かつてJA共済の医療・がん保険には、途中解約でも一定の返戻金がある商品が存在しました。しかし現在では、「解約返戻金なし(掛け捨て)」の商品が主流となりつつあります。この変化は改悪と捉えられることもありますが、その背景にはいくつかの明確な理由があります。
なぜ「解約返戻金なし」になったのか?
主な理由は、保険料の低価格化と保障の充実を図るためです。解約返戻金を設定すると、その分のコストを保険料に上乗せする必要があります。返戻金をなくすことで、保障内容は維持したまま保険料を安く抑えられるようになりました。
例えば、月額3,000円程度で入れる医療保険がある一方で、返戻金付きの商品では月額5,000円以上になるケースもあり、家計の負担を抑えるニーズに応える形で掛け捨て型へと移行が進んだのです。
時代背景と制度の変化が影響
2010年代後半以降、日本国内では低金利が続いており、保険会社が運用益を確保しづらくなりました。これにより、従来のような貯蓄性のある保険商品の設計が難しくなっています。
また、金融庁による保険業界への規制強化も進み、「保障に特化したシンプルな保険設計」が求められるようになったことも背景にあります。
保障重視か、貯蓄重視か:加入者の選択肢
掛け捨て型は「万が一のための安心」をより低価格で提供できるメリットがあります。一方、解約返戻金のある保険は「保障を受けながら将来の資産形成」も可能です。
たとえば、若いうちは掛け捨ての医療保険でコストを抑えつつ、資産形成はNISAやiDeCoなどの制度を活用するなど、目的別に分けて備える人も増えています。
終身型の選び方:返戻金がある商品はあるのか?
現在でも、返戻金が設定されている終身医療保険やがん保険は他社には存在します。たとえば、オリックス生命やアフラックなどの一部の民間保険会社では、解約返戻金付きの終身医療保険を販売している場合があります。
ただし、保険料は高めで、返戻率が低かったり、払込期間終了後でないと元本割れするなどの制限があるため、内容をよく比較・検討することが重要です。
まとめ:時代に合った保険の見直しが求められる
JA共済の医療・がん保険が「解約返戻金なし」になった背景には、低金利時代の金融事情や加入者ニーズの変化がありました。これを「改悪」と捉えるよりも、「目的に応じた選択肢の分化」と考えると適切です。
保障を重視するのか、貯蓄性を重視するのかを明確にした上で、自分にとって最適な保険を選ぶことが、これからの時代における賢い保険選びとなるでしょう。
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