企業型持株会制度は、社員が会社の株を毎月積み立てで購入する制度であり、奨励金(インセンティブ)を上乗せしてくれるケースが一般的です。この奨励金は「お得」と言われますが、その裏にはきちんとした税務ルールが存在します。本記事では、奨励金の課税扱いや注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
持株会の奨励金とは?
持株会における奨励金とは、従業員が自社株を購入する際に会社から追加で支給される金銭的インセンティブのことです。たとえば、毎月5万円購入し、奨励金が10%であれば5,000円分が追加で株の買付に充てられます。
この奨励金は給与とは別に支払われるわけではなく、現金で受け取るものではなく株式として反映されますが、税務上はその取り扱いに注意が必要です。
奨励金は給与所得として課税対象
奨励金は、たとえ現金で手元に受け取らず株式として支給される場合でも「給与所得」とみなされ、所得税・住民税の課税対象となります。
このため、月5,000円の奨励金がつくと、その分は給与として源泉徴収されることが一般的です。年末調整や源泉徴収票にも反映されているはずです。
売却時にはキャピタルゲイン課税も発生
奨励金によって買付された株式を将来売却した際には、譲渡益(キャピタルゲイン)が出る場合、通常の株式と同様に20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の課税がかかります。
つまり、奨励金部分は給与所得として課税され、さらに売却益に対しても課税されるため、二重の課税となる点は注意が必要です。
奨励金の課税方法に関する具体例
以下の例をご覧ください。
- 月額拠出:50,000円
- 奨励金:5,000円(10%)
- 年間奨励金総額:60,000円
この60,000円はその年の給与所得として課税対象となります。加えて、売却時に取得価格を基に譲渡益が出た場合、別途税金が発生します。
非課税の制度ではない点に要注意
持株会の奨励金は「現物支給」「特別報酬」として見落とされがちですが、税法上は通常の給与と同様に課税されます。「奨励金は非課税」と勘違いしがちですが、それは誤りです。
会社によっては、給与明細とは別の持株管理明細に表示されるだけなので、見落としやすく、課税意識が希薄になりがちです。
会社の説明だけでは不十分な場合も
持株会を推進する企業は、「奨励金=お得」だけを強調することが少なくありません。しかし、税務面での影響や二重課税の可能性など、従業員側が正しく理解しておく必要があります。
特に売却益が大きくなりそうな場合や、他に株式取引を行っている場合は、年間の譲渡益と損益通算できるかどうかなども確認しておくと良いでしょう。
まとめ:奨励金には必ず課税が伴うことを認識しよう
持株会の奨励金は魅力的な制度ではありますが、給与所得として課税され、売却時には譲渡益課税も発生します。非課税ではない点を正しく理解した上で活用することが大切です。
最終的な税務処理や確認は、勤務先の人事・経理担当、または税理士への相談をおすすめします。
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