近年、フルタイムで働きながらも「パート」や「契約社員」という雇用形態で働く方が増えています。中には、社会保険・厚生年金に加入し、ボーナスまで支給されるという正社員とほぼ同じ待遇を受けるパートも存在します。それでもなぜ、企業は「パート」として雇用するのでしょうか?本記事では、企業側の視点からそのメリットと背景について詳しく解説します。
パート雇用と正社員雇用の違い
法律上、労働時間や業務内容に関わらず、雇用形態は「契約内容」に基づきます。たとえフルタイムで勤務していても、企業とパート契約を結んでいれば、その人はパートタイマーです。
正社員は通常、期間の定めがなく、解雇に厳しい制限がある一方で、パートは有期契約が多く、更新の可否は会社の裁量によります。この点が企業にとって重要な分岐点となります。
企業がパート雇用を選ぶ3つの主な理由
- 1. 雇用の柔軟性
正社員は解雇に手続きが多く、法律的なハードルが高いです。パートであれば、契約満了で更新しないという形式で、柔軟に雇用調整が可能になります。
- 2. 人件費のコントロール
正社員には昇給制度・退職金・福利厚生などがセットで付随します。一方パートはこれらが省略・簡素化されていることが多く、トータルコストは抑えられる傾向にあります。
- 3. 等級制度や組織上の違い
パートには職位・役職がつかない場合が多く、評価制度や昇進の枠組みを必要としません。管理負担の軽減につながる点も見逃せません。
「同一労働同一賃金」の影響と企業の対応
2020年から施行された「同一労働同一賃金」により、パートでも正社員と同様の業務を行うならば、賃金差を設けるには合理的な理由が必要になりました。
そのため一部の企業では、正社員に近い処遇をパートにも与え、制度上の不備を回避しようとする動きが出ています。これは制度的な平等の表れであり、企業のリスクヘッジでもあります。
パートでもボーナスや社会保険がある実例
たとえば、大手流通業では、長時間勤務のパート従業員にはボーナスや厚生年金を提供することで、人材の定着とモチベーション向上を図っています。雇用形態よりも「業務への貢献度」を重視する姿勢です。
また、コールセンターや物流現場などでは、「準社員」や「地域限定正社員」のような、正社員とパートの中間的な位置づけで雇う企業も増加中です。
雇用形態によるキャリア形成の違い
正社員とパートでは、異動・転勤・昇進などのキャリアパスに大きな違いが生じることがあります。パートは基本的に定型業務が中心で、管理職になる機会はほとんどありません。
企業側としても、パートには高度な人材育成や長期的キャリア支援を期待しておらず、その分のコストを軽減する狙いがあります。
まとめ:企業にとっての「パート雇用」は人材戦略の一部
表面上は正社員と同じ待遇に見えても、「雇用契約の自由度」「人件費の調整」「制度設計の簡略化」といった側面から、企業にとってパート雇用は依然として魅力的な選択肢となっています。
働く側としても、自身のキャリアや働き方の希望に合わせて、雇用形態の意味をしっかりと理解し、納得できる条件で選ぶことが大切です。
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