従業員が知らない間に、会社が自分名義で生命保険を契約している——そんな話を耳にして驚く人も多いかもしれません。しかし実際、企業が従業員に「法人契約の生命保険」をかけることは珍しくありません。この記事では、その仕組みや法的な観点、そして従業員にとっての影響について、詳しく解説します。
会社が従業員にかける生命保険とは
企業が契約者となり、被保険者を従業員、そして保険金の受取人を「会社自身」に設定する生命保険のことを「法人契約の生命保険」といいます。多くは中小企業や士業法人で利用されています。
目的は以下のようなものがあります。
- ・役員・従業員が死亡した場合の事業損失の補填
- ・退職金や弔慰金の原資
- ・福利厚生としての資産形成
たとえば、経営に大きな影響を与える役員や技術者が突然亡くなった場合に、保険金で損失をカバーするための対策です。
なぜ受取人が「会社」なのか?従業員は変更できない?
保険の「契約者=会社」「被保険者=従業員」「受取人=会社」という構図では、保険契約そのものが会社の財産となるため、従業員側から受取人を変更することはできません。
たとえ被保険者であっても、「契約者」が主導権を握っており、名義貸しのような違法性はありません。これはあくまで法人契約による企業の正当なリスク管理手法の一つです。
保険金は誰のもの?死亡後の対応と家族の扱い
会社が受取人となっている以上、死亡時に支払われる保険金は「会社の収益」として処理されます。したがって、遺族に直接支払われることは基本的にありません。
ただし、企業が独自の制度として弔慰金や退職金を別途支給する場合があります。これらの金額や基準は会社の就業規則や慣行に基づきます。
従業員として気になるなら確認・対応を
自分が法人契約の被保険者になっているかを確認したい場合は、以下の手順が参考になります。
- ・まず就業規則や福利厚生規定を確認
- ・人事や総務に制度の有無を聞く
- ・明確な説明が得られない場合、労働組合や社労士への相談も視野に
保険契約の詳細まで開示されないこともありますが、制度の趣旨を理解することで不安は減らせます。
万一のために個人でも備えておくことが大切
会社が法人契約の保険をかけていたとしても、それは企業のための保険です。遺族の生活保障を考えるなら、自分自身で個人の生命保険に加入しておくことが必要です。
また、医療保険や就業不能保険なども検討することで、将来の不測の事態に備える安心感が得られます。
まとめ:会社の保険契約は合法だが、自分の備えも忘れずに
企業が従業員にかける生命保険は、合法であり一定のリスク管理手段です。ただし、受取人が会社である以上、従業員やその家族が恩恵を受けるとは限りません。
そのため、自分自身でも適切な保険に加入したり、家族と話し合ったりすることが重要です。万が一に備えて、安心できる備えを持っておきましょう。
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