病気やケガで仕事を休んでいる間の収入を補う制度として、多くの人が利用する「傷病手当金」。一方で「将来の年金が減る」という噂も耳にします。果たしてそれは本当なのでしょうか?本記事では、傷病手当金と年金制度の関係を分かりやすく解説し、誤解を正していきます。
傷病手当金とは?制度の基本をおさらい
傷病手当金は、健康保険に加入している被保険者が、業務外の病気やケガにより働けなくなった場合に支給される給付金です。支給額は標準報酬日額の3分の2で、最長で1年6ヶ月まで受け取ることができます。
なお、支給対象は給与ではないため、傷病手当金自体には所得税も住民税もかかりません。
年金が減ると言われる理由と誤解
「傷病手当金をもらうと年金が減る」と言われる理由の多くは、休職中に厚生年金保険料の支払いが行われない可能性があることにあります。なぜなら、給与がゼロになってしまえば、会社側が年金保険料を天引きする根拠がなくなるからです。
つまり、傷病手当金を受け取っている期間中に厚生年金の保険料納付がされていない場合、その期間が年金記録に反映されず、将来の年金額に影響することがあります。
実際に年金額にどの程度影響があるのか
厚生年金の受給額は、加入期間と標準報酬月額(または賞与)によって決まります。したがって、数ヶ月間保険料の支払いがなかったとしても、長期的に見れば年金額への影響はごくわずかです。
たとえば、標準報酬月額が30万円の方が1年間保険料未納となった場合、将来の年金額は年間で約1万5千円ほど減少するにとどまるという試算もあります(※金額は概算)。
会社員としての社会保険加入が続いているかがカギ
重要なのは、傷病手当金の受給中でも、会社が社会保険(厚生年金・健康保険)の「資格喪失届」を出さない限り、被保険者としての資格は継続されます。
つまり、休職中でも雇用契約が継続している限りは、保険料の支払い状況にかかわらず、年金の加入期間としてカウントされます。
任意継続や国民年金への切替が必要な場合も
一方で、退職して会社の社会保険から外れた場合は注意が必要です。そのまま放置すると無保険状態になり、年金の加入記録が途切れてしまいます。
その場合は、「任意継続被保険者制度」や「国民年金第1号被保険者」への切替手続きを行う必要があります。保険料を払い続けることで将来の年金額を維持できます。
まとめ:傷病手当金だけで年金が減るわけではない
結論として、傷病手当金を受給しているという理由だけで将来の年金が減るわけではありません。年金額に影響が出るかどうかは、保険料の支払い状況と被保険者資格の有無に依存します。もし心配であれば、勤務先の人事部や年金事務所に問い合わせて、自分の加入状況を確認しておくと安心です。
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