医療費が高額になった際に家計を助けてくれる高額療養費制度。その上限額(区分)に応じて支払いを軽減できますが、マイナンバーカードによる即時適用が進んだ一方で「実際の支払額が上限を超えている」という声も聞かれます。この記事では、制度の仕組みと支払のタイミング、払い戻しの申請が必要かどうかを解説します。
高額療養費制度の基本と「区分ウ」について
高額療養費制度では、自己負担限度額が収入に応じて「区分ア」〜「区分エ」に分かれています。たとえば「区分ウ」に該当する方の上限は月57,600円(医療機関・外来での合算)となります。
この制度は1ヶ月(暦月)単位で医療費を合算して判定されます。つまり、同じ月のなかで複数回に分けて支払いがあっても、その合計額が上限を超えれば、超過分は還付されることになります。
マイナンバーカードによる即時適用の仕組み
マイナンバーカードによる保険証利用(オンライン資格確認)が導入され、対応医療機関では高額療養費の限度額を超えた分が自動的に請求時点で反映されるようになっています。この仕組みを「限度額適用認定証の自動連携」と呼びます。
ただし、これはあくまで「1回の医療機関ごとの支払い額が上限を超える場合」に即時適用されるものであり、複数の医療機関にまたがる支払いや、合算が必要な場合には自動では反映されないことがあります。
実例:検査と薬局で別日に支払いをした場合
例として、7月15日に12,000円の検査費用を支払い、7月22日に薬局で45,600円を支払ったとします。この合計額は57,600円で限度額と一致しますが、薬局側では「その場の金額だけ」を元に計算するため、限度額を超えていても12,000円の既支払い分は考慮されず、満額が請求される場合があります。
この場合、マイナンバーカードを提示していても「全体を通した月額の集計」がなされないため、結果として合計が上限を超えて支払う形になります。
払いすぎた場合の対応と申請方法
こうしたケースでは、高額療養費制度の「後から申請する方式(償還払い)」を利用することになります。医療費明細や領収書、健康保険証のコピーなどを添えて、加入している健康保険組合(協会けんぽ、市町村国保など)に申請します。
申請後、1〜2か月程度で超過分が振り込まれるのが一般的です。詳しくは加入している保険者のウェブサイトや窓口で確認しましょう。
マイナカードを使っても申請が必要なケースとは?
以下のようなケースでは、マイナンバーカードを利用していても後日申請が必要です。
- 異なる医療機関での支払いを合算したい場合
- 薬局と病院など、別施設での支払いをまとめたい場合
- 1回ごとの支払いでは上限を超えないが、月単位で超える場合
制度としては対応していますが、現時点での運用には限界があるため、こうした場合は手動申請が前提です。
まとめ:高額療養費の即時適用には限界も。状況に応じて申請を
高額療養費制度は非常に有用な仕組みですが、現状のマイナカード対応では「1回の支払いで上限超え」が前提で、複数回にまたがる合算には非対応な場面もあります。
そのため、月内で上限を超えているにも関わらず超過支払いが発生した場合は、自己申請による払い戻しが必要になるのが「普通」です。医療費が高額になった場合には、領収書をしっかり保管し、健康保険組合等への申請を忘れず行いましょう。
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