従業員が5月31日に退職した場合、翌年度(令和7年度)の住民税に関する特別徴収の取り扱いは注意が必要です。特に住民税の徴収がまだ開始されていない場合、どのような書類を提出すべきか迷う担当者も多いでしょう。本記事では、住民税の徴収状況に応じた正しい届出の出し方と実務対応について解説します。
住民税の課税と徴収のタイミングを確認
住民税(特別徴収)は、前年の所得に基づいて毎年6月から翌年5月まで12回に分けて徴収される仕組みです。つまり、令和6年中の所得に対しては、令和7年度の住民税として6月から徴収が始まります。
したがって、5月末退職の場合は、令和7年度の住民税の特別徴収がまだ開始されていない状態であり、6月以降に初回の住民税通知書が会社に届く前に退職したことになります。
徴収前に退職した場合の取り扱い
特別徴収は「徴収が始まってから退職した場合」に、従業員分の納税義務を事業所が負うため、移動届の提出や一括徴収の対応が必要になります。
しかし、今回のように5月末で退職しており、住民税の特別徴収が始まっていない(=6月分から未着手)状態であれば、事業所が徴収すべき住民税は存在しません。
移動届は必要か?正しい提出判断
住民税の徴収が一度も始まっていない場合は、「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」は不要です。なぜなら、この届出書はあくまで「徴収途中の従業員」に関して、退職・転職・休職などによる異動が生じた場合に提出するものだからです。
その代わり、住民税の徴収は市区町村が本人に対して「普通徴収(納付書による個人納付)」の形で請求を行うことになります。
実務上の注意点:給与支払報告書の扱い
令和6年1月〜5月の給与に基づいて、翌年1月には給与支払報告書を提出する義務があります。これにより、従業員の退職後も市区町村が住民税を計算し、本人宛に納付書を送付する仕組みが構築されます。
この報告書には「退職日」の記載を必ず行い、特別徴収欄には「普通徴収へ切り替え」として処理されるよう明記しておきましょう。
従業員本人への案内も忘れずに
退職時には、住民税の納付が普通徴収に切り替わることを説明し、6月以降に届く納付書をもとに支払う必要があることを案内しておくと安心です。未納や延滞が発生しないよう、口頭や退職通知書に一文添える対応がおすすめです。
たとえば、「令和7年度の住民税は6月以降にご自宅に納付書が届きます。市区町村からの通知に従い、お支払いください」といった案内を添えることで、誤解を防ぐことができます。
まとめ:未徴収なら移動届は不要、普通徴収へ
5月末退職で翌年度の住民税が未徴収であれば、「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」の提出は必要ありません。代わりに、給与支払報告書での正確な退職日記載と、普通徴収への切り替え処理が重要です。
実務上の混乱を防ぐためにも、徴収開始月・退職日・報告書内容の整合性をしっかり確認して、スムーズな対応を心がけましょう。
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