急性の心疾患として注目されている「たこつぼ型心筋症」は、ストレスや精神的ショックによって心筋の一部が一時的に動かなくなる症状で、中高年女性に多く見られます。このような特殊な疾患が、果たして生命保険における「三大疾病特約」の対象になるのか。保険契約者としては気になるテーマです。今回はその疑問を掘り下げて解説します。
三大疾病保障の基本定義
多くの生命保険会社では、三大疾病保障の対象を「がん(悪性新生物)」「急性心筋梗塞」「脳卒中」と明記しています。保険約款に明確な医学的基準が書かれており、支給条件も厳格に設定されています。
たとえば、「急性心筋梗塞」については、「診断確定後、60日以上の労働制限が必要」「一定の治療(例:手術・カテーテル治療など)を受けた」といった条件を満たす必要があります。
たこつぼ型心筋症は対象に含まれる?
たこつぼ型心筋症は、症状が心筋梗塞に類似しているため「誤診」されることもある疾患です。ただし、多くの保険会社においては、急性心筋梗塞とは明確に区別されており、三大疾病の対象とはされないケースが大半です。
実際の保険金支払可否は、診断書の記載内容や、診断名・ICDコード(国際疾病分類)によって判断されます。カテーテル検査が行われても、それが治療目的ではなく診断目的であった場合、給付対象にならないことがあります。
診断書と医療行為の重要性
保険請求の際にもっとも重視されるのが、医師による「診断書の記載内容」です。たとえば、診断書に「たこつぼ型心筋症(Tako-tsubo Cardiomyopathy)」と明記されており、かつ「急性心筋梗塞」などの記載がない場合、三大疾病特約の対象とは見なされない可能性が高いです。
ただし、「急性心筋梗塞に準じる状態であり、60日以上の就業不能が継続している」と医師が明記した場合などには、保険会社が柔軟に判断することもあります。
実際の給付例と認定されなかった例
給付された例:心電図・心エコーで心筋梗塞と疑われ、治療目的のステント留置術が行われた場合、後にたこつぼ型と診断されても三大疾病給付が支払われた。
給付されなかった例:ストレス後の胸痛を訴えたものの、医師の診断書に「心筋症であり心筋梗塞ではない」と明記されていたため不支給となった。
加入保険の約款確認と専門相談のすすめ
契約内容や特約の文言によって支払対象が異なるため、まずはご自身の保険証券と「約款」を確認してください。不明点がある場合は、保険会社のカスタマーセンターや担当営業に詳細を尋ねることが重要です。
それでも納得がいかない場合や判断がつかないときは、生命保険相談所(公益財団法人 生命保険文化センター)などの第三者機関に相談するのも有効な方法です。
まとめ:あいまいな診断名には注意を
たこつぼ型心筋症は特殊な病態でありながら、三大疾病の一部と誤認されやすい点に注意が必要です。保険金の請求には医学的根拠と約款の理解が欠かせません。まずは診断名・治療内容を明確にし、加入している保険の約款や特約条項を正しく読み込むことから始めましょう。
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