個人年金を受け取るタイミングになると、「課税されるのか」「いくらまでなら税金がかからないのか」といった不安を感じる方が多いです。特に、早期リタイア後に非課税世帯となっている方や、障害者控除などが適用される方は、所得との兼ね合いに注意が必要です。この記事では、個人年金の課税の仕組みと控除との関係を、具体例を交えてやさしく解説します。
個人年金の受取額は「雑所得」として扱われる
民間の個人年金保険から受け取る年金は、原則として「雑所得」に区分されます。これは、国民年金や厚生年金と同じ扱いではなく、保険料として支払った金額と比較してどれだけの利益(差額)があるかで課税対象額が決まります。
たとえば、毎月2万円を20年間支払い、60歳から毎月4万8千円を10年間受け取る契約だったとすると、支払総額は約480万円。受取総額は約576万円です。この差額の約96万円が利益部分として雑所得の対象になります。
雑所得の計算方法と控除との関係
雑所得の計算は以下のように行われます。
雑所得 = 総受取額 - 払込保険料相当額(必要経費)
年間で受け取る金額が576,000円(48,000円 × 12ヶ月)と仮定し、そのうちの利益部分が年あたり約96,000円(総利益96万円を10年で均等に受け取ると仮定)なら、この96,000円が雑所得です。
一方で、所得控除としては基礎控除48万円、障害者控除27万円などが適用されます。合計75万円の所得控除があるため、雑所得が年96,000円程度なら、控除内に収まり課税対象にはならない可能性が高いです。
非課税世帯と個人年金の影響
非課税世帯であっても、雑所得の額によっては住民税が課税されることがあります。ただし、合計所得金額が45万円以下(障害者等は135万円以下)であれば、住民税非課税世帯として継続されるケースがほとんどです。
今回のケースのように、他に収入がない状態で個人年金から年間96,000円程度の利益が出るだけであれば、非課税世帯が維持される可能性は十分あります。
無理に働くと課税対象になる可能性も
現在、非課税世帯として扱われていても、アルバイトなどで追加収入を得ると、雑所得と合算されて課税対象となる可能性があります。
たとえば、年間で雑所得が96,000円、給与所得が年間40万円あると、合計所得が46万6000円となり、基礎控除48万円+障害者控除27万円=75万円には収まりますが、住民税や国民健康保険料の計算に影響が出ることもあるため注意が必要です。
確定申告の必要性と注意点
雑所得が控除の範囲内であっても、自治体によっては住民税の申告が求められる場合があります。「所得ゼロ」の人も、雑所得がある年は念のため税務署や市役所に相談することをおすすめします。
また、確定申告で障害者控除を受けるには、障害者手帳のコピーや医師の診断書などの添付が必要なこともありますので、事前に確認しておくと安心です。
まとめ:個人年金の受け取りは控除を理解すれば安心
個人年金の受取額が雑所得になるという点に不安を感じる方も多いですが、実際には基礎控除や障害者控除などを適用することで課税対象にならないケースが多数あります。
受け取り前に所得控除の内容や所得見込みを確認しておけば、不要な課税を避けることができます。不安がある場合は、税務署や年金アドバイザーに相談して、正しい申告と節税対策をしておきましょう。
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