医療費が高額になった場合、一定額を超えると払い戻しが受けられる「高額療養費制度」があります。とはいえ、誰の収入を基準に限度額が決まるのか、世帯の中に異なる保険制度の加入者がいる場合など、わかりにくい点も多いでしょう。この記事では、世帯内で国民健康保険と他の保険制度が混在しているケースについて、自己負担限度額の考え方を解説します。
医療費の自己負担と「高額療養費制度」の仕組み
高額療養費制度とは、1ヶ月の医療費が一定額を超えた場合に、その超過分が払い戻される仕組みです。この制度には、各保険制度(国民健康保険、協会けんぽ、後期高齢者医療制度など)でほぼ共通の枠組みがあり、加入している制度に応じて手続きが行われます。
自己負担限度額は、「世帯単位」または「個人単位」で判断されますが、これは加入している保険制度によって異なります。
国民健康保険の限度額は「世帯単位」
国民健康保険では、自己負担限度額は世帯主とその被保険者全員の所得を合算して決まります。つまり、世帯内に複数の国保加入者がいる場合、その人たちの医療費は世帯単位で合算して判定され、限度額も世帯の所得水準で定まります。
ただし、世帯主が被保険者でない場合でも、世帯主の所得は判定に使われる場合があります。
協会けんぽ・後期高齢者制度は「個人単位」
一方、協会けんぽや後期高齢者医療制度では、原則として被保険者一人ひとりの所得に基づいて限度額が設定されます。したがって、他の家族が異なる保険に加入している場合、その人たちの所得は自己負担限度額に影響しません。
たとえば、自分が国保に加入していて、家族が協会けんぽや後期高齢者制度に加入している場合、自分の限度額は「国保に加入している自分の世帯」で判定され、他の家族の収入や医療費は加味されません。
実例:5人世帯での限度額判定の考え方
たとえば、5人家族のうち1人(本人)が国民健康保険に加入し、他の4人が協会けんぽや後期高齢者医療制度に加入している場合、国保の高額療養費制度における限度額は、本人のみの収入で決まります。これは、他の4人が国保の被保険者ではないため、本人の「国保上の世帯」は一人だけと見なされるためです。
このため、家族全体で高収入であっても、国保加入者本人の所得が低ければ、比較的低い限度額で支援を受けられるケースもあります。
注意すべき点と役所での確認
世帯の構成や所得、加入している保険によって限度額の判定は複雑になることがあります。特に国民健康保険の場合は、市区町村によって運営されているため、制度の運用に若干の差があることもあります。
不明な点がある場合は、お住まいの自治体の国保担当窓口で、「高額療養費制度」と「自己負担限度額」の基準について確認するのが最も確実です。
まとめ:どの保険に加入しているかがカギ
医療費の自己負担限度額は、加入している保険制度によって計算の方法が異なります。国民健康保険では世帯単位、協会けんぽ・後期高齢者制度では個人単位で判定されます。
家族に複数の保険制度の加入者がいる場合、それぞれの制度ごとに自己負担限度額が決まり、他制度の収入や医療費は影響しないという点を押さえておくことが重要です。
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