企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入していた方が転職や退職などでその制度を脱退した場合、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」への移行を勧められるケースがあります。しかし、iDeCoは任意なのか?加入しなければどうなるのか?と疑問を感じる方も少なくありません。今回は、企業型から個人型に移行する際の基本的な考え方、メリット・デメリット、そして加入の義務について詳しく解説します。
iDeCo(イデコ)とは?企業型DCとの違い
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を拠出し、自ら運用商品を選び、60歳以降に年金または一時金として受け取る仕組みの私的年金制度です。企業型DCと異なり、個人の判断で加入・運用が行えるため、より自由度が高い反面、自己責任の要素も強くなります。
企業型DCは、会社が掛金を負担し、従業員が運用する仕組みですが、退職後にその資産をどう扱うかは原則として「個人型DC(iDeCo)への移管」が必要です。
iDeCoは強制加入ではないが「移換」は必要なケースが多い
iDeCoそのものへの加入は任意ですが、企業型DCに加入していた人がそのまま資産を放置することはできません。退職後、6か月以内に「個人型DC」への移換手続きをしないと、資産が国民年金基金連合会に自動移換されてしまいます。
この自動移換期間中は運用が一切行われず、手数料だけが差し引かれる状態が続くため、実質的に資産が目減りすることになります。
iDeCoに加入するメリット
- 所得控除の対象:掛金全額が所得控除になり、節税効果が大きい。
- 運用益非課税:通常20.315%課税される運用益が非課税で再投資できる。
- 老後資金の計画的な形成:自動積立で継続的に老後資金が準備できる。
たとえば、年収500万円の会社員が月額23,000円を拠出した場合、所得控除によって年約55,000円の税負担が軽減される試算もあります。
iDeCoのデメリットと注意点
- 原則60歳まで引き出せない:急な出費や資金の必要時に対応できない。
- 手数料がかかる:加入時・毎月・運用時などで手数料が発生。
- 運用リスクがある:元本割れのリスクがあり、商品選定が重要。
たとえば、定期預金のような安全資産を選んでも、手数料でマイナスになる可能性があるため、最低限の運用知識は必要です。
iDeCoに加入しない選択をした場合はどうなる?
前述の通り、企業型DCの資産は自動的に国民年金基金連合会に自動移換されます。この状態では資産の運用ができず、年に1回の残高通知が届く程度です。
デメリットとしては、移換時手数料・年間管理手数料などが差し引かれ、資産が減少し続ける点です。また、この状態が10年を超えると、給付の受給資格期間に影響を及ぼす可能性もあるため、できるだけ早期に対応することが望ましいです。
まとめ:iDeCoは任意加入だが「移換」は忘れずに
iDeCoは自分の判断で加入できる任意の制度ですが、企業型DCを脱退したまま放置すると、資産が減少する「自動移換」状態になってしまいます。老後の資産形成や税制優遇を活かすためにも、iDeCoへの移換・加入は早めに検討しましょう。
自分にとって最適な制度設計を行うには、金融機関や専門家のアドバイスを受けながら、リスクとメリットを天秤にかけて判断することが大切です。
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