ドル建ての一時払い終身保険は、高い返戻率や為替メリットに魅力を感じる一方で、為替リスクや途中解約の損失など見落としがちなリスクも含んでいます。この記事では、代表的な商品である三井住友プライマリー生命の「おおきなまごころ3」とメットライフ生命の「ビーウィズユー プラスII」を比較しつつ、どのように判断すべきかを解説します。
「おおきなまごころ3」と「ビーウィズユー プラスII」の基本情報
三井住友プライマリー生命の「おおきなまごころ3」は、30年固定金利で返戻率は最大349%。一方、メットライフ生命の「ビーウィズユー プラスII」は20年固定で返戻率230%前後が目安です。
どちらも年利換算で約4.3%前後の高利回りが特徴ですが、契約年数や為替の影響を受ける点に注意が必要です。とくに「おおきなまごころ3」は解約時の損益分岐点がドル41円とされており、為替が大きく円高に振れると元本割れのリスクが高くなります。
ドル建て保険に共通する3つのリスク
- 為替変動リスク:為替が円高になると解約返戻金が目減りする
- 途中解約リスク:契約初期に解約すると大きな元本割れが発生
- 金利リスク:現在の高金利が長期的に維持される保証はない
実際、過去には円高局面で解約し、円ベースでの返戻金が大きく減ったという事例もあります。たとえば、2011年にはドルが75円台まで下がり、こうした商品で多くの損失が出たケースが報告されています。
返戻率の高さだけで判断しない
返戻率349%という数字は非常に魅力的に見えますが、それが現実に得られるのは満期まで保有し、かつ為替が不利に動かなかった場合に限られます。仮に1000万円を一括払いした場合、最終的に3490万円相当をドル建てで受け取ることになりますが、円換算では為替によって大きく変動します。
例えば、今が1ドル=150円、将来解約時に1ドル=110円になっていた場合、返戻金の円換算額は約2600万円前後にまで下がる可能性があります。
1000万円の一括投資は危険か?分散投資の視点
このような商品にまとまった資金を投入する場合は、資産のうちどれくらいの比率なのかが重要なポイントになります。仮に総資産が1億円以上あり、そのうちの1000万円であれば“分散投資の一環”として許容される可能性もあります。
一方、これが資産の過半を占めるようであれば非常にリスキーです。為替や契約途中の急な資金ニーズなどに対応できない可能性があるため、慎重な検討が必要です。
どちらの商品が向いているかの判断基準
長期運用が可能か、為替に対する許容度が高いか、資金の余裕があるか——これらの条件が揃っている場合は、返戻率の高い「おおきなまごころ3」が選択肢になるかもしれません。
一方、20年程度の中期運用で十分であり、一定の流動性や柔軟性も求めたい場合には、「ビーウィズユー プラスII」のほうが現実的な選択肢といえるでしょう。
まとめ:商品選びはライフプランとリスク許容度に応じて
ドル建て終身保険は、資産形成に有効な一方で、為替と流動性のリスクが大きく、「万人向け」ではないという点を理解しておく必要があります。
1000万円というまとまった資金を投じる前に、現在の金融資産全体の構成、今後のライフイベント、緊急時の対応力などを冷静に見直し、必要であればFP(ファイナンシャルプランナー)など専門家の意見も取り入れるのがおすすめです。
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