医療保険の設計を見直す際に、「手術給付金」や「放射線治療給付金」の特約を外して、浮いた保険料を「入院一時金」に充てるという選択肢を検討する方もいるでしょう。このような構成は一見合理的に見えますが、実際には思わぬ落とし穴があることも。この記事では、手術特約を省略し入院一時金を重視する設計の是非を、具体例を交えて詳しく解説します。
手術給付金とは?基本的な仕組みと特徴
手術給付金とは、医師による診療報酬点数に基づいて定められた「公的医療保険対象の手術」を受けた場合に支払われる保険金です。通常、入院中の手術なら10倍、外来手術なら5倍といった倍率で給付されます。
例えば、1日5,000円の入院給付金設定なら、入院中の手術で5万円(5,000円×10)が給付されます。日帰りの白内障手術や内視鏡処置など、外来でも該当するケースが多いため、近年ニーズが高まっています。
入院一時金の活用:まとまった費用への備え
入院一時金は、入院日数や治療内容に関係なく、入院初日に一定額(例:10万円)が支払われる特約です。交通費・家族の宿泊費・日用品購入などに自由に使える点が利点です。
手術給付金を外してこの入院一時金を厚く設定することで、柔軟に資金を使いたいという目的に沿った保障設計が可能になります。特に、高額医療費制度を活用する前提で自己負担を最小限にしたい人に向いています。
この設計が有効なケースと注意点
有効なケース:たとえば、医療費そのものよりも「入院に伴う生活費や収入減少」のほうが問題となる自営業の方や、扶養家族が多い家庭では入院一時金重視が有効です。
注意点:日帰り手術など、入院せずに高額な処置を受けるケースでは給付されない可能性があります。特に、白内障・ポリープ切除・カテーテル治療などは日帰りで行われることが多く、入院給付金・一時金では対応が不十分となる恐れがあります。
放射線治療給付金も外してよい?
放射線治療給付金は、がん治療などで受ける外来治療に備える特約です。1回の通院で1万円〜数万円の給付が設定されているケースが一般的で、通院期間が長期に渡る可能性がある治療には有効です。
これを外すことで保険料が抑えられ、代わりに一時金を手厚くすることも可能ですが、がん治療経験者や家族歴がある方にとっては大きなリスクとなるため慎重な判断が必要です。
FP(ファイナンシャルプランナー)の視点からのアドバイス
FPの立場から見ると、手術給付金や放射線治療給付金を外す設計は、「入院ありき」の保障構成になります。つまり、入院しないが高額治療を受けた場合のリスクヘッジが弱くなる点が最大の懸念です。
したがって、予算の中で保障のバランスを考える際には、すべてを一時金に回すのではなく、最低限の手術給付金・放射線治療特約は残しておくという考え方が推奨されます。
まとめ:一時金重視の設計は柔軟性があるが、バランスに注意
医療保険の設計において、手術や放射線治療給付金を外し、入院一時金を厚くする選択は、ライフスタイルや医療に対する考え方によっては合理的な手段です。
ただし、入院を伴わない手術や通院治療への保障が薄くなるリスクもあるため、保障の偏りに注意しながら設計することが大切です。必要に応じてFPや保険会社の担当者と相談しながら、家族構成や年齢、健康状態に応じた柔軟な保険選びを心がけましょう。
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