歯科治療において、「保険適用であれば自己負担は3割になるはず」と考えるのは自然なことです。しかし、実際には「保険適用」だからといって常に保険外治療の金額に対して3割という単純な計算にはならないケースがあります。本記事ではその理由と背景について詳しく解説します。
保険適用と保険適用外の治療費の違い
歯科治療には大きく分けて「保険適用治療」と「自由診療(保険適用外)」の2種類があります。保険適用治療は、国が定めた基準に沿った材料・技術・工程で行われ、費用も一律で設定されています。一方で、自由診療は医師と患者の合意に基づき、より高度な素材や技術が使われることもあり、金額に上限がありません。
たとえば、銀歯のクラウンが保険適用で1本1万円(自己負担3,000円)だったとして、同様の治療でセラミックを使用する自由診療では1本10万円かかることもあります。この場合、同じ「クラウン治療」であっても内容と費用が大きく異なります。
「同じ医療行為」でも異なる料金になる理由
質問にある「同じ医療行為をして保険適用に該当する人の自己負担は3割になるのでは」という疑問に対して、答えは「必ずしもそうとは限らない」となります。なぜなら、保険適用と自由診療では治療の内容が“似て非なるもの”だからです。
たとえば、先天的な症状により保険適用が可能になるケースでは、国の定めた保険点数(費用単価)に基づいて計算されますが、患者の状態や必要な処置によって点数が異なるため、実際の総額が分かりにくいという現場の事情もあります。
なぜ「保険適用でも費用が大差ない」と言われるのか
歯科医院が「保険適用でも費用は自由診療とあまり変わらない可能性がある」と説明するのは、以下のようなケースが想定されます。
- 保険適用になるのは一部の処置だけで、その他は自由診療になる
- 保険点数の加算が多く、結果的に高額になる
- 自由診療はパッケージ価格でわかりやすい一方、保険診療は細かく分かれているため事前に全体像が掴みにくい
たとえば、保険適用であっても処置の点数が積み重なれば、結果として自己負担3割でも3万〜4万円かかるケースはあり得ます。
実際の例:保険適用と自由診療の価格差
以下のような一例を参考にしてみてください。
治療内容 | 保険診療(自己負担3割) | 自由診療 |
---|---|---|
前歯の被せ物 | 約7,000円〜1万円 | 約5万円〜10万円 |
奥歯のインレー | 約3,000円〜6,000円 | 約3万円〜7万円 |
このように、保険と自由診療では価格の幅が大きいですが、「治療の目的」や「使われる素材」、「技術的精度」も異なります。
保険点数の不透明さと正確な見積もりの難しさ
保険診療は「点数制」で構成されています。1点=10円として計算され、診療報酬点数表に基づいて加算されていきます。しかし、治療中の予測不能な加算(たとえばレントゲン撮影や麻酔処置など)も含まれるため、事前に正確な総額を提示するのが難しいという事情があります。
これが「やってみないと何点になるかわからない」と言われる理由です。
まとめ:保険診療の仕組みを理解して安心の治療選びを
保険診療は一見安く見えますが、その内容や点数制度の複雑さから、必ずしも「自由診療の3割」で済むわけではないことが分かります。同じ医療行為に見えても、素材や工程、保険の制約によって実際の内容が大きく異なるのです。
保険と自由診療の違いや費用感に不安がある場合は、歯科医に遠慮なく「保険では何点程度になりそうか」「合計でどれくらいの自己負担になるか」などを確認することが大切です。正しい理解が安心に繋がります。
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