「厚生年金の積立金を基礎年金に流用」という表現が誤解を生んでいることをご存知でしょうか。実はこの“流用”は、制度内のバランス調整であり、むしろ年金制度の根幹である“共助”に基づいた仕組みです。この記事ではその仕組みと背景、正しい理解について解説します。
年金制度は“共助”が基本原則
公的年金制度は、加入者全体で支え合う「共助」によって成り立っています。基礎年金(国民年金)はすべての加入者が対象であり、その財源には国庫負担に加え、厚生年金保険料の一部も活用されています。
これは所得の多い現役世代が所得の少ない高齢者を支える“所得再分配”の役割も果たしており、制度の公平性と安定性を保つために重要です。
『流用』とは実際どういうことか
誤解されがちな「流用」とは、正確には「厚生年金保険料の一部が基礎年金の財源として使われる」ことを指します。
例えば、厚生年金の保険料のうち一定割合は、基礎年金勘定に拠出されています。これは加入者間で負担を調整する仕組みであり、“勝手に使われている”という意味ではありません。
実際の仕組み:基礎年金拠出金制度
年金制度には「基礎年金拠出金制度」があり、厚生年金・共済年金の保険者が拠出金を国民年金勘定に拠出することで、全加入者に公平な基礎年金を給付しています。
この制度があることで、自営業者やフリーランスなど保険料収入が少ない層も一定額の年金を受給でき、制度全体のセーフティネットが維持されます。
『同じ制度内』での資金調整という理解が重要
“厚生年金のお金が他で使われている”という印象を持つと不満に感じるかもしれませんが、実際は「公的年金制度という同じ箱の中」での資金調整です。
会社員・公務員・自営業といった就労形態の違いに関係なく、基礎年金は共通で支給されるため、すべての年金加入者がこの調整の恩恵を受けているのです。
『積立金』は将来の年金支払いのために活用されている
一部では「厚生年金の積立金がなくなってしまうのでは」という懸念もありますが、実際には年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が資産を長期的に安定運用し、将来の年金財源として確保しています。
厚生年金の積立金が基礎年金に使われるのではなく、制度全体の給付を支えるために一体的に管理されているという点を理解することが重要です。
まとめ:年金制度は「支え合い」で成り立つ仕組み
「流用」という言葉は誤解を生みがちですが、実際は“共助”に基づいた合理的な制度設計です。
厚生年金加入者も将来、基礎年金部分を受け取ることになり、誰もが制度の受益者となります。偏った印象に惑わされず、制度の意図と仕組みを理解することが大切です。
コメント