国民年金法第105条における「死亡の届出」の要件は、社労士試験でも混乱しやすいポイントです。特に「14日以内の届出義務」と「7日以内の届出で省略可能」という条文の解釈には注意が必要です。本記事では、この条文の真意や背景、実務での運用を丁寧に解説します。
国民年金法第105条の概要
国民年金法105条では、年金の受給権者が死亡した場合、「死亡の届出」を日本年金機構(以下、機構)に提出する義務があると定められています。
この届出の期限は死亡の事実を知った日から14日以内。ただし、一定条件を満たす場合、省略が認められるケースがあります。
届出が省略できる条件とその意味
この条文のポイントは次の一文です。「厚生労働大臣が住民基本台帳法の規定による機構保存本人確認情報の提供を受けることができる場合には、省略することができる。」
つまり、市区町村が機構に住民情報(死亡事実含む)を提供できる体制が整っている場合には、別途届出を出す必要はないという意味です。
「7日以内の届出」が求められる理由
問題となるのが、「死亡の日から7日以内に戸籍法に基づく届出をしていること」という条件です。これは戸籍法で定められた期限内に正しく市区町村に届出がされていることを確認するための条件です。
なぜなら、住民基本台帳の情報提供を受けられる前提は、戸籍の死亡届が適正に提出されていることに基づくからです。これにより、二重登録や情報誤登録を避ける狙いがあります。
14日以内の機構への届出と7日以内の戸籍届出の違い
14日以内というのは国民年金法における「本人または遺族が直接機構に届出する場合」の期限です。
一方で、7日以内というのは戸籍法第86条に基づく、死亡届を市区町村に提出する期限です。この期限内に戸籍届が正しく処理されていれば、年金機構が情報提供を受けられ、国民年金法上の届出は省略されるという仕組みです。
実務上どう対応すべきか?
実務的には、死亡届を役所に7日以内に提出していれば、年金機構への別途届出は不要になるケースが多いです。ただし、自治体によってはデータ連携のタイムラグや確認不足が起こることもあるため、念のため「年金事務所に電話確認」するのが安全です。
また、7日を超えて戸籍届を提出した場合は、機構への14日以内の直接届出が必要になる可能性があるので注意しましょう。
具体例で整理してみる
たとえば、7月1日に死亡し、7月5日に市役所に死亡届を提出した場合→年金機構が自治体から情報提供を受けられるので、国民年金法上の届出は「省略可」になります。
一方、7月10日に死亡届を提出した場合→戸籍法上の届出義務は果たしていても「7日以内」ではないため、省略要件を満たさず、年金機構に「14日以内の直接届出」が必要です。
まとめ:条文の要点を押さえれば難しくない
国民年金法第105条は一見ややこしいように見えますが、ポイントは2つです。①死亡の届出は原則14日以内に機構へ提出、②市町村の情報提供制度と戸籍法上の7日以内の届出が連動している場合は省略できる。これらを理解していれば、試験対策にも実務にも役立つ知識となります。
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