医療費の自己負担を軽減するための高額療養費制度は、多くの人にとって頼りになる制度です。しかし、最近「制度が改悪されたのでは?」という声も聞かれるようになりました。実際にはどのような変更があり、何が問題視されているのでしょうか。本記事では、高額療養費制度の基本から、近年の見直し内容、今後の影響についてわかりやすく解説します。
高額療養費制度とは?改めて基本をおさらい
高額療養費制度は、健康保険に加入している人が1か月に支払う医療費の自己負担額が一定額(自己負担限度額)を超えた場合、その超えた分を後から払い戻す仕組みです。
たとえば、年収約370万円~770万円の人の場合、自己負担の上限は「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」とされており、これを超えた額は申請により戻ってきます。
2022年以降の制度変更:どこが見直されたのか
近年の主な変更点は以下の通りです。
- 高所得者層(標準報酬月額83万円以上)の自己負担限度額が引き上げられた
- 入院時の食事療養費や差額ベッド代など、対象外となる費用の明示化が進んだ
- 複数回利用者向けの「多数該当制度」の要件の見直し
特に高所得層にとっては実質的な「負担増」となっており、「改悪」との声の一因となっています。
実例でわかる:変更前後の自己負担額の違い
【例1】年収1,200万円の会社員が1か月に100万円の医療費を支払った場合。
年 | 自己負担限度額 |
---|---|
2021年以前 | 約139,000円 |
2022年以降 | 約252,600円 |
このように、同じ医療費でも負担が大きく増えているケースも見られます。
「改悪」と言われる背景とその是非
一部では「制度の趣旨に反している」との批判がありますが、財政の持続性確保を目的とした見直しである点も見逃せません。医療保険制度の維持には一定の受益と負担のバランスが求められており、特に高所得者層への負担強化は公平性の観点からも必要とされている面があります。
一方で、中所得層以下に対する大きな変更は現時点で少なく、影響は限定的です。
高額療養費制度を賢く活用するためのポイント
① 限度額適用認定証の事前申請:これを医療機関に提示すれば、窓口での支払いが上限額までに抑えられます。
② 多数該当制度の把握:過去12か月に3回以上高額療養費の支給があった場合、4回目から限度額が下がります。
③ 医療保険の併用:入院時の食事代や差額ベッド代は自己負担となるため、民間医療保険で備えるのも一手です。
まとめ:制度は変わっても、基本的な安心は変わらない
高額療養費制度は、確かに近年見直しが行われており、一部では負担増となるケースもあります。しかし、中低所得者層の生活を守る基本的な仕組みは維持されています。自身の収入や医療ニーズに合わせて制度を理解し、上手に活用することが、今後さらに重要になってくるでしょう。
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