来設計における注意点と現実的な備え方
注意すべき点は、年金額はあくまで概算であり、年金制度の改正や物価変動などによって変動する可能性があるということです。また、受給開始年齢を遅らせるリスクとして、長生きできない場合には年金をもらえる期間が短くなることもあります。
このため、厚生年金の上乗せとして、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAなど、自助努力による資産形成も合わせて検討しておくと安心です。
具体的なシミュレーション例
ケースA:65歳から受給開始
・月額支給額:約9.1万円
・年間支給額:約109万円
ケースB:75歳から受給開始
・月額支給額:約16.7万円(増額後)
・年間支給額:約200万円
このように、受給開始年齢の選択によって年金収入に大きな差が生まれるため、自身の健康状態や家計状況に合わせた判断が求められます。
まとめ:納付年数と受給開始年齢が将来の年金額を左右する
年収300万円で厚生年金を30年間納めた場合、65歳から受給すれば月額約9万円前後、75歳からなら最大で月額16万円以上になる可能性があります。年金制度は複雑ですが、基本的な仕組みと計算方法を理解し、自身の将来像に合った受給戦略を立てておくことが、安定した老後生活につながります。
不安な方は、日本年金機構の「ねんきんネット」で自分の年金見込額を確認してみましょう。
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