物価の上昇や円安によって、将来の生活費に対する不安が高まる中、老後資金としていくら必要なのかを見極めることは重要です。特に年収800万円のサラリーマン家庭で、退職後の生活を見据えた場合、3000万円で足りるのかを具体的に考えていきましょう。
夫婦二人の老後にかかる生活費の平均
総務省の家計調査によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均支出は月額約26万円前後とされています。ただしこれはあくまで平均であり、居住地や持ち家の有無、ライフスタイルによって大きく異なります。
持ち家で住宅ローン返済がない家庭の場合、住居費が抑えられるため支出はやや少なくなります。たとえば築30年の家であれば、月々の住居関連コスト(固定資産税、修繕費など)は1万〜2万円ほどで見積もると現実的です。
年金収入の想定額と収支のバランス
60歳直前で年収800万円の方が厚生年金に長年加入していたと仮定した場合、夫婦合算での年金額は月額約22〜24万円程度が想定されます。これに対し、支出が26万円だとすると月額2〜4万円の赤字が発生します。
つまり、1年で約24〜48万円の赤字が発生し、65歳から90歳までの25年間では、600万円〜1200万円の取り崩しが必要となる計算です。
3000万円の老後資金で本当に足りる?
仮に年金以外の収入がない場合、生活費の不足分、医療費・介護費用、住居の修繕費、旅行・交際費といった臨時支出までを含めると、3000万円という金額は決して余裕があるとは言えません。
特に、今後インフレが加速する場合や、年金の支給水準が下がるリスクも見込まれるため、3000万円は「最低ライン」として考えておくべきです。
医療費・介護費などの想定外コスト
老後資金の落とし穴となるのが、医療費や介護費です。たとえば、70代後半で介護が必要となり、在宅介護や施設入所が必要になると、月5〜15万円程度の追加費用がかかることもあります。
このため、老後資金は生活費の赤字分だけでなく、医療・介護の備えを含めてゆとりを持たせた計画が必要です。
退職金や継続雇用の活用で資金準備を
現在の年収水準と退職金、再雇用での収入があることを考慮すれば、65歳時点で3000万円以上の準備は十分に可能です。企業年金やiDeCoなどを組み合わせて税制優遇を活用することもおすすめです。
また、金融資産を現金一辺倒で持つのではなく、インフレに強い資産(債券・一部株式など)で分散管理することもリスクヘッジになります。
まとめ:ゆとりある老後を目指すなら「+α」の備えを
3000万円は一般的な老後資金の目安としては一定の水準ですが、物価上昇や医療費の増加リスクを考慮すれば、もう少し余裕を持たせたいところです。
年金+資産取り崩しだけでなく、継続雇用や副収入、資産運用などを組み合わせて、老後生活の不安を軽減する戦略的な準備が求められます。
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